業務改革事例

改革3年で売り上げ10億増 現場担当者が成長を牽引



栃井建設工業株式会社
代表取締役社長 栃井 清 氏(写真左)
  常務取締役 渡邊 浩 氏(写真右)
所在地 岐阜県岐阜市富沢町36-9
設立 昭和37年
従業員 25名
URL http://www.totii.co.jp/
事業内容 住宅建設、リフォーム、ハウスメーカーからの受注のほか、オリジナル住宅建設、不動産取引、建築設計などを行う。テレビCMや新聞折込チラシなど販促・宣伝にも工夫をしており、特に「建築のプロの目からみた情報発信」ツールである「かわら版」は好評。


ISO9001取得への取り組み契機に売上が上昇

 14億円(平成12年度)→17.7億円→22.7億円→24.3億円(平成15年度)。平成13年度に経営強化5ヵ年計画を立て「5年後に売上20億円」を目指した栃井建設工業は、早くも目標額をクリアし、その額は右肩上がりだ。
 栃井建設工業(岐阜県岐阜市)の中核事業は住宅建築。ハウスメーカーからの受注が多いものの、最近は独自商品として無垢材を使用したDM外断熱構法の住宅建築や近隣地域を対象としたリフォーム業も手がけている。
 地域に根を下ろす社員25人ほどの工務店。同社が大きく飛躍している理由はどこにあるのだろうか。
 話は5年ほど前にさかのぼる。
 ――「中小企業でも経営方針書を作って計画的に経営をしなければ」。 社外の研修会やセミナーに積極的に足を運んでいた栃井清社長は、さまざまな刺激を受ける中でISO9001(品質マネジメント)の取得およびこれを契機とした経営計画の立案を構想する。

主役は社員。人材育成を優先に

  特徴の一つが社員全員参加の会議だ。そこでは一人ひとりが会社の競争環境や今後の戦略を考え、個人目標や部門目標を立案する。それらは文書として残され、全員で共有――分厚いファイルには、技能向上目標や建設業の環境分析、今後の市場予測など、個々の社員の自立的な思考の跡が記されていた。ここまで考え記述できる力を全員が持っているのには驚きを覚える。
 長期ビジョンと目の前の目標が明確化されたことで、社員の意識は高まっていく。
 その一方、資格取得の奨励、また「プラス思考」「コーチング」など能力開発を目的としたセミナーに参加させるなど、人材育成にも意欲的に投資。「同業他社や同規模の会社に比べ優れていると思います。私も含め社員としても"やったぞ"という自信が持てるのではないでしょうか」とISO取得の品質マネジメント管理責任者であり、5ヵ年計画のプロジェクトリーダーでもある渡邊浩常務取締役は胸を張る。
 同社の経営方針は、第一に「人」を重視しているようだ。では栃井社長が人材育成に着眼したのはなぜなのか。
 「受注を増やす一番の方法は、施主さんに満足感と感動を得ていただくこと。お客様と接点を持つのは現場の担当者ですから、担当者の評価=会社の評価なのです」(栃井社長) 現場の評価が高ければ会社の信用が上がり必然的に受注も増えていく。したがって社員の能力開発は売上増の最重要項目と位置づけられたのであった。
 社長のねらいどおり、請負元であるハウスメーカーからの評価は最高ランク。年間を通しての受注量が増えてきた。

ITコーディネータの支援で、取り組みを「見える化」

  しかし、この取り組みは当初からスムーズに進んだわけではなかった。 初めはトップダウンで経営方針書を徹底させようと試みたが、社員側に「やらされ感」が出て効果はいまひとつ。
 ISO取得の指導でコンサルティングを受けていた社団法人中部産業連盟(中産連)のITコーディネータ・本多貴治氏のアドバイスもあり、翌年以降は社員自らが考え参加する現在の方式に切り替えた。栃井社長の考えが社員各自に見える形になるように、本多氏は「栃井社長の思いを聞き取り、言語に置き換えてストーリー化」。その上で個人の役割や評価基準を明確な形に「見える化」したのだった。
 組織風土や人づくりの動きと並行して、ハウスメーカーからの請負事業にとどまらず直接個人ユーザーを対象にすべく、オリジナルの「オール無垢の家」の提案販売も展開。展示場でのアピール効果も上がりこちらの契約も伸びてきた。
 経営方針の明確化と社員の意欲向上、そして新規商品の開発―これが売上急上昇の要因となったのである。

顧客への図面提供にCAD活用も

  本多氏のアドバイスを受け、同社はIT活用にも積極的に動き出す。パソコンは一人1台導入し、実行予算管理データ及び工程表・施工図などを共有。また、お客様に提供する図面及び見積作成用にCADも活用中だ。
 栃井社長は「パソコンよりアナログのほうが使いやすいと思っていたが、使い出してみるとやっぱりパソコンには勝てない」と笑みを見せる。きれいな図面を提供できるうえ、保存、変更、修正が容易だから、顧客にも喜ばれているという。
 住宅という各家庭のプライバシーを扱っていることもあり、平成17年度は個人情報保護法対策も兼ねて顧客データベース構築など情報管理に力を入れていきたいとのことだ。
 ITのさらなる活用が進めば、売上上昇とともに利益率の向上も期待できそうだ。


ITコーディネータ紹介

 中産連の主任コンサルタントを勤める。
 ISO 取得のためのコンサルタントとして平成11年から栃井建設工業を支援。その後も継続してアドバイスを行い人材育成やIT 活用も含め業務改善を推進している。バランススコアカードを利用しながら戦略を行動に結びつけ、栃井社長の意向を具体化した。
 同社との契約は1年単位。契約更新時には「次年度は栃井建設工業にどんな支援をするか」を具体的に提案し、目標を共有したうえでコンサルティングを行っている。

社団法人中部産業連盟  http://www.chusanren.or.jp/

本多 貴治 氏



<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>

  当初、ISO に取り組むためにコンサルティングをお願いしたときは、何もわからずついていった状態でしたが、弊社に即した方法で無駄なくやってくださいました。杓子定規でなく、状況に合わせてアドバイスしてくださるので机上の空論に陥らない。トラックに乗って現場担当者に付いて回るなど、弊社の業務を理解することに尽力してくださいました。
(栃井清代表取締役社長、渡邊浩常務取締役談)



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