支援制度活用事例


取引先の要望に応え、選ばれる会社に!
欲しいのは生産の現状を把握できる仕組み


池田工業株式会社
所在地 愛知県刈谷市宝町2-3-7
創業 昭和28 年
売上高 19 億円
従業員 75 名
事業内容 カーエアコン部品、フォークリフト部品、繊維機械部品の製造。豊田自動織機を主要取引先とする。
URL http://www.ikeda-ind.co.jp
代表取締役社長 池田 裕幸 氏
     
       



 「世界のトヨタ」のルーツ企業である株式会社豊田自動織機。同社の愛知県刈谷市の本社・工場敷地向かいに立っているのが、池田工業の工場だ。
  豊田自動織機から独立した祖父が始めた事業を、父が会社として設立・発展。現在も豊田自動織機を主要取引先に、カーエアコン部品やフォークリフト部品の切削加工を営んでいる。
  2003年に社長となった池田裕幸社長が心がけているのは「時代に合った経営」だ。「お客様のニーズや働く人の意識の変化をしっかり捉え、お客様も従業員も満足できる会社にしていく」ことを指向している。

課題は生産管理
しかしその前にすべきことが


 社内業務において気になっていたのは生産管理、特に納期面の管理だ。トヨタグループは、有名な「かんばん方式」により、無駄な在庫を持たず、後工程が前工程に対して必要な部品を発注する仕組みをとっている。池田工業へは、事前に内示があった後、「かんばん」が来るが、このデータを社内でどう取り込み、実際の生産計画と連携させていくかが課題となっていた。受注は電子データで受けるものの(EDI)、社内の生産状況は人による管理が中心だったからである。
  池田社長はITを活用した生産管理を実現したいと考えたが、良い方法が見出せないでいた。
  思案していた2004年の夏、中小企業金融公庫名古屋支店から、IT経営応援隊の経営者研修会を紹介される。
  「経営者の研修会でなおかつITでしたから、これは良いと。しかも無料なのは珍しいですし」
  研修では、ITが先ではなく経営面が大切だということを再認識。他社の経営者と議論を交わすスタイルに少し戸惑ったものの、研修が進むうちに同じような悩みを抱えている企業が多いことがわかり、有意義だったという。
  ここで学んだことを具体的に実行しようと、講師を務めたITコーディネータ(ITC)の水口和美氏に社内研修(マネジメント研修)とコンサルティングを依頼、引き続いて中小企業基盤整備機構・中部支部の経営支援アドバイザー(専門家継続派遣事業)の支援を受けてIT導入コンサルティングを依頼し、2007年の新システム構築を目指すこととなった。
  水口氏が池田工業でまず実施したのは「意識改革を目的としたリーダー研修」だった。水口氏は、企業が改革に成功するためには、まず従業員の意欲・意識が大切だと考えている。
  同社では「技術」「品質」「IT」の3つのプロジェクトを立ち上げ、社員自身が現状分析から解決策の提案、目標の設定を行った。

事業拡大を目指すから
システムが必要


 このうち、IT面=生産管理システムが目標とするのは数千点におよぶ製品の製造の進捗状況をコンピューター上で管理し、納期や在庫の問い合せにすぐに対応できること。同時に無駄な事務作業を削減し、新しい仕事の創造に時間を使える体制を目指す。
  ITC水口氏は「仕事量が増加したときや、イレギュラーな事態にも迅速に対応できるよう、社長のパソコンから会社の現状が見えるようにする」と説明する。
  内示↓かんばんという独自スタイルに対応するパッケージソフトが見つからず苦慮したが、水口氏の奔走でめどは立った。今後は細部の仕様検討に入る。
  池田社長が思い切ったシステム構築に踏み切った背景には、次のような思いがある。
  「まず、常に努力をしてお客様に選ばれる会社であること。将来は自分たちが考えた商品を世に出してお客様に喜んでいただけるとなお良い」
  現状に甘んじることなく、ものづくりの喜びをさらに追求するために、池田工業は新しいシステム導入に取り組んでいるのだ。

コラム 中部地区の中小企業に経営改革の機会を提供
中小企業金融公庫 名古屋支店

 池田社長はIT 経営応援隊の経営者研修会に参加し、ITコーディネータ水口氏との出会いやIT 活用に踏み切る機会を得た。
  名古屋地区そして中部地区の経営者にこうした研修会への参加を積極的に呼びかけているキー機関が中小企業金融公庫名古屋支店である。
  「この地域は堅実でローコスト経営を実現している企業が多く頼もしい。今はスピード経営の時代ですから、在庫、出荷など経営者が自社の実態を把握していることが大前提になりました。となれば、ITを駆使するのは必然です」と熊田善三郎支店長は地域企業を激励する。
  政府系金融機関である中小企業金融公庫は、国家施策の流れを汲み中小企業を支援することが使命だ。「融資はもちろんですが、全国規模で収集される経営改革事例のご提供や、コンサルティングなど、幅広いご支援を行っています」という野田祐司副長の言葉どおり、担当職員は企業訪問の際に、常に企業が抱える課題を掴むよう心がけているという。
  その中で、専門家による具体的なコンサルティングが有効と思われる場合には橋渡しを行っており、IT に関連しそうな課題を持つ意欲ある企業には経営者研修会への参加を薦めている。
  名古屋地区では昨年経営者研修会が3コース開催されたが、いずれも満席。池田工業のように個別のコンサルティング契約に至る会社も見られた。
  ただ、紹介する以上、研修会の内容が満足できるものでなければ、融資先企業からの評価は下がってしまう。この点については、「国の推進事業であるIT 経営応援隊であること、名古屋ソフトウェアセンターという信頼できる機関が主催していることで自信を持って推薦できる。そして、ITコーディネータ水口和美さんのように、親身に経営者の立場に立ってコンサルティングができる人材の存在が大きい」(野田副長)と説明する。
  熊田支店長は地域の経営者に向け、「経営者は立場上、独りよがりになりやすい面を持ちますが、私どもは今後も良き相談相手でありたいと考えています。IT に関してはリスクマネジメント、セキュリティの部分も忘れずに取り組んでください」とメッセージを送る。
                
 熊田 善三郎 支店長(左)    野田祐司 副長

ITコーディネータ紹介

  水口氏が経営するコンサルテーションファーム・ARU は名古屋ソフトウェアセンター内にオフィスを構える。別会社ではあるが名古屋ソフトウェアセンターのコンサルティング組織に近い活動形態を取り、中小企業金融公庫や依頼先企業から安心感を得る一つの要因となっている。
  水口氏の経営者研修会は「迫力にあふれる」ことで定評がある。名古屋ソフトウェアセンターの高嶋雅樹専務も「企業の経営を改善したいという熱意が伝わってくる。水口さんを頼ってセンターに相談に訪れる企業も多い」という。
  名古屋地区の経営者研修会はすぐに満席になる好評ぶりだが、高嶋専務は「中小企業金融公庫の皆様のお力で経営者研修会が広まってきたが、この良さをもっとアピールし、地域企業のご支援を進めたい」と気を引き締めている。
IT名古屋ソフトウェアセンター
代表取締役専務
高嶋雅樹 氏(左)
http://www.nagoya-sc.co.jp
 
株式会社ARU 代表取締役
ITコーディネータ
水口和美 氏
http://www.aruinc.jp/



<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>
 経営者研修会の後、水口先生のセミナーを聴講したり、何度かお話する機会がありました。研修会で学んだことを実践に移すにはどうしたらよいか思案していたときに、幹部研修のご提案を受けましたのです。社内から多くの参加希望者があり、内容的にもとても良い研修会でした。それから、継続的ご指導いただいています。
  ITというとその部分ばかりに目が行きますが、今回、経営全体を見てITを道具として使うアドバイスをいただける方に初めて出会うことができました。信頼を持ってご指導いただいています。他の経営者の方にもお勧めしたいですね。(池田社長 談)


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