業務改革事例

在庫管理改革から経営改革へ
~ 適正なベンダー選びが高品質システムのカギ ~



株式会社武田
代表取締役社長
駒田 健治 氏

取締役 経理部長
坂下 健 氏
本社 大阪府東大阪市横枕西86
設立 1962年
従業員 89名
業種 美容・理容用品総合卸業
理容・美容サロンで扱う様々なアイテム約3万点を全国の卸業者に対し大卸している。
ポリシーは「心の豊かさを大切に」。昨今の値下げ競争に巻きこまれず健全経営を続けている。


どうする!? 3万アイテムの在庫管理

 理容室や美容室にある「もの」を思い浮かべて欲しい。薬剤・化粧品、ハサミやブラシ、ヘアピンまで、店舗内ではたくさんの消耗品や道具が使われている。これら、理美容サロンで扱う3万アイテムを全国の卸業者に大卸しているのが、大阪府東大阪市に本社を構える武田である。
 同種の大卸は全国で50社ほどだが、その先の理美容サロンは約32万軒。うち7割近くが一人で経営している小規模店舗だ。対サロン卸業者も小規模企業が多く存在しているため、パソコンを入れてオンライン取引を行うといったIT化はあまり進んでいない。
 ところが、最近は一部の企業でIT化の動きがあり、システムを連動できないかという要望が出るようになったという。
 さらに、「最近は皆、在庫を嫌うので発注が少量・多品種・多回数になってきた」と武田の駒田健治社長は説明する。これに対応するため、省力化して社内コストを抑える必要が出てきたのだ。
 一方、取締役経理部長の坂下健氏は「アイテムが3万もあると帳簿上の在庫と実在庫がずれることがありお客様にご迷惑をかけることもあった。さらに経理の立場では資料がすぐ手に入らず経営分析を迅速に行えない」との問題を感じていたという。

どのコンサルタントに聞けばよいのか?

 物流から見直しをしようと考えた同社は、物流系のコンサルタントに意見を求める。一定のアドバイスは受けられたものの、システム化に向けてITベンダー(システム会社)に提案を依頼すると、ベンダーは物流コンサルタントとは違う意見を言う。
 ――いったいだれのアドバイスを聞けばよいのか...。
 悩んだ同社が白羽の矢を立てたのがITコーディネータだった。「コンサルタントとベンダーの話が一致せず困っていたところ、UFJ銀行からITコーディネータの存在を紹介されたのです」と坂下氏は述懐する。早速、中小企業基盤整備機構(当時は中小企業総合事業団)のIT推進アドバイザー派遣制度に申し込み、ITコーディネータの川端一輝氏にベンダー選定のアドバイスを依頼することにした。
 依頼を受けた川端氏は、いきなりベンダー選定の助言するのではなく、選定基準の元となる「会社の経営課題」の整理を提案した。15名ほどの関係社員にも参加してもらい、①現状はどうなのか<である>を共有、そして②達成したい目標<べき>を共有。これを③行動プランである<する>に整理し、武田が求めるシステムをまとめた「システム提案要求書(RFP)」に結実させていった。
 この過程において、駒田社長は「ベテラン社員は商品台帳が頭に入っているくらい業務に精通しているがゆえに、システム導入には抵抗が起きやすい。私は『将来を考えて決めたことだ、疑うな』と宣言し、わだかまりが残らないようにした」と留意点を指摘する。
 今では年齢の高いベテラン社員もやる気をもって取り組んでいるそうだ。

ベンダー選びがスムーズに システム化に弾み

 ベンダーの選定に関しては、作成したRFPに基づき各社から具体的な提案を出してもらうという方式を取った。関係者がその内容を子細に検討し、2004年5月末、13社の中から1社が選び出された。
 選定にあたっては、
・自分たちが書いたRFPをきちんと理解し、武田のためのシステムを作ってくれるかどうか
・将来予定されている社外とのシステム連携が可能か・きちんとしたサポートが継続的に行われるか
・ベンダー内にITコーディネータもしくは同等の能力をもつ人材がいるか
などについて、関係者が各ベンダーから出された提案書をそれぞれ吟味。皆の評価はおおむね一致したそうだ。これは経営課題やシステム要求内容が共有され、選定基準が明確にされた証とも言えるだろう。
 坂下氏は「過去、オフコン時代にどんどん担当者が変わってレベルが低下した苦い経験がある。レベルの高いSEが継続してサポートしてくれることは欠かせない条件だった」と説明している。
 また、ITコーディネータについては、「ビルの建設に例えるなら、ベンダーは建設会社、ITコーディネータは設計士のようなものと言える。第三者に客観的なアドバイスを求めるのは効果が高い。そのためのお金は惜しんではいけない」(駒田社長)と満足度も高いようだ。
 ITコーディネータの川端氏は、「武田さんの特にすばらしいところは、システム化にあたり駒田社長が強力なリーダーシップを持ち方針がトップダウンで伝わる一方、実現に向けては担当社員が参加意欲をもって取り組み、ボトムアップで進んでいる点です。非常によい方向でプロジェクトが進行していると見ています」と分析する。
 ベンダー選定が終了し、2004年夏からはいよいよシステム構築が始まった。
 でも駒田社長には少しだけ気になることがある。それはIT化は便利だが、均一化して個性がなくなったり心が乾いたりしないかということだ。しかし、これまでも社員が豊かな心で仕事ができるよう、様々な工夫をしてきた同社のこと。また新しい「豊かさ」を生み出していくに違いない。


ITコーディネータ紹介

  ITCインストラクターとして、ITコーディネータの育成にも努める川端氏は、大阪の企業を中心に各地でコンサルティング活動を行っているITコーディネータ。改革においては、担当社員の参加を促し、主役となる従業員の意欲をうまくシステムへ昇華させている。
 株式会社武田の依頼内容は「ベンダーから上がった提案書の評価軸を教えてほしい」というものだったが、評価できるITとは経営課題を解決するはずでだという方針のもと、現状認識と経営課題の把握からスタートすることを提案した。

ITC-Labo
川端 一輝 氏
URL:http://www.itc-labo.com


<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>

「わが社のために働いてくれるシステムが見出せた」

 IT化の必要に迫られ情報収集を行ってきたものの、自社にはどんなシステムが最適なのかが見えてこなかった。ベンダーに直接相談すると特定の製品・方式を勧められがちなので、中立な立場で我々が実現したいシステムを後押ししてくれるITコーディネータは、まさに求めていたコンサルタントだった。
 選定基準を明確にして最適なベンダーを選び出せたことに加え、経営分析やRFP作成の過程で社員が「武田の構想」を共有できたことも大きな効果だと思う。
 今回選定したベンダーはITコーディネータがプロジェクトを推進しているそうなので、システムの仕上りに期待している。
(武田 経営陣の談)



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