業務改革事例

システム調達の監理を支援
~ 最適化によるコスト削減に早くも成果 ~



長野県プロフィール
長野県企画局情報政策課課長       
阿部 精一氏(写真中央)
主任企画員  米沢 義孝氏(写真右)
主任  和田 和美氏(写真左)
人口 220万人
面積 13500Km2
長野県庁 長野市大字南長野字幅下692-2
電話:026-232-0111
URL http://www.pref.nagano.jp/


長野県では2003年から情報化調達の監理業務をITコーディネータに委託。調達の各プロセスで助言を依頼し、県庁内の情報化を円滑に進めている。


  田中康夫氏の知事就任で大胆な改革が進む長野県。県庁に足を踏み入れると職員が笑顔で挨拶。県内の空気同様、来館者を迎え入れる庁内はさわやかさに溢れている。
 財政難が叫ばれる地方自治体だが、長野県も例外ではない。2003年2月に財政改革プログラムを策定し、県庁全体で財政の見直しを行っているところだ。IT活用においては事務職員が担当している業務をIT化で効率化できないか、そして稼働中のホストコンピュータシステムが本当に最小の経費で最大の効果を出しているかとの見直しを進めるなかで、特に情報化調達(基本要求書の策定から運用まで)部分の適正化が課題とされた。そこで、この部分への外部専門家の活用に踏みきったのである。
 庁内情報化を所轄する企画局情報政策課は、専門家として、まずITコーディネータに白羽の矢を立てた。長野県ITコーディネータ協議会・代表幹事の荒井綏氏に相談をもちかけ、同ITC組織のメンバーである村田茂之氏、宮下重美氏、関信一氏の4名に、システム調達監理の業務を委託することにした。

調達面での最適化を目指す

 荒井氏らが平成15年度に監理を担当したのは県庁各担当部署および県機関内の情報システムで、新規開発および改修が5件、システムの保守・維持が8件の合計13件。
 委託業務内容について、長野県企画局情報政策課の米沢義孝主任企画員は「大きな案件を優先に、調達プロセスにおける〈基本要求書作成〉〈システム仕様書作成・設計額積算〉〈システム開発〉〈開発完成〉〈運用開始・保守管理〉の各段階で助言をいただきますが、案件によっては5つの段階のうちから一部を選択して委託するケースもあります」と説明する。担当職員が作成した基本要求書やシステム設計書を評価したり、仕様や積算の妥当性を検証するのが主な役割だ。

<業務プロセスと委託内容>

 基本要求書作成  ← 評価
  ↓
 仕様書作成・設計額積算  ← 評価
  ↓
 入札
  ↓
 システム開発  ← 進捗管理・評価
  ↓
 開発完成  ← 審査・評価
  ↓
 運用開始・保守管理  ← 保守管理・経費評価


 例えば税務課の税務電算システム改修では、税制改正にともなうシステム変更にあたり改修設計の積算チェックを行った。また、新規開発である電子入札システムは要求書・仕様書作成の段階から関わり、「現在はシステム開発段階で基本設計を完成させようとしている。運用はデータセンターの活用を検討中で、低コストかつ安全な運用を計画中」(担当の村田氏)とのことである。

発注価格11%減そして庁内活性化も

  これまでの成果について、長野県企画局情報政策課の阿部精一課長は、「15年度事業の平均で、当初予定より11%の発注価格減が実現しました」と評価する。とくに積算の場面で「一律計算ではなくサンプルチェックするなど、詳細を見てもらった」(米沢氏)ことがコスト削減につながったそうだ。ITC荒井氏は「既存システムの改修率についても、すべて一律にするのではなく、個別のモジュールごとに改修が必要なのかどうか調査した。その結果過大な見積りが発見されたこともある」という。
 さらに、数値部分以外の効果も現れた。阿部課長は、「IT化のちょっとした問題にも相談にのっていただけるという実利的な面をはじめ、既存のシステム運用でもチェックを怠らないITCの姿勢を見ることで、職員の意識改革もできたと思う」と指摘する。第三者の客観的な視点が入ることで、システム内容に関して発注者・受注者の相互理解も深まったそうだ。
 平成16年度は5つの案件が予定されている。長野県ITC協議会では、個々の案件に全力をつくす傍ら、県の情報化推進への積極的な提言、さらには県内市町村への展開も行っていくとのことである。ITCの中立性を活かし、より良い住民サービスが実現されることを期待したい。


ITコーディネータ紹介

 関氏が担当した情報政策課の統合型GISでは、「基本要求書や設計書等のワンポイントアドバイスが中心だが、GIS関係は不法投棄が通報できるシステムなど住民にも役立つものになると思う」という。また宮下氏は「県の限られた経営資源のなかで行政サービス向上、業務効率化、住民の行政参画などに向け、情報化を有効に機能させるよう、戦略化、システム(体系)化、標準化、組織化の4Sの観点から支援していきたい」とのことだ。
村田茂之氏             荒井綏氏(代表幹事)    
           宮下重美氏            関信一氏

        長野県ITコーディネータ協議会
       http://www.m-shinano.com/itc-nagano/


<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>

「ベンダー色がないので中立性が求められる自治体に合っている」

 県としては、ITコーディネータに限らず幅広く専門家を求めて行く方針だが、今回のITCへの依頼では、適正な情報化が行われているかどうかを中立に監理していただけたと思う。信頼度が高く、安心して仕事を任せることができる。
 発注価格が平均11%減というコスト削減効果、またITCの活動を見る中で、職員の意識改革が進むなど、具体的な成果を得ることができた。


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