業務改革事例

高齢者が安心して地域で暮らすために徹底した教育で信頼勝ち取る
山口県周南市 電気通信サービス業 周南マリコム
(平成18年度IT経営百選最優秀賞受賞)




周南マリコム株式会社
所在地 山口県周南市入船町2-3 MARICOMビル  
創業 平成元年
従業員 52名
事業内容 緊急通報・生活サポートシステム『さすがの早助(サスケ)』の運営(90%が自治体)、国際港湾無線局『徳山・下松湾ポートラジオ局』の運営(業務受託)、電気通信事業及び管理業務(工事)など
URL http://www.maricom.co.jp/
     
    「今日はどうしましたか」「練習のためにボタンを押してみてください」オペレーターのゆったりと優しい声がフロアに響く。パソコンの画面には電話相手である高齢者の名前や生活状況、通院先や過去のコンタクト履歴などが表示されている。
山口県周南市・周南マリコムの4Fにあるコールセンターだ。
登録者は山口県を中心に27市町村9000世帯に及んでいる(サービスの契約は自治体が結ぶことが多い)。
    代表取締役社長
堀 信明 氏
システム事業部
有馬秀和 氏
   
    センター責任者の防川初美氏 サスケシステムの中核、
オペレーションセンター


仕組みはIT売りはオペレーター

 同社が提供するサービス「さすがの早助(以下文中サスケ)」は電話回線を利用した緊急通報・生活サポートサービス。
 契約者の家庭に緊急通報ボタンを置き、ボタンを押すと社内で待機しているオペレーターにつながるというものだ。
 相手の状況によりタクシー・救急車の手配や近親者への連絡なども代行する。
 特徴的なのは、急病などの緊急時でなくとも24時間365日オペレーターと話ができること。
 「夜遅くなって急に誰かと話したいという場合でももちろん対応いたします。
 逆に私どもから定期的に電話をかけ、機器に慣れていただくようにもしています」
 センターの責任者防川初美氏は、サスケの仕組みをこう説明する。サスケでは、加入時に看護師が1件1件聞き取り調査に出向くなど、人的な対応を重視しており、そこが好評を博する理由となっている。
 同社のオペレーターには、新しい形態で地域の役に立つ仕事に生きがいを感じる看護師や保健師、介護福祉士なども在籍し、意欲的で多様な人材がそのまま強みとなっている。
 しかし、同社は従業員50名ほどの企業。きめ細かいサービスの質を保てる理由は何なのか。
 「電話のやり取りではオペレーターの能力が問われます。したがって新人には3ヶ月、の後も毎月の研修を実施してレベルアップを図り、傾聴できるオペレーターを育てています」
周南マリコムの堀信明社長は、本事業の中核は「教育研修」だという。お年寄りを「助けてあげる」のではなく、それぞれの人生に敬意を払い傾聴することがその本質だ。
 スキルが高ければ顧客から喜ばれる。それが従業員の自信とやりがいアップにもつながる。
 こうした好循環が生まれているのだろう。


入退出を映像で記録個人情報保護法を徹底

 一方で、これだけの個人情報を扱うとなると、セキュリティ、特に保有する情報の管理が欠かせない。周南マリコムでは、この点を徹底している。
 システム事業部の有馬秀和氏は、「プライバシーマークを取得して適切な運用管理に努めています。
 まずは外部からの不正アクセス、次に内部からの情報漏えいに気を使います」と説明する。
 システム上では、データをクライアントパソコンから取り出せないようにしているほか、フロア入口にカメラを設置し入退出者を画像で記録したり、サーバールームへの入室可能者を制限(ICカードで管理)するなどである。
 最近では、新規事業として、離れて暮らす家族などが高齢な両親の生活状況を静かに見守れる新しいシステムを考案。
 家電製品の利用状況を毎日レポートして家族の携帯電話やパソコンで見られるように連絡するという「生活見守りサービス」である。
 本システムは携帯電話の無線ネットワークを使って情報を収集、そしてサーバーから自動的に情報を配信する仕組みであり、各種技術やITの力が取り入れられた商品だ。
 豊かな発想をベースに技術とITと人を適材適所に活用-それが周南マリコムの強さである。


チーム制で仕事をシェア、ITで情報共有

 ただ現実には、子どもの病気などで出勤の安定度は低くならざるを得ない。
 そのため光畑社長は、仕事はチーム制でシェアし、情報共有を重視。
 社員のスケジュール管理、社員同士の連絡にはメーリングリストを利用するなど、ITを積極的に活用している。
 「こうあらねばならない」という社会通念にとらわれず、現実や実感に誠実に発想することで、より良い方向が浮かび上がってきた。
 知らず知らずのうちに「会社とは、経営とはこうでなければいけない」と思い込みがちだが、経営者の感性がその突破口にもなるのだ。


ITコーディネータ紹介

 山口県を中心に、Webシステムの構築やコンサルティング事業を展開。ITコーディネータやまぐち協同組合では、IT経営応援隊の経営者研修会をはじめ、地域企業の戦略的IT 活用推進に関わる取り組みを進めている。
 周南マリコムの堀社長とは10年にわたり交流を深めており、経営者研修会に参加してもらったこともあるそうだ。
 堀社長は「様々な事柄についてアドバイスをいただいている。IT経営百選に応募し入選できたのも谷口さんのおかげ」と言う。
 谷口氏は、周南マリコムの今後について、「地元から事業を広げてきたこと、社員をきちんと教育し自社で設備を所有していることは大きな強み。今後は堀社長のパワーで牽引してきた会社から、社員の力を出し合いさらに大きな事業展開のできる会社に成長してほしい」と期待をかける。

ITコーディネータやまぐち協同組合
http://www.siy.co.jp/itc/

ITコーディネータ

谷口 修 氏
ITコーディネータ
やまぐち協同組合



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