
「世界のトヨタ」のルーツ企業である株式会社豊田自動織機。同社の愛知県刈谷市の本社・工場敷地向かいに立っているのが、池田工業の工場だ。
豊田自動織機から独立した祖父が始めた事業を、父が会社として設立・発展。現在も豊田自動織機を主要取引先に、カーエアコン部品やフォークリフト部品の切削加工を営んでいる。
2003年に社長となった池田裕幸社長が心がけているのは「時代に合った経営」だ。「お客様のニーズや働く人の意識の変化をしっかり捉え、お客様も従業員も満足できる会社にしていく」ことを指向している。

課題は生産管理
しかしその前にすべきことが
社内業務において気になっていたのは生産管理、特に納期面の管理だ。トヨタグループは、有名な「かんばん方式」により、無駄な在庫を持たず、後工程が前工程に対して必要な部品を発注する仕組みをとっている。池田工業へは、事前に内示があった後、「かんばん」が来るが、このデータを社内でどう取り込み、実際の生産計画と連携させていくかが課題となっていた。受注は電子データで受けるものの(EDI)、社内の生産状況は人による管理が中心だったからである。
池田社長はITを活用した生産管理を実現したいと考えたが、良い方法が見出せないでいた。
思案していた2004年の夏、中小企業金融公庫名古屋支店から、IT経営応援隊の経営者研修会を紹介される。
「経営者の研修会でなおかつITでしたから、これは良いと。しかも無料なのは珍しいですし」
研修では、ITが先ではなく経営面が大切だということを再認識。他社の経営者と議論を交わすスタイルに少し戸惑ったものの、研修が進むうちに同じような悩みを抱えている企業が多いことがわかり、有意義だったという。
ここで学んだことを具体的に実行しようと、講師を務めたITコーディネータ(ITC)の水口和美氏に社内研修(マネジメント研修)とコンサルティングを依頼、引き続いて中小企業基盤整備機構・中部支部の経営支援アドバイザー(専門家継続派遣事業)の支援を受けてIT導入コンサルティングを依頼し、2007年の新システム構築を目指すこととなった。
水口氏が池田工業でまず実施したのは「意識改革を目的としたリーダー研修」だった。水口氏は、企業が改革に成功するためには、まず従業員の意欲・意識が大切だと考えている。
同社では「技術」「品質」「IT」の3つのプロジェクトを立ち上げ、社員自身が現状分析から解決策の提案、目標の設定を行った。

事業拡大を目指すから
システムが必要
このうち、IT面=生産管理システムが目標とするのは数千点におよぶ製品の製造の進捗状況をコンピューター上で管理し、納期や在庫の問い合せにすぐに対応できること。同時に無駄な事務作業を削減し、新しい仕事の創造に時間を使える体制を目指す。
ITC水口氏は「仕事量が増加したときや、イレギュラーな事態にも迅速に対応できるよう、社長のパソコンから会社の現状が見えるようにする」と説明する。
内示↓かんばんという独自スタイルに対応するパッケージソフトが見つからず苦慮したが、水口氏の奔走でめどは立った。今後は細部の仕様検討に入る。
池田社長が思い切ったシステム構築に踏み切った背景には、次のような思いがある。
「まず、常に努力をしてお客様に選ばれる会社であること。将来は自分たちが考えた商品を世に出してお客様に喜んでいただけるとなお良い」
現状に甘んじることなく、ものづくりの喜びをさらに追求するために、池田工業は新しいシステム導入に取り組んでいるのだ。
|
|