◆経験や勘に頼らない普遍的な手法を活用

ITCプロセスによるコンサルがプロフィットを生む
株式会社 オービックビジネスコンサルタント
代表取締役社長 和田 成史 氏
(機関誌「架け橋」第4号、2008年3月発行より転載)
 


 ITC資格取得への取り組みは2003年春から開始しましたが、私の中では、1980年に当社を設立する時からITCのようなスキルを持つ人材を育てていきたいという強い思いがありました。というのも、私自身がかつて企業に対するシステム導入のコンサルティングに携わった経験があり、「IT活用のアドバイスをすることはお客様企業の経営戦略にとって非常に重要で、やりがいのある仕事だ」と肌で感じていたからです。そういう点で、お客様の視点で物事を考えていくスキルやナレッジを社員が身に付けるために、ITC資格は格好の制度でした。
 当社では、まず営業部隊から選抜した14名が先駆けとなって2003年4月のケース研修に参加し、彼らの活躍に刺激を受けた他の社員が資格取得に積極的に取り組むという形で広がってきました。受験は個々の自発性に任せていますが、「入社5年以上・リーダー職以上で、部門責任者が推薦すること」という申請基準を設けており、これまでに約50名が資格を取得しました。当面の目標は100名規模、願いとしては「社員全員がITC資格を取ってほしい」と思っています。
 資格保有者・申請者とも幅広い部門にわたっていますが、人数が多いのは、やはり上流工程のコンサルティング業務に携わる営業系の社員。次にカスタマイズや他社製品との連動などシステムに関するシステムコンサルティング業務を手がけるSEです。一方、製品開発部門でも、コンセプト策定やコンポーネント化などの作業でITCスキルを役立てている社員がいます。
 ベンダーの人間というのは、ややもすると自社のソリューションの中だけでのビジネス、「当社の製品はこうです」といった提案にばかり目が行ってしまいますが、 ITC資格を取得した社員は、ケース研修での気付きによって、それまでの意識を改めることができています。さらに、ITCプロセスという普遍的でしっかりとした理論・手法を身に付けたことで、経験や勘に頼ることなく、お客様のIT活用を成功へと導く方法をさまざまな観点から総合的に判断できるようになりました。
 ITC資格試験の受験料・ケース研修費用に加え、合格後のITC協会公認セミナーへの参加費なども会社側で全額負担してはいますが、社内での定期的な研修や勉強会は今のところ設けていません。ただ、各部門・グループで行われる会議や同期のITC同士で情報共有・交換は行われていますし、当社のパートナー企業にも ITC資格取得者が結構いらっしゃるので、日常的な業務の中で社外の方とITCスキルを研鑽し合えることも多いと思います。

ITCの"知のネットワーク"が広がっていくことにも期待

 時宜に適ったテーマや課題などを研究会で深堀りしていくのは非常に意義がありますし、その内容をカンファレンスで発表すれば多くのITCが情報を共有できますね。社内で部門横断的な研修を行おうとすると、皆に共通する内容を決めるのがなかなか難しいので、むしろ公的な機関が実施してくれるほうが参加しやすいといえるかもしれません。もちろん、そうした場でITC同士が知り合い、ビジネスでの連携につながるきっかけも生まれるでしょう。
 当社はパートナービジネスで業界のさまざまな方々と接する機会が多いですから、単独でも企業を超えたITC同士の連携というのは作りやすいとは思いますが、協会が先導役となってITCの"知のネットワーク"が広がっていくことにも期待しています。

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