
キリンビジネスシステムは、07年に親会社のキリンビールが持ち株会社化したことに伴い、グループ内での位置づけ、役割が大きく変わった。
すなわち、グループ唯一の情報システム会社となり、機能分担会社としての位置づけが明確になった。グループ各社の情報システム機能のうち、
開発・運用・ITインフラ構築、管理などの機能はすべて同社に集約され、グループ各社には情報戦略立案、IT予算管理、システム監査などの
一部機能を残すのみとなったのだ。
キリンビジネスシステムの横溝治行常務によれば、このとき、ホールディングスの加藤壹康社長から、次のような指示を受けたという。
「今までのように、各事業(会社)から言われたことだけをやっているだけではいけない。グループ各社の情報機能を担っているという強い識を持って、
積極的に提言してほしい。システムのプロから見ておかしな点や不要と思われることがあったら、遠慮なく指摘してくれ」。
一方、キリングループは持ち株会社に移行した07年を起点とする中期経営計画をスタートさせる。07年度に1兆8000億円だったグループ売上高を2015年度
に3兆円にまで引き上げるこの計画は「KV2015」と名付けられ、グループの大きな目標となった。
こうして、新たな役割を担うことになった同社は、その役割を全うし、「KV2015」の目標を達成するために情報子会社としてどうふるまい、
どうサポートすべきかを考え、必要な"改革"を開始する。グループガバナンス力の強化、IT資産の集中管理、コストセンター化、生産性の向上、
外部パートナーとのコラボレーション強化など、取り組みは多岐にわたるが、そのひとつが、グループの経営理念と同社の経営理念をともに理解し、
自分の行動のなかで常に体現できるようすり合わせること。理念の理解なくしてシステムの設計、構築はできないからだ。
スキルワーカーからナレッジワーカーへの自己変革
「スキルワーカーからナレッジワーカーへの自己変革を」という人材育成の基本理念も定めた。「正直いって、人材育成に課題が残っていた。それは、
人材育成に関する基本理念が欠けていたため、個々の社員が将来どんな能力を身につければよいのか、目標が描けていなかったからだと気づき、
ナレッジワーカーになろうという明確な目標を指し示したのです」同社の横溝治行常務はこう語る。取り組みの成果は着実にあがってきているという。
同社の場合、04年度から当時の経営層自らが率先してITC資格に挑戦してきた。横溝常務もその一人である。その後、部長推薦を受けた社員が毎年1~2名受験
してきた結果、資格所有者は現在、7名までに増えた。社内コミュニティを形成して勉強会やチームサイトを利用した情報交換などを行っている。
ITCは、同社がグループ各社に対して果たすべき新しい役割を考えたとき、大きな戦力になると考えられている。すでに、さまざまな改革の場面でITCが議論を
リードするなど活躍している。
「ITCとして求められる役割は、経営者の日々の業務そのものだと痛感しています。今後も積極的に資格取得者を増やし、
当社、ひいてはグループ各社の発展に寄与したいと考えています」(横溝常務)
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