最新活動事例

連載 ITコーディネータ活用記
<実録 京都室町・矢代仁の経営改革>


連載 第8回 アクションプランの実行で社員の意識も変わった
 御召の老舗・矢代仁の経営改革は大きく前進。今回は2005 年9 月から始めた同社の改革を振り返り、2007 年度の上半期を終え営業利益大幅改善に至る約2 年間の取り組みを、担当のIT コーディネータに整理していただいた。

株式会社 矢代仁
所在地 京都府京都市中京区室町通二条南入蛸薬師町272-2
創業 享保5年
事業内容 呉服メーカー問屋
URL http://www.yashironi.co.jp


 経営者研修会に参加された矢代社長の思いを実現すべく、ITコーディネータとして支援を始め、早2年。
 社是である「慎んで祖業を墜すことなかれ」の原点に帰り、差別化戦略による毎期5%売上増の必達、そして物流改革による在庫圧縮を実現し安定成長企業を目指しました。
 "墜すことなかれ"とは祖業に全精力を集中し、研究を怠らず、ただ一筋に進むという意味だけでなく、製造している商品の品格を落とさないことが信用を保つという重要性を説いています。
 「社長の思い」を礎として、従業員アンケートによる「社員の改革への決意」も加え、改革へのロードマップを「経営戦略企画書」としてまとめました。企画書のアクションプランに基づき会社は変革へと動き始めます。

○在庫と販売に着目したアクションプラン

 作成された主なアクションプランを次に挙げます。
①在庫管理強化による売れ筋商品の品揃え戦略を支援するため、現行のオフコンからオープンタイプの販売管理システムへの移行と活用
②会計システム変更による得意先ごと・担当者ごとの利益の把握(管理会計導入)
③業務の一元管理、シンプルな業務体系を目的とした業務改善
④部門および社員毎の目標管理(バランススコアカード導入)
⑤催事ベースの営業管理による売上目標の徹底、適切な対応施策の実施、タイムリー性改善。さらには継続的な営業研修実施によるスキルアップ
 また、IT化の第2ステージである「お客様の預かり商品加工管理システム」については、8月稼働予定としております。この第二次のシステム導入においても要求事項を整理し、会社が必要とする最低限の機能についてITベンダーに開発を依頼しました。当初の提案内容から余分な部分をそぎ落とし、「身の丈サイズ」のシステム導入により、早く安価なシステム導入を実現しています。意識改革、そして結果もついてきた
 改革から約2年、各アクションプランを着実に実施することで、徐々に社員の意識改革も進んでいきました。すでに2007年の半期決算で、財務諸表の数字にも改革の結果が表れ始めました。一時期少し停滞気味であった業況も、ITを足がかりに、今や完全に停滞期を脱し安定成長企業へと変貌しようとしています。
 しかし、呉服業界は、長年流通段階の在庫量が過剰であるという問題を抱えています。製造から卸、各流通段階への企業間の枠を超えて滞留する過大な在庫を効率的にコントロールするという課題が残されています。その原因はもちろん売れ筋商品の把握などマーケティング不足が挙げられますが、根底には「EDIの標準化」が遅れており、戦略的なIT化の足かせともなっているのが業界としての課題です。
 現在、矢代仁様が呉服業界のリーダーとして『室町(呉服業界)維新』を起こすべく、EDI化などの業界内での勉強会の準備を進めています。
 業界の流通改革を足がかりとし、呉服文化継承に向けた業界活性化も視野に、秋へ向けIT経営推進の勢いは止まりません。

(ITC―METRO京都小形茂、間宮達二)


(次号に続く)

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