支援制度活用事例

経営分析からIT化へ
~ 自社の現状を分析し新経営戦略が見えてきた! ~



八戸塗料販売株式会社
本社 青森県八戸市大字長苗代字前田54
創業 昭和49年
従業員数 12名
URL http://www.miesc.or.jp/
事業内容 船舶を中心に、八戸市の豊かな産業、また近隣地域の火力・原子力発電、米軍基地など各種産業用塗料の卸売りを行う。岩手県久慈市に営業所を設置。同業者の上位5位がすべて八戸に拠点を持っている。
 

地場産業の構造変化がもたらした事業の転機

 青森県八戸市で塗料の流通業を営む八戸塗料販売(以下、八戸塗料)は、昭和60年代に入り事業の転機に直面した。原因となったのは二百海里問題や日本人の食生活の変化。食生活の変化と塗料がいったいどう結びつくのか、ピンとこない組み合せだが、これは八戸が東京湾以北最大の漁港であることに起因している。
 創業から10年あまり、同社は船舶用の塗料を主力商品として扱ってきた。漁獲量が下がり入港する船の数が減れば、塗料の売上も伸び悩むという構図なのだ。塗料販売ビジネスはそれだけ納品先企業の業界構造や景気と関係性が深いとも言える。
 2代目経営者の西川禎常務は、県北や岩手県北部へと商圏を拡大する一方、船舶から建設、工業、その他の地域独自産業に取引先のシフトを図ってきた。価格以外のメリットを打ち出すべく模索を続けていたとき、ITSSPの経営者研修会と出会う。「ITって名がつくと経営者は引いてしまうものです。私も当初はパソコン操作を習うのかと思っていました。実際は経営分析やマーケティングの視点を学べ、また会社の弱点が見えてきた」ITSSPは経済産業省が推進する戦略的情報化の支援プログラム。八戸商工会議所の青年部から誘いを受け、西川常務が3日間にわたる経営者研修会に参加したのは2003年9月のことだった。

ITSSPの個別コンサルティングで改革ステップを明確化

 13社の企業経営者が参加した研修会を終えるころには、自社の課題と経営戦略が明確になってきていた。「ここまでやってきたのだから具体的な形にしたい」と、翌年1、2月に実施されたITSSP「計画書策定コンサルティング」へも参加の手を挙げる。ITコーディネータである佐藤賢一氏と中田哲男氏に、5回にわたる個別コンサルティングを受けることとなった。
 この間の取り組みを、ITC佐藤氏は「バランス・スコアカードを利用して業績評価を試み、会社の実情を踏まえた戦略を立案しました。経営改革すべきものと情報化すべきものに分け、情報化では既存の資産を活かすよう留意しました」と説明する。実情に合わせ、ステップを踏んで具現化する取り組みであった。

お金をかけずに情報化 社員教育も視野に

 八戸塗料の改革テーマは五つのキーワードに整理、まずは「在庫管理」「営業情報共有」の二つに重点的に取り組むことにした。在庫管理は作業の効率化と正しい数値の把握を目指し、既存の販売管理ソフトをフル活用。新たにPDAを用いたバーコード入力を導入しリアルタイムに在庫を把握できるよう計画している。効率化が進めば、捻出した時間を営業活動に当てることができる。IT化が遅れている塗料販売業界において、社内在庫管理にこうしたシステムを用いる例は少なく、先進的な取り組みとなった。さらにデータ分析ソフトの追加でデータを様々な角度で分析し、販売に役立てる予定だ。
 もう一つの「営業情報の共有」は、納品先企業の動きが販売業績に直結する同社においては営業面での重要課題だ。しかし、営業活動はどうしても個々の担当者に拠るところが多くなる。仕入れ価格が担当者によって変わったり、別々の担当者が同じ案件に異なる額の見積もりを出し、顧客に迷惑をかけることもあったという。
 そこで、「正確な現場情報のフィードバックのみならず、横の情報共有を目指す」という認識のもと、顧客情報や営業情報を一元管理するソフトウェアの導入も決定した。
 塗料の販売機会はいろいろなところに潜んでいる 。家の外壁を塗り替えたい消費者を探し塗装業者に紹介して同時に塗料を卸すなど、顧客紹介を伴うケースもあるという。西川常務は「価格以外の面でサービスが強化できるよう、アンテナを張って情報を共有していきたい」と話すが、各営業担当者からの生の情報が共有できれば、そのアイディアもさらに冴えることだろう。
 ただ、実際に必要な情報を本当にきちんと書いてくれるのだろうか、という不安もある。これについては、システム導入直前の2005年1月に、ITCが「会社が成長するために一人ひとりがすべきこと」や「情報共有を行う意義」といった事柄について個別の社員教育を行うそうだ。社員それぞれがその意義を自覚してこそ結果が出る――人材の育成まで視野に入れた本システムの稼働で、同社のさらならる販売力向上が期待される。なお、この取り組みは、中小企業経営革新支援法の認定を受け、補助金交付と融資が行われる予定である。

ITコーディネータ紹介

 東北地方のITC活動を牽引するITコーディネータの一人。
 ITSSPの経営者研修会では、仮想の「ビジネスホテル八戸」を教材にケース研修のプログラムを開発。参加13企業がすべてのプログラムを終了し、経営計画を立案することに成功した。
 八戸塗料販売のコンサルティングでは、過大な投資を防ぎ、既存のシステムを活かす方向でIT化を推進。投資総額が少なかったためIT活用型経営革新モデルへの応募はできなかったが(同事業には投資総額の下限が定められている)、経営革新支援法の承認を受けることに成功した。

株式会社IT経営コンサルティング
http://www.it-management.jp

佐藤 賢一氏



<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>

「我々にない視点でのアドバイスが有効だった」
 ITSSPの経営者研修会からITコーディネータの方と一緒に経営分析を進めてきましたが、社外の客観的な視点は大変役に立ちました。自社の立場や強み・弱みなどが言葉で把握できたのはとても大きな収穫です。思いを文書化することで、社員に経営方針を説明しやすくなりました。 (西川禎常務取締役 談)



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