支援制度活用事例

商品の画像データベース活用
佐賀県・有田焼商社 瑞祥 有田の「うつわ」は料理と一体
マニュアル化できない「感性」の商売




有限会社瑞祥
所在地 佐賀県西松浦郡有田町南原甲706-8  
代表取締役 桑原正登 氏
  自らIT 活用に取り組み、「トータルで数千万円レベルの投資をしてきた」。しかし、「IT は合理化、マニュアル化、効率化のイメージ
があり、われわれが大切にする感性をどうぶつけていくかが考えどころ」と強調する。
創業 昭和57 年
従業員 9 名
代表 代表取締役 桑原正登
事業内容 有田焼磁器の販売。とくに料亭、旅館、ホテルなどの高級和食器を中心に展開。うつわを道具としてではなく、料理と対等に競い合い磨き合うものと考え、コンサルティング営業を行っている。澤田痴陶人の作品を取り扱っている。
URL http://www.zuisyo.co.jp/
     
     
    瑞祥のCDカタログシステム
↑取扱商品を分野ごとに整理し検索できるようにしている。ここから提案したい商品画像を選び、組み合わせる。追加注文の場合も、商品名で対応するより画像の方がお互いの意思疎通が速いという。
  インターネット環境が整う会社にはFTP にて画像をアップする。
↑有田焼の作品。プロ向け商品は基本的に受注生産。町全体で分業体制が確立されており、品数が多いため、商社の情報管理力が与える影響は大きい。


提案営業をする「人」をサポートするITとは?

日本を代表する磁器の一つ、有田焼。佐賀県有田市の街に足を踏み入れると、藍や赤を基調にした食器、花瓶を並べる店が次々と現れる。400年の伝統を守り愛され続ける有田焼は、しかし一方で「洋食化する食生活」という時代の波を受け、苦戦を強いられている(総出荷額は平成3年をピークに半減)。
  その中にあって、創業25年ほどを経過した商社・瑞祥は、異業種・市外出身の桑原正登社長が持つ「伝統にとらわれすぎない客観的な視点」を元に有田焼の販売に奔走。取り扱うのは旅館、料亭、ホテルなど「プロ向け」の食器だ。
  プロ向け食器と一般向け食器はまず強度が違う。そしてさらに重要な点を桑原社長はこう説明する。
「和の世界は、器に描かれた自然の中に料理を盛り込みます。メニューと食器の色・絵柄は一体となって創造されるものです」
  つまり、店のコンセプトやメニューの内容をヒヤリングしながら、適した食器を選び出すという「提案営業」が必須なのである。さらに「ご発注前には現物をお持ちして器の質感や料理の盛り付けを確かめていただく」(桑原社長)と、現物のやり取りも欠かさない。
  きめ細かい営業プロセスは同社の強みそのものだが、オフィスのある場所は佐賀県有田市。そこから九州一円をはじめ北陸・伊豆までを4名で回るという現実がある。顧客先が一定数以上になると頻繁に訪問すること自体が難しい。
  さらに取り扱う焼き物の種類は12万点。一度販売した商品は何年経ってもリクエストに応えるのが有田流だが、依頼された食器を探し出すのに手間どることもある。
  桑原社長は対応スピードが遅くなりお客様をお待たせしていることを課題に感じたものの、人間的なつきあいの部分を簡略化したりIT化することを良しとしなかった。しかし、ITを毛嫌いしていたわけではない。
「営業の人間力を発揮させるために、それ以外の部分をIT化してフォローしていく方法を考えた」


商品画像を使って提案をスムーズに

具体的には、取り扱い商品を画像データベースとしてCD化し、ヒヤリングや提案をサポートすることだ。例えば、ヒヤリング後の仮提案段階なら、CDカタログの画像データからお勧めの食器をチョイスしてデータを送付すれば訪問を代替できる。これまで1社につき5回訪問が必要だったとすれば、3回程度に減らせるはずだ。
  営業担当者は、詳細ヒヤリングや見本品持参のクロージングなど、現場での感性やノウハウが求められる訪問に集中し、訪問先企業数の増加を目指す。
  一方、提案を受ける側も、次回の来訪を待たずして回答が得られるので、利便性が高まるのだ。

CDカタログリニューアルにITCのアドバイスを活用

数年前、第一弾の「CDカタログ」が完成したが、画像の鮮明さなどの点で課題もあり、バージョンアップを模索していた。ちょうどそのころ、佐賀県地域産業支援センターが実施した「平成16年度ITコーディネータ派遣制度」により、ITコーディネータ(ITC)坂下正洋氏の派遣を受けることとなり、同氏とともに経営刷新計画に取り組んだ。
  坂下氏は改革プロセスを次のように説明する。
「営業支援・販売チャネル増を目的に経営分析を進めていき、実現手段の一つがCDカタログのバージョンアップでした。対応可能なベンダーを探し、Web対応も視野に入れたシステム提案依頼書を作成しました」
  坂下氏からシステムベンダー・三和コンピュータへの橋渡しはスムーズに行われ「少しずつ桑原社長のお考えが理解でき、他業種でも応用できる仕組みが完成しつつあります」(三和コンピュータ・平野哲也氏)」。桑原社長はITCの広い視野での方向付け、ITベンダーの熱心
な働きぶり双方に満足しているとのことだ。
  新しいCDカタログシステムが訪問先企業数増を導けば、有田焼を使用する料亭の数も増え、豊かな食文化の提供につながる。
「感性」をサポートするのもITの役割の一つなのだ。


ITコーディネータ紹介

 佐賀県を中心に九州北部でコンサルティングを行っている。
  瑞祥の支援では、まず、バランススコアカードによる分析などを行い営業革新を目指した。その後、CDカタログリニューアルや営業支援システム作りを具体化するため、IT 推進アドバイザー派遣制度により派遣を受け、約8ヶ月にわたりIT 活用へのサポートを行った。
  現在は、CDカタログリニューアルのほかに、携帯電話とブログを用いた営業日報、Web サイトリニューアルによる販売推進を並行して進めている。

みのりITコンサルティング
http://www.minori-itc.com/

坂下 正洋 氏


<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>
以前も専門家派遣制度を利用したことがありますが、その際は満足した結果が得られませんでした。坂下さんは会社のことを深く理解してくださり、波長も合ったと思います。経営者は事業内容・経営全体が視野に入ったIT活用のアドバイスを求めています。坂下さんにはますますこの方向で指導してもらいたいと思っています。(桑原社長談)

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