支援制度活用事例

最優秀賞連続受賞企業の止まらない進化
煎餅のトレーサビリティで顧客に安心・安全を提供




三州製菓株式会社
所在地 埼玉県春日部市豊野町2-8-3
創業 昭和25年
従業員 225名(正社員42名)
代表 代表取締役社長 斉之平伸一
事業内容 高級米菓の製造販売。商品別売上は、せんべい5 0%、あられ3 0%、洋菓子その他20%。卸売を通さず、地域有名菓子販売店をはじめ有力取引先と直接取引を実行。OEM商品も取り扱い、高い評価を得ている。
年商 28億円
URL http://www.sanshu.com/
     
↑左から総務部ゼネラルマネージャー宮下隆信氏、廣瀬菜穂子氏、藤本恵美子氏
斉之平伸一社長


業界に先んじてトレーサビリティを


IT経営百選・最優秀賞を連続受賞した三州製菓は、新潟県に続く米菓生産県・埼玉県においてトップシェアを誇る米菓製造企業。
  卸売を介さず有力取引先に直納品するのが特徴だ。業界に先んじて生産管理システムを導入し、受注した商品は翌日出荷するというスピーディな受注生産体制を持つ。
  IT活用にも先進性を見せる同社は、2年ほど前からトレーサビリティシステムを企画。ITコーディネータ町田行雄氏のアドバイスを受けつつ、システムの構築を行っている。


ITコーディネータに求めたアドバイス

「お客様の安心・安全意識の高まりに応えるため、生産履歴をすぐに調べられるようにしたかった」
  本システムのリーダー役、総務部の宮下隆信氏は意図を説明する。
  一つの米菓に何か問題が生じたときに、どの材料が使われ、同じ材料で製造したものがどこに流通しているかを把握できるようにしようというものだ。データがわかれば取引先への回答もスピーディに行える。
  しかし、以前から記録はつけていたというものの米菓の材料は、醤油、塩など、形が一定でないものが多数ある。どういった区分で管理していくのだろうか。
  三州製菓が考案したシステムは、原材料を製造時の投入ロット単位で管理し、どれか一つ原材料のロットが変わる単位で異なる識別番号を付与していくというものだ。例えば、米A、醤油A塩Aで製造ラインが動いており途中から米がBになると(米B醤油A、塩A)識別番号が変わる次に醤油がBになるとまた変えるといった具合だ。
  したがってシステム上では、原材料が入庫した時点でデータを入力し2次元バーコードを発行、これを原材料に貼り付ける。そして製造指示書には商品ごとに投入する材料が指定される。製造現場では投入前に原材料のバーコードを読み取り、指定された原材料であることを確認するという流れだ。最後に、商品の識別番号と出荷先の対応関係を記録しておく。
  以上のプロセスをすべてデータ保存することで、問い合せへの迅速な回答や商品追跡を可能にするのである。

すぐに大手取引先から反応が

斉之平伸一社長は、「大手のお取引先からは、さらに安心して発注できると、すでにご評価をいただいております」と手ごたえを感じている。安心・安全への取り組みは、三州製菓の企業価値をさらに高めていくことだろう。


「なぜ、トレーサビリティなのか―三州製菓の経営理念と実践」
斉之平伸一社長に聞く


――社長に就任された20年ほど前、取引先の方向転換を図られたそうですね。
斉之平:9割は流通経由でスーパーなどへ納品していましたが、お客様のニーズがつかめないことやこの市場は大手企業が有利なことから、主要都市の和菓子一番店やテーマパークなどとの直接取引に切り替えました。ニッチマーケットでトップシェアを狙うのは中小企業が取る一番正しい戦略だと思っています。

写真・斉之平伸一社長
斉之平社長は『3倍「仕事脳」がアップするダブル手帳術 右脳手帳・左脳手帳』などの著書を持つ。
――独自性が強い分、他社の真似をすることによる省力化はできませんね。
斉之平:常に先頭に立とうという姿勢で製造ライン、教育体制、コンピューターシステムを方針に沿ったものに変えてきました。お客様の満足を創造する視点で見たときに「安全・安心」は重要テーマであり、今回のトレーサビリティシステムにつながりました。
――良いシステムであるのは間違いありませんが、これですぐ利益が上がる投資ではない。なぜ決行を?
斉之平:消費者ニーズがある以上、それは優先すべき事項です。私どもは経営理念として「安心・安全、クレームを無くすことで顧客満足度を向上する」ということが共有されています。この取り組みをお客様にご評価いただければ、長い目で見れば売上増につながると捉えています。
  製造業はとかくメーカー発想に陥りがちですが、弊社はあくまでも顧客視点で発想し、今後もその考え方を徹底していきます。

ITコーディネータ紹介

首都圏を中心にコンサルティング事業を展開。ITコーディネータを育成するITCインストラクターでもある。
  三州製菓のトレーサビリティシステム導入においては、毎月1回、IT委員会開催に合わせて訪問し(IT推進アドバイザー派遣制度を利用)、約1年にわたり業務分析やシステムベンダーへの提案依頼などを行った。
  本システムは原材料のロットが変わる単位で製造番号を付与していくという詳細情報を扱うシステムである。「時間をかければいくらでも細かくできるが、いかに短時間で必要な情報まで遡れるかの兼ね合いに留意した」と振り返る。

有限会社エム・エイ・コンサルティング
http://www.ma3.biz/


町田行雄 氏


<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>
パソコンに詳しい社員はいるものの、システムには素人なのでベンダーさんの言いなりになってしまう。高い見地からアドバイスをいただき過不足ないシステムを作りたいと思ったのがITコーディネータの方を派遣していただいた理由。中小企業ではITの専門家を社員としてなかなか採用できない。町田さんのような専門家に定期的に来ていただけるのは良い仕組みだと思う。
(斉之平社長談)

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