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ITコーディネータ座談会
~ITコーディネータが真の経営パートナーになるには?~



経営者の立場に立って経営とITの橋渡しをする人材を育てるべく創設されたITコーディネータ資格制度。 資格取得者は6000人を超え、コンサルタントとして、またITベンダーの社員として、そのスキルを活かして活動を続けている。なかでも中小企業経営者が一番身近に感じるのは、独立した立場でIT導入を支援するITコーディネータであろう。
今回は、LLP(有限責任事業組合)を立ち上げた、大阪、北海道、首都圏で活躍する3名のITコーディネータに、 活動実態と課題、今後への展望を議論していただいた。 (文中敬称略)

[出席者・右から]
佐々木 身智子 氏
ITC札幌有限責任事業組合 副会長
川端 一輝 氏
有限責任事業組合ITC-Labo. 理事長
野村 真実 氏
千葉IT経営支援有限責任事業組合 理事長


  ――まずは皆さんのお立場と、企業経営者との接点をどう作られているのかをお聞かせください。

川端 大阪で運営しているITコーディネータの組織「ITC―Labo」を、一昨年LLPとし、質の高いサービスの提供に努めています。 最近はIT経営応援隊事業の経営者研修会や中小企業金融公庫と連携した研修会などで経営戦略立案をサポートし、 その後、個別契約を結んでIT導入までお手伝いするケースが増えています。

野村 私は5月に独立したばかりです。サービス品質を担保できる組織としてLLPの形態を選びました。
 前はITベンダーに勤務し金融機関のシステムに携わっていました。金融機関の皆様に、 その先のお客様である企業の経営改革を支援するスキームを提供するべく、ITコーディネータやIT経営応援隊活動などをご紹介し、 運営のお手伝いなどを通じてバックアップしてきました。

佐々木 私は札幌のITベンダーに勤務し、お客様企業にコンサルティングサービスを提供していました。
 今年5月からはITコーディネータとしての立場をより明確にし、多様な相談に応じられるよう、新しい組織を立ち上げました。
 現在は9社のITベンダーからITコーディネータが参加しており、中小企業や各種公的機関からの相談、紹介の受付窓口機能を果たしていく予定です。


  ――経営者の方にITコーディネータの価値を認めてもらった、と感じるのはどのような場面ですか。ITコーディネータ紹介

佐々木 社長がITコーディネータの存在をうまく使い分けられていると、「パートナーとして見てくださっているのかな」と感じますね。 あるときは社長と若い世代の間を埋める社員としての役割。また別の場面では第三者として社員の方々に改革の必要性を説明する役割であったり。 その時々の「顔」を求められるのは、具体的な利用価値を見出してくださっている証しだと思います。

川端 一番喜ばれるのは経営者の頭の中をコーディネートすることです。


 ――「頭の中を」とは?

川端 経営課題や経営者として取り組む最優先課題は何かを整理することですね。話を進めるにつれ、ご自身の中で目標が明確になってきます。 そうなると次は組織内のコーディネート。そして社内がまとまったところで企業とITベンダーとの橋渡しをします。テクニックノウハウ、他業界の知識、理論を持つ外部の人間が入ることで、客観的に整理ができて一本の方向に向かっていく。これがまず大事なところです。

野村 私の場合は、IT活用で企業が満足し、それを見て金融機関が満足するという二段階です。金融機関の方には、IT活用推進という新しいサービスメニューを持つことにまず喜んでいただきました。具体的には千葉地区をメインにスタートし、千葉銀行や中小企業金融公庫千葉支店と千葉県の関係を作り、公的資金も使ってセミナーや研修会を開催しました。
経営者の方々も金融機関の紹介なので入りやすいようです。
 ITコーディネータへの評価という点では、やはり川端さんがおっしゃった頭の中が整理されることで目からうろこが落ちた、とか、ITコーディネータが共通で身につけている手法「ITCプロセス」への信頼などでしょうか。


  ――経営者の方々は「ITコーディネータ」というポジションをどの程度認知してくださっているのでしょうか。 ITコーディネータ紹介

佐々木 「ITコーディネータを探しています」という形で連絡が入ることはありませんね。むしろ講演などで資格の内容や仕事の実績を話し、後でお問い合せをいただくことの方が多い。名称に「IT」とついているので、ITのことしかしないのでは、という誤解も少々ありますね。

川端 私もITコーディネータという名前で入ることはないですね。ある会社では、社員の方々に「ITのわかる経営コンサルタント」と説明してもらっています。
例えば経営者研修会では、経営課題が整理できた会社に対し経営戦略を実現するためのITの役割とITコーディネータのポジションを説明しますが、 そこで初めて内容をわかってくださる方もいます。
 講演などでITコーディネータの話をすると、必ずといって良いほど「もっと早く知っていればITで失敗しなかったのに」とおっしゃる経営者に出会います。
名称の認知度はともかく、必要性はご理解いただけると思います。

野村 私が参加している千葉県におけるIT経営応援隊活動は昨年度まで「千葉県経営応援隊」と名づけていました。
これにはITをメインに見せないで裾野を広げようという意図があります。お客様に資格の説明をするときは、「ITコーディネータというのはIT経営コーディネータです」と経営の部分を強調するように心がけています。


  ――利用する企業側は費用が気になるところです。公的支援制度を使う段階は別として、個別契約の場合、金額の設定はどうなっているのでしょうか。ITコーディネータ紹介

野村 税理士など他の"士業"と比べると相場感はわかりにくいかもしれません。私たちの場合は、1日10万円が一つの基準ですね。

川端 ITC―Laboでは2人・半日で20万円の設定です。
 国が費用を出してくれる無料の研修会で経営戦略立案までを行った場合は、終了時にアクションプランや到達目標を示し、民―民で契約をして取り組みを続けるかどうかの判断を仰ぎます。設備投資と同じで経営の品質を上げるための投資が必要なことは皆さんわかっていらっしゃる。
今までに、企業側がやる気になり我々も熱意を持って応援したいと感じたケースで、費用が原因で頓挫したということはありません。

佐々木 もちろん公的な派遣制度を使うのも良いし、一部分だけ依頼してみるなど、パターンはいろいろあります。気軽に声をかけていただければと思います。
それとコンサルティングの場合は相性も大事ですから、もし合わなければ遠慮なく変えていただいてかまわないと思います。


――信頼を得るために気をつけている点はありますか。

川端 経営者の方が身を乗り出してくださる一言を言えるかどうかは大きいですね。私は初期の段階で「この会社の真の課題はこれではないか」と仮説を立て、経営者の方とお話していきます。それがだんだん経営課題の核心としてクリアになってくると、本気になっていただける。

佐々木 ベンダーさんの言いなりになってシステムを入れ換えてしまった企業の方に「システムを作るのが目的ではない。
経営課題の解決に使うのだから一部を入れ替えるだけでも、もしかしたら古いシステムを手書きで補ってもいいかもしれない。
大事なのは何をしたいかです」とお話したら、「そうなんだよ。でもそういうこと、誰も言ってくれないんだよね」と言われました。徹底して企業の立場に立ち、その企業にとって適切な手段を考える姿勢は大切ですね。

野村 ベンダーに関していえば、ITコーディネータとITベンダーは共存できる関係だと思います。
経営戦略が立ち、納得してIT導入を図っていく企業であればベンダーの苦労も少なくなります。ユーザー側でITを使う目的が明確でないと使いこなせず、成果も出にくいですからね。ITベンダーにとっても役立つ存在でありたいと思います。


  ――最後に、ITコーディネータの力を活かせる経営者とはどんな方でしょうか。

佐々木 過去の失敗も含めて現状を隠さず教えていただけると効果が上がりやすいと思います。

野村 ITCと連携し、人づくりに投資を惜しまない経営者は、大きな成果を得ると思います。

川端 成功の条件は、①目標がはっきりしていること、②現状認識がしっかりしていること、③情熱・やる気があること。人の意見をよく聞き、事実を正しく見ようとする方は成功しますね。


  ――今日はありがとうございました。各地ですばらしい経営改革事例が生み出されることを期待しています。



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