支援制度活用事例

金融機関がIT化需要を掘り起こし
ITコーディネータとのマッチングへ




名古屋支店について
中小企業金融公庫 名古屋支店
大野晴久 支店長(写真右)と
野田祐司 融資総括副長
所在地 名古屋市中村区名駅3-25-9 堀内ビル8階
URL http://www.jasme.go.jp
事業内容 現在、約1600社と取引中。IT活用促進資金の貸付は年々融資額が伸びており、また、支店内総融資額に占めるIT貸付の割合は全国平均より高い数値を示している。
 同支店では担当者が企業に積極的に足を運び面談する「フェイス・トゥー・フェイス」の意思疎通に努めている。IT活用セミナーや経営者研修会へ多くの企業が足を運んだのも、こうした基盤があってこその結果と言える。

中小企業金融公庫とは
中小企業金融公庫は全額政府出資で設立された政策金融機関。特別貸付を中心とした長期・固定金利が特徴である。IT関係では、「IT活用促進資金」という特別貸付が設定されている。
 貸付以外にも企業診断や経営革新事例提供など、幅広いサービスが展開されている。店舗は全国に61箇所。

 ITに興味はあるものの、具体的な行動となると的確な相談相手が見つからず足が止まってしまいがちだ。しかし、もし金融機関が背中を押してくれたらどうだろう?
 愛知県名古屋市の中小企業金融公庫名古屋支店では、2004年春から、取引先経営者にITを活用した経営改革を積極的に呼びかけている。IT関連イベントや経営者研修会を案内し、ITコーディネータとのマッチングの機会を増やしているのだ。
 金融機関からの「IT経営のススメ」は経営者の迷いを行動に変える触媒となった。

ITフェア、研修会に過去最高の参加者が

 2004年6月に名古屋で開催された中小企業IT化推進フェア。その講演会場には450名もの参加者が集まった。IT系のイベントでは全国でも珍しい来場者数だ。会場では名古屋ソフトウェアセンター内のITコーディネータ組織「NSC―ITCC」のメンバーが講演や個別相談会を実施、相談会に参加した10企業のうちの3社が具体的なコンサルティング契約に至った。現在、情報化による経営改革に取り組み中だという。
 また、その後に同組織のメンバーが実施したITSSP事業の経営者研修会(本年度からはIT経営応援隊の経営者研修会)には、定員の20名を上回る参加希望者があった。いずれも「IT投資に対する意識の高い経営者の方々に来ていただいた」とNSC―ITCC事務局長の江坂昭氏は言う。
 確かに、人数だけ多くても興味の薄い人ばかりでは、マッチングもうまくいかない。意欲ある経営者が足を運んだ背景には、中小企業金融公庫名古屋支店の働きかけがあった。しかし、IT経営への潜在ニーズをどうやってキャッチできたのだろうか。

企業との信頼関係がIT化支援に結びつく

  大野晴久支店長の言葉の中にその秘密があった。
 「私どもでは担当者それぞれが70から100社の企業を受け持ち、頻繁に訪問して経営者の方とざっくばらんにお話をさせていただいております。意思疎通による信頼関係が、お取引のベースにあります」
 フェイス・トゥー・フェイスのコミュニケーションを重ね、取引先と深く知り合う中で、ITに対する興味を引き出し、参加意欲を高めたのだ。企業を訪問する担当者には説明会を実施し、IT経営やITコーディネータについての理解を深めたという。
 また、ITフェアの案内にあたっては、定期的に実施しているアンケートにITに関する質問項目を設けIT活用に関心を持つ企業を事前に把握するなど、準備も念入りに行った。
 「お客様の悩み事を伺って、分野ごとに解決の入口にお連れするのも私どもの仕事だと考えています。その先は専門家にバトンタッチ。ITの課題であれば、ITコーディネータへとなるわけです」
 同支店の野田祐司融資総括副長は融資先企業への「人」や「情報」の紹介も金融機関の役目だと言う。
 融資先企業のメリットを追求した結果のITコーディネータとのマッチング。つまり、それだけITコーディネータへの期待も高いということだ。
 これらの出会いを生かして数件の企業と顧問契約を結んでいるITコーディネータの水口和美氏は、1年を振り返り「経営者研修会では経営者やCIO、経営幹部の方がグループになり、具体的に討議を進めていますが、他社や別のポジションの方の意見を聞くことでさまざまな「気づき」が生まれます。今後は、機会をさらに増やすとともに、きちんと成果を出していくのが我々の使命です」と力強く語った。
 企業、金融機関、ITコーディネータそれぞれに利益がもたらされるWIN―WINのモデルが、ここ名古屋では生まれつつある。

「企業経営にとってITとは?」
中小企業金融公庫名古屋支店
大野晴久 支店長に聞く

 ITが言われ始めて約10年。長い歴史があるわけではありません。最初のころは中小企業サイドでは「ITはまだ関係ない」という状況でしたが、発注側はどんどんインターネットを通じて依頼をしてくる。もう、ITなしでは仕事にならなくなりました。中小企業がITを使うのは当然、そうでもしなければ厳しい環境で生き残ることはできないでしょう。
 しかし、IT活用は受発注にとどまらず、自社の経営に用いるとどうなるかという発想で捉えていただきたいものです。経営者はもとより経営陣全体、できれば課長クラスまで意識改革が必要ではないかと思います。
 個別の企業が具体的に何をするかという段階では、ITコーディネータの役割は大きい。ITは工場の機械と違ってどうやって動いているか見えにくいという性質上、特に専門家のサポートは有効です。
 幸い、この地域は勉強熱心で意欲の高い経営者の方が多い土地柄です。お客様の「成果」を皆様にお伝えすることで輪を広げ、愛知県全体の発展に寄与したいと思っております。
 やはり一度はセミナーや経営者研修会に参加を。まず行ってみないと始まりません。

ITコーディネータ紹介

 ITコーディネータとして自立的なビジネスを展開。江坂氏は愛知県中小企業振興公社、サブマネージャーの顔も持つ。水口氏は株式会社ARUの経営者でもあり、またIT経営応援隊の教科書作成ワーキンググループメンバーとしても活躍中(6月に発表されたIT経営教科書β版には水口氏がコンサルティングを行っている大津鉄工の事例が掲載されている)。
 企業と個別契約を結びコンサルティングを担当する際には人材育成、特に幹部研修を実施するケースが多いという。「幹部がいっせいに育つと会社のレベルが上がる。人間系はすぐ効果が出る」(江坂氏)との理由からだ。企業の課題に沿った個別の研修セミナーを実施できるところが、NSCITCCメンバーの強みと言えそうだ。
 2005年6月8日に開催された「IT経営応援隊in名古屋」では、これまでの取り組みを紹介する講演会が開かれ、大盛況だった。
 大野支店長は「ITコーディネータはITと経営の両方に強い人材ですが、特に経営に強くないと経営者に受け入れてもらえません。その点すばらしい方々」と両氏の活動を評価している。

名古屋ソフトウェアセンター
NSC-ITCC
江坂 昭 氏(写真右)と
水口 和美 氏

URL:http://www.nagoyasc.co.jp/



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