売れているのに儲からない?ネットショップで取引先を転換
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![]() 安定取引はあるものの支払い条件が厳しい... 「安く仕入れてどんどん売る。儲かるはずなのですが、売るほど に運転資金が厳しくなりまして...」今から5年ほど前、栃木県今市市で特殊肉販売業を営むグルメミートワールドの田村幸雄社長は、取引慣習による資金繰りの問題に頭を悩ませていた。世界的な観光地日光、鬼怒川・川治温泉をはじめとする栃木県北部では、土地柄、鹿、鴨、イノシシ、ジビエなど、猟師の扱う「山の幸」が名物の一つとして好まれている。近隣に有名観光地を持つ地の利を活かし、同社はホテルやレストランへの特殊食肉販売を手がけてきた。取り扱い種類の豊富さと品質で、取引先からは高い信頼を得ていた。ところが観光地のホテルには支払いを納品の3ヵ月後や半年後とするところが少なくない。その結果売掛金が増え、なかなか余力が持てない状況が続いた。折りしも地元地銀の経営悪化が喧伝されており、田村社長は「新しい方向を見出し、地元だけに頼らないビジネスを立ち上げなければ」と焦りを覚えていた。 ![]() Webサイトで通販! ノウハウ学びに大阪へも 食肉業界のマーケットを分析してみると、特殊肉、いわゆるグルメミートを一般に販売している店はほとんどない。一般食肉に手を広げず、グルメミートに特化して個人客や小規模レストランに販売すれば、独自のポジションを得られるに違いない。「全国を相手に、グルメミートを通販する」――これが同社の目指す方向と決まった。では全国の潜在顧客に自社の存在をどうやって伝えればよいだろうか。田村社長が選んだのはインターネットのWebサイトだった。「DMを1回出したら200万、300万円はかかってしまう。しかしインターネットなら少ない資金で案内が出せる。自分の働きかけに対して顧客の反応が見えやすい点もメリットだった」。だが、当時周囲にはインターネット通販に成功した企業はなく、具体的なイメージが描けない。それなら「売っている人」に学ぼうと、大阪産業創造館が主催するネットショップ支援の講座に申し込み、栃木から大阪まで何度も足を運んで勉強したという。 ![]() 会員数が6000名を突破 売上の半分がネット経由に 通販を目指した同社はWebに販売機能(ショッピングカート機能)を持たせた。会員登録をした顧客は自分専用のサイトが表示され、欲しい商品を選択し24時間いつでも購入の申し込みができる。当日の15時までに受け付けた商品は同日中に全国に発送し、「迅速さ」にも心がけた。試行錯誤でサイトの改良を続けるにつれ、会員数は6200人に達し、売上も上昇。昨年は約1億円、今年は2億円近くがネットの売上となった。その結果、支払い条件が厳しい企業との取引に必ずしもこだわらなくてすむようになった。現在では総売上の50%以上がWebサイトによるものとなっている。では、同社の成功要因はどこにあったのだろうか。 本年4月から同社のコンサルティングに携わっているITコーディネータの福沢繁氏は、「マーケティングが徹底していることが第一要因。自社サイトに訪れる人のことを研究している」と分析する。検索エンジンでヒット率を上げる対策や懸賞サイトを活用してメールマガジン読者を増やすなどの定石を踏まえつつ、田村社長は「インターネットは商品を買う人より調べ物をしている人が圧倒的に多い」ことに着目。Webサイトには、グルメミートの詳細情報や調理法の紹介、購入顧客の感想などを掲載していった。 さらに、2004年11月からはショッピングカートと社内のデータベースを連携させ、一人の顧客の受注から発送までの流れをスムーズにするとともに、顧客の購買データをマーケティングに利用することも検討しているとのことだ。 現在、ネット担当者2人、発送や伝票発行などの担当者2人で年間2億円の注文をさばいている。「少数精鋭の会社がビジネスを拡大するのはインターネットでなければできない」と言う田村社長は、数年間を振り返り、このような感想を述べる。「私はホームページの作り方もデータベースも全然わからないアナログ人間ですが、そういう人の方が逆に道具の使い方が見えてくる。顧客との関わりの深さは小売店舗以上ともいえますから、インターネットはアナログ。そしてITはアナログなんだと思います」 ![]()
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![]() <ITコーディネータを活用してどうでしたか> これからはマーケティングだけでなくバックヤードにも力を注ぎたいと思っていた。ITCに入ってもらいバランススコアカードやSWOT分析などを実施し、戦略的に見えてきた部分が多い。さらに掘り下げていろいろなアイディアを創出していきたい(田村社長談)
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