業務改革事例

顧客データ活用に挑む 新潟県三条市 製造・販売業 スノーピークの場合
顧客の声は製品作りの原点 データで商品開発力を刺激する!




株式会社スノーピーク
所在地 新潟県三条市三貫958
代表取締役社長 山井 太
創業 昭和33年
従業員数 49名
URL http://www.snowpeak.co.jp/
事業内容 アウトドア用品、フィッシング用品の製造・販売。ハイエンド市場をターゲットとする。全国に直営店舗を持ち、ダイレクト販売も行っている。
    スノーピーク 管理部 マネージャー 
平野和治

日々集まる情報を横断的に見られないか
新潟発の全国区――アウトドアおよびフィッシング用品を製造・販売するスノーピークは、ハイエンドユーザーの心をつかむ高い商品力が強みだ。「自らもユーザーという立場で考える」姿勢を創業以来貫き、他社に先駆けて先進的な取り組みを行う社風を持つ。顧客と共にキャンプを行うなど全国に出向き、その声に耳を傾けている。
スノーピークの山井太社長は地域の経営者交流会等に積極的に参加し、ITを活用した経営改革への意識も高い。
3年ほど前、ちょうど従来のオフコンシステムがリプレース時期を迎える。「ユーザーの声に応え続けるには社内の意識も変えていかねばならない」と、この機会に抜本的なシステムの見直しおよび社内改革を決意した。
新システムでは生産や販売の情報を一元管理できるようERPの導入を検討。加えて、顧客の声をデータとして蓄積する「ナレッジシステム」を企画した。システム担当者である同社管理部システム課マネージャーの平野和治氏は、その背景を次のように説明する。
「普段、会社に届くお客様の声は、電話、メール、営業担当者からなどいくつか経路があり、対応する部署も違う。これを横断的に把握して次の商品に活かせないかと考えた」
商品に対する評価、クレーム、感想、ちょっとした発言も含め、あらゆる顧客の声をデータベース化して、社員が自在に活用できるようにしようというものだ。顧客の視点を大切にする同社らしい着眼点である。
ただ、ERPとナレッジシステムの導入となればかなり大掛かりなIT化だ。「従業員それぞれがこれまでの業務のやり方を全否定し、あるべき姿を考えていかなくてはならない」(平野氏)。しかし、それを社内だけで推進しきれるだろうか...。。

改革実行に必要な第三者の力 ITC活用へ

平野氏は改革を実行する過程には、客観的な目を持つ第三者の力が必要と判断した。地域で情報化コンサルティング事業を展開するITスクエアにシステム化のコンサルティングを依頼。同社のITコーディネータ青木龍雄氏が情報化企画の整理やITベンダーへのシステム構築依頼書の作成などを担当した。
こうした確実な体制づくりと地元ITベンダーの奮闘が相まって、平成16年春には新システムが完成。
同社では、いかに有益な情報があっても素早くアクセスできなければ活用されないと考え、必要な社内情報にアクセスするための窓口(EIP‥企業ポータル)を設けた。機能ごとにソフトを立ち上げなくとも、すべて同じ画面から使える。

商品ごとの課題が見え、従業員の意識高まる

この工夫や、山井社長が従業員の日報に頻繁にコメントを返すなどの効果もあり、日々、たくさんの顧客の声が蓄積されるようになった。
「ケースがついていたら良い」「ここが変わったらもっと使いやすい」といった営業担当者が耳にした顧客の感想も、メールや電話のデータと合わせて一つのデータベースに蓄積される。このデータは商品別でも情報の入手場所(メール、イベント会場など)の切り口でも見ることができ、今まで気づかなかった商品の改良点を見つけることにも役立っているそうだ。
クレームも、もちろん全社員の目に留まる。「これまで品質は商品管理部門が見るものという意識があったが、全員が良いものを作って良いサービスをしていこうと日々考えられるようになった」と平野氏はシステム活用後の変化を説明する。
しかしスノーピークでは、顧客の声を聞き意見を製品に反映させればそれで良しとしているわけではない。平野氏が「ニーズはお客様が出すのではなくわれわれが掘り起こすもの」と指摘するように、ナレッジシステムは新商品の開発における作り手のインスピレーションを刺激し、仮説・立案を行うための道具と位置づけられている。
顧客は、自分が「欲しい」と意識している商品だけでなく「それなら欲しい」と言いたくなる商品提案を待っている。データはそうした企画力をさらに磨くためにあるのだ。


ITコーディネータ紹介
株式会社ITスクエア
ITスクエア 取締役
和泉寿郎 氏(左)
システムコンサルタント
青木龍雄 氏(右)
http://www.itsquare.co.jp/
地域企業を対象に情報化のコンサルティングを推進する企業に勤務。財団法人にいがた産業創造機構の専門家派遣制度を入口に、同社の情報化を支援している。従業員50名ほどの企業がERPを導入するのは県内でも珍しいケース。山井社長の方針を理解し、平野氏が描くシステムイメージを具体的な形に落とし、ITベンダーに対するシステム構築依頼書の作成を行った。また、スノーピークのプロジェクトチームに対し公平な目でアドバイスをするなど、社内調整的な面にも力を注いだ。


BACK

トップへ

このページのトップへ