インターネットの戦略的活用で 顧客との新しい接点を開く
顧客が要請するインターネット対応 一般消費者向けのビジネスをしている企業にとって、顧客の変化は決して見逃してはいけない要素だ。「インターネットを活用することを探求しなければ」――不動産業を営む神奈川県横浜市フロンティアハウスの佐藤勝彦社長がこう考えたのも、顧客の動きが変わってきたからだ。 賃貸物件を探す顧客といえば、住みたい町の駅に行き、駅前の不動産を訪ねるのが一般的。しかし、最近、特に若年層は「インターネットで条件を入れて検索し、物件を絞ってから不動産店舗を訪れる」(佐藤社長)ようになってきた。首都圏の賃貸物件は7割が単身者向けワンルーム、そして毎年何十万人という若者が引っ越してくる事情を踏まえれば、こうした「ネット族」への対応は不可欠なのである。大手の不動産情報サイトに登録はしているものの、もっと戦略的にインターネットを活用するべきではないか? と考えた。 ITコーディネータが提案した小規模企業のネットワーク活用とは? 解決策を求めた佐藤社長は、ITコーディネータの活用でネット販売に成功した横浜市伊勢佐木町の時計店の話を聞き、ITCに関心を持つ。そこで経済産業省が推進するITSSP事業の参加を入口に、ITコーディネータの助言を受けながらネットワークの活用を進めていくことにした。 担当ITCの小杉史郎氏は、定期的なITの勉強会を実施しIT活用のスキルをアップしていく一方で、ホームページの立ち上げ、その前段階としてインターネット環境の整備を提案する。 同社はすでにインターネット接続は行っていたものの、特定のパソコンをISDN回線につないでいたため、速度が遅くトラブルも多かった。そこで社内のパソコンをLANで接続し、インターネット接続には光ファイバーを導入。どのパソコンからも高速にインターネット接続ができるようにした。 同時に、代表用1つしかなかったメールアドレスを社員ごとに所有。サーバーの自社運用は負担になるので、NTTコミュニケーションズのホスティングサービス「メール&ウェブ」を使って、アウトソーシングした。 不動産業では、登記簿謄本や路線価評価などを調べる機会が多い。こうした情報はインターネットでも公開されているため、常時接続が実現してからは、社内のパソコンから簡単に調べられるようになったそうだ。またメールで顧客とコミュニケーションを取る機会も増えた。佐藤社長は「ネット環境を整えたことによる業務効率の改善は大きい」とその効果を実感している。 成約は増加基調、でも大事なのはその先 ホームページに関しては、まず三つの用途からスタートした。 一つ目は会社紹介。二つ目は物件オーナーへの実績紹介。三つ目は自社物件賃貸の詳細情報である。 一般賃貸物件の情報が優先されていないのは不思議な気もするが、これは、不動産業の場合、利用者はまず大手の不動産ポータルサイトに行き、そこから各会社の紹介にやってくるケースが多いという特性によるものだ。細かい物件を一つずつアップする手間を考えると、目的を絞った方が効率的だからだ。 ホームページ開設後は検索エンジンのページを経由して訪問する顧客も増えており、成約数も増加傾向にある。佐藤社長によると、「必ずしもネットで成約しなくとも、これをきっかけに人間関係を構築できれば、次の物件をご紹介できる可能性も広がる」と、ホームページは顧客との新しい出会いの場と位置付けている。 顧客の特性を鑑みたネット活用は順調な動きを見せているが、一方で、ネット社会への危惧もある。佐藤社長は「対面や電話のように五感を駆使できないのはさびしい。メールのドライさは、日本の将来を考えると少々心配もあります」と言う。 ネットの気軽さを人と人とのホットなつながりにどう結びつけるか。これはフロンティアハウス一社の課題ではなく、多くの企業が抱える共通の課題でもある。
<ITコーディネータを活用してどうでしたか?> IT投資は必要ですが、一気に導入するのは金銭的に負担が増すので、ステップを踏んだIT化計画を立てていただきました。インターネットの有効活用と同時に業務でのソフトウェア活用も進め、営業結果などの数値把握がかなりスピーディになりました。 小杉さんはわからないことを電話で問い合せてもすぐ返事をくださるなど、大変丁寧に指導していただいています。さらに目に見える成果を出せるよう、我々も努力していと思っています。 (佐藤勝彦社長 談) |
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