支援制度活用事例

Webの戦略的活用
三重県 津市 養豚・販売業 大西畜産
(平成18年度IT経営百選優秀賞受賞)




有限会社大西畜産
所在地 三重県津市久居明神町1252-4  
代表取締役社長
大西良和 氏

創業 平成14 年
従業員 9 名
事業内容 養豚業・食肉処理業・食肉販売業 ブランド名「頑固おやじのぶた」
URL http://www.gankooyazi.com/
http://www.rakuten.co.jp/gankooyazi/
     
    豚の左耳にトレース番号を記したタグがつけられている。
商品上のトレース番号を大西畜産のWebサイトで検索すると、 飼育環境や治療履歴などを調べることができる。



畜産業を製造業と捉え、経営改革を

「以前、豚肉価格が大幅に下がった時期があり、一生懸命作った肉が叩き売りされ、われわれは赤字。非常に悔しくて。これでは農業はいつまでたってもダメやと」
 三重県津市の大西畜産は年間3600頭の豚を出荷。大西良和社長は「畜産は製造業」と とらえ、コンピューターを使って豚の出産から出荷までを「生産管理」中。生産量の伸びも上々だ。
 しかし、農産物である豚は相場で取引される商品。丹精込めて作っても買い手の言い値で売るしかない。価格決定権を持つためには、自ら販売を手がけるのが近道だ。
 「お客様に頭を下げて売った経験がないわけですから、厳しいのはわかっていました。しかしあえて挑戦しよう、自分で値段をつけ、お客様の指示を仰ごうと思ったのです」
 生産と並行して小売販売(ミート事業)も行い農業経営の弱みを克服する――大西社長が大きな決断をしたのは平成15年の秋だった。


ITコーディネータとともに「安心・安全」の実現へ

直接消費者に販売するとなれば、スーパーなどで売られる通常商品との差別化が必要だ。大西畜産では品種やえさ、水の吟味と大西社長の研究の積み重ねで、野獣臭を抑え、脂身もおいしく食べられるさっぱり感のある肉を生産。「頑固おやじのぶた」というブランド名を付け、消費者に胸をはれるだけの「こだわり」があった。
 大西社長はこれに加え、消費者の安心・安全意識に応えられる生産情報の開示を企画。豚の品種や病歴など、飼育履歴を記録し顧客から閲覧できる仕組みを作るというものだ。「トレーサビリティ」に対応できれば、ブランドイメージも固められる。
 小売への進出とトレーサビリティ。二つの取り組みを具体化するにあたっては知人の紹介でITコーディネータの資格を持つ小柴光司氏をサポーター役に迎え、Webサイト制作やシステムの構築を進めた。また、同社の活動は三重県の「平成16年度 食の安心リーディングビジネス創出事業」で優秀賞を獲得し、補助金が支給されることとなった。


低コストのトレーサビリティ 直販は売上の10%に

直接販売については、加工方法や値決めなどを試行錯誤しながら学びつつ、近隣地区への移動販売とWebサイトショッピングモール「楽天」によるネット販売をスタート。Webサイトでは週2回、曜日を決めて顧客からのオーダーを受けている。小柴氏は、大西畜産の強みを引き出してWeb上で積極的にアピール。「頑固おやじ」のこだわりの内容をリアルに伝え、その価値を感じてもらうようにした。
 トレーサビリティについては、ICタグを使うような高度なシステムは費用もかかる。そこで、小柴氏の提案を元に豚の耳に個体番号を刻印し、病気や治療が発生した豚はデータベースに記録する方法を考案した。
 ただ、課題が一つあった。屠畜は社外で行うので、この段階で正しく番号を記録してもらえないとせっかくのデータも使えなくなってしまうのだ。
 屠畜場の担当者は、当初は難色を示したが、大西社長の懸命な依頼を受け、他県に先んじる先進的な取り組みに同意。現在は耳刻された個体番号が入れ換わることなく記録され、販売品のラベルに貼られるようになった。
 実際に小売販売を始めてから約2年半が過ぎ、直接販売は年間売り上げの約10%、1500万円を占めるようになった。Webでの売上はそのうちの1割ほどだ。大西社長は「食べ物の小売は非常に難しい。Webでの月間売上100万円を第一目標に、長い目で見て育てていきたい。正直に作り続けていけば支持が得られていくと思う」と長期計画を立てている。
 無理のないIT投資で課題の小売販売に踏みきれたことは、同社に自信と可能性をもたらした。


ITコーディネータ紹介

 現在は愛知県にオフィスを構え、三重県、愛知県の企業を中心にホームページ制作やシステム構築を行っている。
 大西畜産には財団法人三重県産業支援センターの専門家派遣制度を利用して、小売業展開のサポート、ホームページ制作およびトレーサビリティシステム構築を行った。
 ICタグを使ったトレーサビリティシステムなどは高額な費用がかかるため、目的を理解し、低予算ながら消費者の安心・安全要求に応えられるシステムを大西社長に提案した。
 「私がお手伝いしたのは社長が頭の中で考えられていることを引き出し、文書化して事業プランにし、形にすることでした」と振り返る。その結果が、三重県で認められ補助金交付にもつながった。

有限会社 シーエスプラス
http://www.csplus.jp/

有限会社
シーエスプラス
取締役社長
小柴光司  氏


<ITコーディネータを活用してどうでしたか?>
小柴さんは大変親切にやってくださり感謝しています。私は肉のことなら普段の延長でどんどん考えますが、システムとなると専門ではありませんので。トレーサビリティシステムでは、養豚の特殊性や費用などの実情に即した方法が見出せました。IT分野だけでなく、販売に関わる具体的な手法にもアドバイスをいただいています。(大西社長 談)

BACK

トップへ

このページのトップへ