金融機関がIT化需要を掘り起こし ITコーディネータとのマッチングへ
ITに興味はあるものの、具体的な行動となると的確な相談相手が見つからず足が止まってしまいがちだ。しかし、もし金融機関が背中を押してくれたらどうだろう? 愛知県名古屋市の中小企業金融公庫名古屋支店では、2004年春から、取引先経営者にITを活用した経営改革を積極的に呼びかけている。IT関連イベントや経営者研修会を案内し、ITコーディネータとのマッチングの機会を増やしているのだ。 金融機関からの「IT経営のススメ」は経営者の迷いを行動に変える触媒となった。 ITフェア、研修会に過去最高の参加者が 2004年6月に名古屋で開催された中小企業IT化推進フェア。その講演会場には450名もの参加者が集まった。IT系のイベントでは全国でも珍しい来場者数だ。会場では名古屋ソフトウェアセンター内のITコーディネータ組織「NSC―ITCC」のメンバーが講演や個別相談会を実施、相談会に参加した10企業のうちの3社が具体的なコンサルティング契約に至った。現在、情報化による経営改革に取り組み中だという。 また、その後に同組織のメンバーが実施したITSSP事業の経営者研修会(本年度からはIT経営応援隊の経営者研修会)には、定員の20名を上回る参加希望者があった。いずれも「IT投資に対する意識の高い経営者の方々に来ていただいた」とNSC―ITCC事務局長の江坂昭氏は言う。 確かに、人数だけ多くても興味の薄い人ばかりでは、マッチングもうまくいかない。意欲ある経営者が足を運んだ背景には、中小企業金融公庫名古屋支店の働きかけがあった。しかし、IT経営への潜在ニーズをどうやってキャッチできたのだろうか。 企業との信頼関係がIT化支援に結びつく 大野晴久支店長の言葉の中にその秘密があった。 「私どもでは担当者それぞれが70から100社の企業を受け持ち、頻繁に訪問して経営者の方とざっくばらんにお話をさせていただいております。意思疎通による信頼関係が、お取引のベースにあります」 フェイス・トゥー・フェイスのコミュニケーションを重ね、取引先と深く知り合う中で、ITに対する興味を引き出し、参加意欲を高めたのだ。企業を訪問する担当者には説明会を実施し、IT経営やITコーディネータについての理解を深めたという。 また、ITフェアの案内にあたっては、定期的に実施しているアンケートにITに関する質問項目を設けIT活用に関心を持つ企業を事前に把握するなど、準備も念入りに行った。 「お客様の悩み事を伺って、分野ごとに解決の入口にお連れするのも私どもの仕事だと考えています。その先は専門家にバトンタッチ。ITの課題であれば、ITコーディネータへとなるわけです」 同支店の野田祐司融資総括副長は融資先企業への「人」や「情報」の紹介も金融機関の役目だと言う。 融資先企業のメリットを追求した結果のITコーディネータとのマッチング。つまり、それだけITコーディネータへの期待も高いということだ。 これらの出会いを生かして数件の企業と顧問契約を結んでいるITコーディネータの水口和美氏は、1年を振り返り「経営者研修会では経営者やCIO、経営幹部の方がグループになり、具体的に討議を進めていますが、他社や別のポジションの方の意見を聞くことでさまざまな「気づき」が生まれます。今後は、機会をさらに増やすとともに、きちんと成果を出していくのが我々の使命です」と力強く語った。 企業、金融機関、ITコーディネータそれぞれに利益がもたらされるWIN―WINのモデルが、ここ名古屋では生まれつつある。
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