業務改革事例

受発注業務の改革
~ ローコスト経営への大転換で危機を脱出 ~



千葉セルコ
小売主催の食品ボランタリーチェーン本部会社。加工食品、菓子類、日用雑貨類等を取り扱う。現在の加盟店は8社13店舗。

能勢勝美本部長
本社 千葉県千葉市中央区出州港14-35
従業員 4名
業種 卸売業
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売上半減。このままでは会社が危ない!

「46億円くらいあった売上が加盟店の脱退などもあり半分に下がったのです。解散するなら財産のある今のうちだと言う人もいるくらい、大きな危機に直面しました」――今から10年ほど前、食品ボランタリーチェーン(独立小売店が主体となり任意に形成したチェーン)を営む株式会社千葉セルコ(千葉県千葉市)が迎えた経営危機を本部長の能勢勝美氏はこう述懐する。
 立て直しには思いきった決断が必要と考えた同社は千葉県・千葉市に相談をもちかけ専門家の派遣を受けることにしたが、一つだけ条件を出した。それは「企業実態に合わせたコンサルティングができる、現場に明るいコンサルタントを」ということだった。過去に依頼したコンサルタントは「大企業で成功した手法を教科書的に押しつけてくるだけ」で思うような結果が得られなかったからだ。そこで千葉県の産業振興センターからITコーディネータ(ITC)小林勇治氏が派遣され同社の再建を担当、派遣任期の切れた翌年からは民間ベースでのコンサルティングを行うことになる。

システムのみならず加盟店との良好な関係づくりまで-ITCのノウハウが隅々で生きる

 小林氏はじっくりと時間をかけ現状を分析、経営改革の計画を立案していく。そして、コンサルティング開始から3年後の1998年に行った本格的な情報システム改革以降、利益は上昇を続ける。加盟店への還元を含めた貢献利益は、IT投資開始時を100とすると3年間で200以上に向上、数字にして2000万円以上をはじき出した。売上はほぼ横ばいだったから、大幅なコスト削減がなされたことになる。
 では、このようなコスト削減を導いた改革の中味とは何だろうか。
 現在、8企業13店舗が加盟するチェーンであるにもかかわらず、同社のオフィスに足を踏み入れると電話がほとんど鳴らないことに気付く。これは、EOS(電子発注システム)がフル稼働しており、徹底した省力化がなされているからだ。
 第一の改革ポイントであるEOSシステムの再構築では、手作業が伴う業務を極力自動化した。例えば通常と価格が異なる特売品もこのシステムで及えるようにして、本部で7日かかっていた発注作業を0.5日に短縮した。またシステムに原価チェック機能を盛り込むことで加盟店側の発注―買掛―照合という一連の作業を削減するなど、徹底した省力化を実現したのである。買掛照合にかかる時間も、9日から0.5日へと激減した。
 発注業務に関しては、システム化のみならず仕入原価の引き下げにも取り組んだ。①不当に高い仕入原価を排除すべく、外部の原価情報を入手しそれを基準に交渉する、②別の交渉相手に話がもれないよう防音性に優れた商談ルームを設けるなど、データに裏付けられた「強気」の商談を進めたのだ。この結果、仕入原価は3.6%~7%の削減を見ることになる。  そしてもう一つのポイントは加盟店との良好な関係づくりだ。
 なぜなら、加盟店といえども少しでも安値を求めて他社に発注するケースも多く、本部との関係がなかなか安定しないという不安があったからである。
 ITC小林氏は、取引額の多い加盟店に特売商品を優先的に回すなど、セルコとの安定的取引が加盟店に有利となる仕組みを提案した。店舗側はセルコとの取引にメリットを感じ、他社への浮気を控えるようになったほか、頻繁に価格交渉を行うことから解放され「いかに売るか」に専念できるようになったという。
 小林氏が「ITの導入だけでなく商慣習にまで踏み込んでこそ真の成果が出る」と指摘する通り、このような商売手法の転換も成功の一要因となっている。

大きな投資も「十分元がとれた」

 チェーン全体での業務効率の大幅アップ、仕入コスト削減、加盟店との良好な関係づくり、さらには物流センターのアウトソーシングなどを含め、IT化と業務改善との調和の取れた組み合せがローコスト経営を実現した千葉セルコ。
 とはいえシステム導入時の投資は約2000万円にのぼり、その年は営業赤字にもなった。しかし、これが良かったのか悪かったのかは結果が示す通り。「十分元が取れた」と能勢部長の満足度は極めて高い。
 大がかりなシステム改善や導入には出費が伴い一時的に業績が下がる場合もあるが、目標をもってこの時期を乗り切ることが成功へのポイントと言えそうだ。
 小林氏は「従業員のマインドが整ってこそ本当の成果が出る。決意したらやりきることが大切」とアドバイスする。いずれにしても数年後に結果が出る大きな投資を行う場合は、信頼できるアドバイザーとの二人三脚が不可欠になるだろう。
 能勢本部長は「小さな会社でもここまでできるということがわかった」と現在の心境を語る。この成果を土台に、次はPOSと連動した棚割り改善による加盟店の販売拡大に取組むとのことだ。



ITコーディネータ紹介

 ITコーディネータ制度の発足前から経営とITの両方がわかるコンサルタントとして活躍、20年にわたる豊富な経験と実績を持つ。効果を定量的に出せなければ顧客は満足しないとの方針に基づき、コンサルティングの期待効果をあらかじめ明示している。成果を上げるためには、マインドウェア、ヒューマンウェア、コミュニケーションウェア、ソフトウェア、ハードウェアの5つの視点でのバランスのとれたレベルアップが必要と、独自の「MiCoSH (ミーコッシュ)革命」という理論を作り上げた。口調は厳しいが、経験に基づいたノウハウと成功まであきらめることなく経営者を牽引する力が経営者の信用を得ている。

小林 勇治 氏


<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>

「数値で結果を出してもらえるのがなにより」
 以前、頼んだコンサルタントは教科書通りの話をするだけで、我々の企業実態に現状に合いませんでした。今回は事前に数字による成果を予測いただき、また、結果もその通りになるので大変信頼しています。我々が5つしか解決方法を知らないところに6つ目を提案してくれるのがコンサルタント活用の良さだと思います。
(千葉セルコ 能勢勝美本部長談)



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