◆社員に生まれた自覚で能力向上に歴然とした効果

サービス営業力強化の具体策としてプログラム化
富士ゼロックス株式会社
販売本部 中央支社 産業第四営業部 部長 阪本 雅司氏 (ITコーディネータ)
(機関誌「架け橋」第2号、2007年1月発行より転載、役職は当時)



 富士ゼロックスは複合機を始めとしてドキュメントシステムを主軸とするベンダーとして知られるが、実は現在の最重要テーマに掲げているのが 「サービス営業力強化」。単に優れた製品を提供するというのではなく、顧客企業の抱える課題を的確に掴み、その解決手段・方法の提供に 力を入れようというものだ。
 こうした戦略を推進するには、人材の育成が不可欠。その具体策として、2004年下期から「ITコーディネータ(ITC)推進プログラム」を全社的に展開している。 同社には、「X’s-MAP(クロスマップ)研修」という独自に開発した営業担当者向けの必修カリキュラムがあるが、ITC推進プログラムは、さらなる ステップアップとしてITC資格取得を社員が任意で受けられる仕組みとなっている。
 同社がITCに注目するきっかけを作ったのは、社内のITC第1号である現・販売本部中央支社産業第四営業部の阪本雅司部長だった。SE職を約13年ほど経験した後、 マーケティング部門を経て営業職に就いた同氏は、「それまでの経験を体系化して営業活動に生かせないものか」と思っていた。そこで偶然にITC制度があることを 知り、独学で資格取得に取り組んだ。さらには、自ら習得したITCスキルを伝授するための「ITC実践道場」なる独自の教育活動や、ITCプロセスで整理した 顧客支援事例集の作成など、ITCスキルの活用メリットを社内に広めることにも尽力した。
 「お客様の経営・業務課題を知るところから始めるという点は、当社のX’s-MAP研修の狙いも同様なのですが、ITCは共通のスキル。お客様に対して私どものサービス 営業力を証明するためにも、資格取得を社内で推進すべきだと考えたのです」と、阪本部長は当時を振り返ってこう話す。
 ITC推進プログラムは、スタートから1年足らずの2005年3月時点で約350名の資格取得者を輩出するほど急速に浸透した。また、同様の取り組みが全国各地の販社にも広がっている。
 阪本部長によれば、営業の実務現場にも明らかな変化が起こっている。「ITC資格を取得した社員には、『ITCなのだから』という自覚から、 お客様の課題を多角的な視点で分析しよう、新しい知識を吸収しようといった意欲的な姿勢が見られます。まだ資格を取得していない社員と比べると、 その差は歴然としています」。ただ、実際の商談における顧客とのやり取りにおいては、ITCプロセスをそのまま提案ツールとして適用できるケースはまだ少ない。
 地域販社はともかく、富士ゼロックス本体では比較的規模の大きな企業を主要ターゲットとしているからだ。しかしそれでも、社内においてITCプロセスが共通 スキルとして広がりつつあることで、顧客提案などの打ち合わせが以前よりもスムーズに行えるようになったという。また阪本部長は、「サービス営業力強化を進める うえでも、ITC資格という1つの基準が設定できたことで、マネジメントがやりやすくなりました」と、ITC推進プログラム導入の副次効果も挙げている。

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