最新活動事例

連載 ITコーディネータ活用記
<実録 京都室町・矢代仁の経営改革>


連載 第7回 企画提案営業の姿勢が生んだ自社企画の高級品販売
 今回は、ITを活用して高級品を復活させた矢代仁の取り組みについて、担当ITCの小形茂氏と間宮達二氏に執筆していただいた。

株式会社 矢代仁
所在地 京都府京都市中京区室町通二条南入蛸薬師町272-2
創業 享保5年
事業内容 呉服メーカー問屋
URL http://www.yashironi.co.jp


 2006年11月決算期までに無事システム導入を終え、2007年度がスタートしています。目標とするIT活用の効果は、在庫管理強化、売れ筋商品の品揃え及び企画提案営業の強化です。この間に売上管理を販売員ごとから販売催事ごとの売上予実管理に変更し、すでに売上アップが見えてきています。
 今回は、ITの効果を活用して「あるべき姿」を実現させる矢代仁の挑戦と、内部統制強化に向けた第二次のIT化計画をご報告します。製造問屋の原点を見つめ高級品販売に挑戦
 矢代仁は春の催事を「2007矢代仁コレクション.自然の美と匠の調和.」と銘打ち、富裕層のニーズに応える仕掛けを行いました。従来の商品構成から数倍に当たる百万円前後の高級商品を投入することを決定。市場が冷え込んでいる呉服業界で、その挑戦的な動きは、日経流通新聞の1面に掲載され「型破り」と話題を呼んでいます。高級商品である伝統技術を使った自社企画高級品を、なぜ復活させたのでしょうか。
 矢代仁が抱えていた在庫過多の原因を整理すると、買取商品を増やすことで価値のある委託商品を預かるという構造ができており、結果的に在庫増加を招いていました。そこから脱却するため委託商品を増やしたものの、売れ筋でない商品では売上が確保できない悪循環が起きただけでした。
 そこで気付いたのは、矢代仁の本来の姿は「製造問屋」であり、その伝統と技術が失われる方向に進んでいたという事実と反省でした。
 矢代仁では、導入したITをフル活用し、280年の伝統技術を生かす自社企画高級品の開発を目指した「トレサビリティ型」企画提案営業戦略へと方針を転換しました。原糸となる絹の生産地から、糸染、誰が織ったかなど工程を説明できることで、富裕層のお客様に満足していただけるようにしたのです。
 その結果、お客様の求めている売れ筋であり粗利も確保できる高級商品への展開が可能となったのです。
 新商品開発においては、社員が原産地や機場への研修旅行に参加するなど、全社員一丸となっています。我々ITコーディネータも春の催事開催プロジェクトメンバーと一丸となり、企画から支援させていただきました。
 春の催事は大成功のもとに終了し、全国の百貨店から引き合いがあります。秋には業界を巻き込んだ「室町祭」として拡大展開する構想です。
 ITがもたらした営業方法や管理方法の転換効果と全社一丸となった取り組みのシナジー効果で、若手社員の目の色も変わってきました。

○第二次のIT化は加工管理機能のシステム化

 企画催事と並行し、内部統制システム基本方針を発表しています。これを受け第二次のIT化として、お客様から商品を預かり家紋を入れるなどの加工業務管理に、お客様最優先の管理強化システム導入を計画中です。すべての自社商品・預かり商品をシステム上でトレースできるようになるだけでなく、納期別加工状況などの問い合わせが可能となり、納期の確実性も向上、顧客満足度の向上が期待されます。

(ITC―METRO京都 小形茂、間宮達二)


(次号に続く)

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