
共立コンピューターサービス(株)は、大垣共立銀行の情報子会社。岐阜県を中心に100ほどある同行の営業店から顧客の紹介を受ける形で事業を展開している。
顧客は業種も業態もさまざま、規模もまちまちである。したがって、どんな要望が入ってくるかわからない。このため、いかなるシステム需要にも応えられるよう、
常日頃からスキルを磨き、準備しておく必要がある。
同社が、これからは上流から下流までの一貫した支援態勢を整える必要があると考え、「ITベンダーからビジネスパートナーへ」という事業ドメインの転換に
動いたのは、02年4月。具体的には、コンサル事業に進出し、事業エリアの拡大を図ろうとした。
「その1年前にITC制度が誕生しており、私どもの社員の1人が第1期のITCのインストラクターに採用されました。そんなことにも力を得て、コンサル事業に進出した
のです」自身もITCである野村龍一郎常務はこう話す。「それまでは、お客様に仕様を切ってもらい、その仕様に基づいたシテムを構築し、納入していました。
しかし、お客さまの仕事の中身をきちんと理解していなかったり経営戦略との齟齬があったりで、お客様から"システムのプロのくせに何も分からんのか"
とお叱りを受けることもありました。工程数をオーバーすることもしばしばで、開発リスクを軽減しつつバランスのとれた顧客支援をしたいという思いも
コンサルに進出した背景にありました」(野村常務)
こうしてスタートしたコンサル業務。中心スタッフとして業務を支えたのが社内に育ちつつあったITCだった。現在ではITCも13名に増え、幅広くコンサル事業を
展開している。「一件あたりのコンサル受注額は平均すると500~600万円ですが、ほとんどの場合、その後にシステム開発の依頼が舞い込みます。
受注額はコンサルの5〜6倍。すでにコンサルで業務内容やシステムの仕様も細かいところまでわかっていますので、効率よく開発を進められます」(野村常務)
経営者がシステム化の意義を理解し、後押ししてくれた
実際に、コンサルから入ってシステム構築を受注し、顧客に喜ばれた事例がある。岐阜市に本拠を置くレディスフォーマルウェアの大手企業、ラブリークイーン(株)
の案件である。経済産業省が実施した「IT化導入事例発表会」での出合いをきっかけに中期経営計画に照らしたIT化戦略計画を提案、
これを実現するためのコンサルから入っていった。このときの主たる課題が、店頭のIT化。同社は、直営店も含め、全国に800以上の店舗を有している。が、
大半が百貨店や量販店の一角にテナントとして入っている形態であるため、独自のネットワークインフラを自由に導入することは不可能だった。そこで、
携帯電話をモバイル端末として活用した仕組みを考案。Bluetoothを利用したバーコードスキャナと組み合わせるなどして、インフラの問題を解決すると同時に、
投資額の大幅な削減を実現した。その結果、従来はFAXで売上実績を本部に送っていたため集計するのに3~4日かかっていたものが、翌日の朝までに売れ筋や購買層
などのデータも含めた売上情報が揃うようになった。1 ヶ月で約1400時間もの作業時間を削減する効果もあったという。
「携帯電話には店員さんが販売情報を入力します。当初、その手間を嫌がる店員さんが大半で、一時は導入計画そのものが暗礁に乗り上げかかったのですが、
CIOを務めていた井上常務(社長の息子さん)が全店を回って説得してくれました。経営者がシステム化の意義を理解し、後押ししてくれることの大事さを肌身で
知った案件でもあります」(野村常務)
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