支援制度活用事例

顧客データ活用に挑む  お客様は今、何を注文した?レジを変えたら店舗が見えてきた
兵庫県高砂市 飲食業 入船の場合




株式会社 入船
所在地 兵庫県高砂市高砂町横町1033
創業 大正5年
資本金 1,000万円
代表 代表取締役 入江祥浩
事業内容 一般給食、委託給食、仕出し、レストラン(わっさ、ごちそう村、炭火焼肉いこる家など17店舗)
URL http://www.irifunet.com/
      入船 レストラン事業部 企画課長
      安木 一正 氏
    店舗風景
↑レジ風景。 このデータはインターネットを経由してサーバーに蓄積。適宜、本社のパソコンから店内の状況をリアルタイムに確認できる。 ↑オーダーはPDAに入力。 メニューを選ぶだけなので、スタッフは難なく使いこなしている。店内の通信は無線LANを利用。社内では入力した情報を時間単位やメニュー単位で分析して活用中。


店舗の販促効果、どうすればわかる?

神戸・元町駅前にある炭焼居酒屋「わっさ」は、手作り料理と落ち着いた照明や堀炬燵式の和風座席が、訪れた人をゆったりとした気持ちにさせる店だ。
店舗内では、「ちょっと意外」なものを目にすることができる。
お酒や料理を注文する。そのときスタッフが手にしているのは紙の伝票ではなく、携帯情報端末・PDAだ。タッチペンを動かして手馴れた操作で注文を取っていく。そして料理と空間を楽しみ会計に向かうと、レジにはなぜかパソコンが置いてある...。
同店を運営する入船(兵庫県高砂市)は兵庫県内に17の直営店舗を展開。「食の喜びの創造」を経営理念とし、多様な顧客ニーズに対応した店舗作りを行っている。
飲食店には来店を促す販売促進が欠かせない。同社ではレストラン事業部企画課長の安木一正氏が責任者となり、クーポン券をつけたチラシや雑誌広告など様々な宣伝活動を実行。その過程で、安木氏は「販促してもデータがすぐ取れず翌日でないと結果がわからない。しかも手計算で、正確性にも疑問がある。何とかならないか...」と考えていた。

中小企業支援センターを入口に、ITCの地域コミュニティと出会う

安木氏は財団法人ひょうご産業活性化センターの専門家派遣制度を利用し、ITコーディネータ(ITC)のアドバイスを受ける。そこでは、自社の方針に則ったPOSシステム作りがポイントとされた。
安木氏は、アドバイスを受けたITCが所属する地域コミュニティ「まいど! フォーラム」のメンバーと交流を深めつつ、具体的なシステムを探し始める。しかし価格も含めて今のレジメーカーには希望に沿うものがない。そんなときに、同フォーラムのメンバーであるITC永田祥造氏から、自身が経営するシステム会社「エムトーン」が提供するASPサービスの無料試用の提案を受けた。
本サービスはパソコンにレジ機能を持たせ、入力した情報をインターネットを経由してエムトーンが運営するサーバー上に保管し、活用するというものだ。店舗側はパソコンとインターネット設備があれば始められ、また必要に応じたカスタマイズができる。

ASPを試して効果を実感 そしてさらに詳細データを

試験的に利用した結果「パソコンならではのカスタマイズのしやすさ」を実感。初期費用は格段に安いし操作性も問題なかった。そこで安木氏は考える。
「これならもっと詳細なデータも取れるのではないか。新メニューの滑り出しはどうか、単品別オーダーランキングはどうか、チラシを見て来店した方は何組か...」
入船は、2005年春より、同フォーラムのITC太田垣博嗣氏、中川普巳重氏らの協力を得て本格的なカスタマイズに取り掛かった。
この時点でシステムの焦点は、POSを超え始める。POSは精算時、つまり顧客が帰ったあとのデータだ。それ以前、顧客が入店してから帰るまでの90分のリアルな情報を取りたい。そこで、スタッフが注文時にオーダー情報をPDAに入力して、その情報を活用する「POO(Point Of Order)システム」が企画された。
「店舗ごとの来店者数やオーダー内容が本社で瞬時に把握でき、対応策が取れる。また、得られたデータは、最適な座席配置など店舗経営にも活かせる」とITC太田垣氏は説明する。
販売管理を超えて、店舗内の顧客の動向をリアルタイムに伝えるシステムへ。こうした進化は、「システムを試しながら使う」というステップがあってこそ生まれたものだ。安木氏は、「店舗運営担当部門がデータを元に時間帯でスタッフのシフトを変えたり、商品企画のチェックが細かくなったりしている」と社内の変化を説明する。現在では、混雑している店舗がすぐわかるので、本部からヘルプに入るのもスムーズになった。
今後は、スタッフが持つPDA端末を使った顧客サービスの充実を考えていきたいとのことである。。


サポーター紹介 ITコーディネータ

ITコーディネータ(ITC)の有志による勉強会を発端として形成された組織「まいど! フォーラム」のメンバー。同フォーラムでは、ITコーディネータの基本手法「プロセスガイドライン」を活かしつつも、中小規模企業のIT化においては、体感からスタートし仮説→検証サイクルを積み重ねる「検証ユニット」が有効と考え、実証研究を進めている。
今回の入船の事例では、安木氏の課題意識をフォーラムのメンバーそれぞれがポジションを活かしてサポートした。大きな役割分担でいうと、公的な支援制度の紹介やサポートが中川氏、POOシステム導入に関わるコンサルティングが太田垣氏、本システムのITベンダーが永田氏である。
太田垣氏がユーザー側のITC、永田氏がITベンダーの立場として仕事をする場面では、公平性が失われないよう配慮。「どのITCやITベンダーにするかはすべて入船さんに選択していただいた。また、打合せで太田垣氏と永田氏が同席することはなく、入船さんが自由に意見を言えるようにしていた」(中川氏)とのことだ。

まいど! フォー ラム 代表
太田垣博嗣 氏
http://www.ekimae-it.com/

京都リサーチーパーク
EBSセンター 所長
中川普巳重 氏
http://www.krp.co.jp/ebs/

エムトーン  代 表取締役
永田祥造 氏
http://www.m-tone.co.jp/
     


<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>
ベンダーを含めた3名のITCが地域コミュニティを形成しながら、具体的なIT活用を支援。企業とITCが対峙するというより、納得を得ながら背中を押すという進め方だ。
安木氏は「ITコーディネータの方にいろいろ励ましていただき良いアドバイスをもらっている。またASPで0円からスタートする方法などは自分だけでは到達できなかった」とその成果を語っている。

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