業務改革事例

ビジネスの価値と新しいワークスタイルで人材を惹きつける
茨城県つくば市 婦人メーカー モネット(モーハウス)
(平成18年度IT経営百選最優秀賞受賞)




モネット有限会社
所在地 茨城県つくば市山中480-38
創業 平成14年
従業員 45名(社員4名)
事業内容 授乳服販売。東京・青山の店舗販売、全国の産婦人科での販売・カタログ販売・ネット販売を行う
URL http://www.mo-house.net/
     
    茨城県つくば市のモネットは授乳服のメーカー
(ブランド名は「モーハウス」)。
「授乳服? 男には関係ない」と思わないでいただきたい。
同社のあり方には、男性には気づきにくい
経営のヒントが詰まっている。
代表
光畑由佳 氏
   


自分が得た解放感を皆に伝えたい

 授乳服とは、授乳がスムーズにできるよう工夫された服。見た目は一般の服と変わらないが、これを着れば赤ちゃんを連れて外に出た女性が、周りに気兼ねなく母乳をあげられる。
 光畑由佳社長が公共の場で授乳をした体験から、開発・販売に踏み切ったのだという。
 商品の販売を始めて10年、会社組織にしてから5年が経ち、現在はWebサイトと紙のパンフレットを併用した通信販売で3万人の顧客を獲得している。
 2005年に東京・青山にアンテナショップも開店した。
 しかし光畑社長は、「これを商売にしたいという意識はなかった」のだと言う。
  「授乳服を着ることで、子どもがいる方の生活が180度変わる。母乳期は外出をせず我慢することが当たり前とされていたが、それはストレスでないわけはない」
  光畑社長は、「子供のために」と家に閉じこもる女性たちの意識改革に努め、授乳服を着て豊かな子育てライフを目指すことに仕事の重点を置いた。
 授乳の様子を見せる「授乳ショー」などのイベントを開催する一方、豊富な人脈を活かして助産師をはじめとする専門家の応援も得る。
 こうした取り組みに伴い共感は徐々に広がっていく。最近では、夫から妻へのプレゼントの需要も増え、母親の育児のつらい部分を理解しないと言われていた男性にも変化が見え始めている。


子連れ就業を可能にしたら、優秀な女性が集まった

 モーハウスのビジネスは、それ自体がライフスタイルの変化、つまり社会貢献に結びつくものであり、この方針に賛同して同社の活動に多くの女性が参加するようになった。
 販売者―消費者の関係というより、「自分らしいライフスタイル」の確立を目指す子育て女性の仲間という意識が強い。それがモーハウスの商品力とブランド力につながっている。
 モーハウスの従業員は全員女性。大半が授乳経験者であるため、経験が商品企画に生かされる。さらにオフィスに赤ちゃんを連れてくる「子連れ就業」が認められているほか、在宅での勤務やパートタイム勤務など、多様な働き方を受容している。
 託児所があるならともかく、職場に子どもがいるというのは「固い頭」では想像しえないが、ここではごく普通の風景だ。このユニークな制度で同社は強みを得ることになる。
 「小さい企業は人員の確保が難しいにもかかわらず、優秀な方を採用しやすくなった。子連れ出勤などの多様性がなければ実現できなかったと思います」(光畑社長)
 採用時は企画・発想力や的確なアクションが起こせる能力を重視するそうだが、従業員の中には、国家公務員第一種職の経験者もいるとのことだ。
 仕事自体が社会的な意義を持ち仲間を幸せにできる。自分の実感や経験が生かせ、子どもと一緒の生活リズムを保ちながら能力を発揮できる。
 そうした仕事・職場が意欲ある女性を惹きつけるのであろう。


チーム制で仕事をシェア、ITで情報共有

 ただ現実には、子どもの病気などで出勤の安定度は低くならざるを得ない。
 そのため光畑社長は、仕事はチーム制でシェアし、情報共有を重視。
 社員のスケジュール管理、社員同士の連絡にはメーリングリストを利用するなど、ITを積極的に活用している。
 「こうあらねばならない」という社会通念にとらわれず、現実や実感に誠実に発想することで、より良い方向が浮かび上がってきた。
 知らず知らずのうちに「会社とは、経営とはこうでなければいけない」と思い込みがちだが、経営者の感性がその突破口にもなるのだ。


ITコーディネータ紹介

 茨城県つくば市、土浦市などを中心にコンサルティング活動を行っている。
 平成16年6月つくば市商工会の相談会でモネットの光畑社長と出会い、翌年から社員の業務改善に関する相談、ITSSP 経営者研修、茨城県専門家派遣事業のコンサルティングを行う中で同社の独自性を知り、IT 経営百選への推薦につながった。
 モネットの経営の特徴は「起業の動機」と「方策の展開」にあるという。お母さんを諸々の束縛から解放したいという社長の思いが、日本における授乳服の発売につながり、更には子連れ就業、全国各地でのモーハウスサークル結成へと発展している。
 これらの方策が人を引き寄せ、顧客あるいは支援者となった人に満足を提供している。
 限界の見えたマスプロ・マスマーケティングから脱却する「個客」指向のユニークなビジネスモデルだと評価している。

ITコーディネータ茨城
http://www.itc-ibaraki.com

ITコーディネータ

堀越眞哉 氏
星データ企画



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