合格体験記


横山商会 情報技術課
野崎 晴雄

「動かないコンピューター」という言葉があった。17年前にコンピュータプログラミングの世界へ足を踏み入れた私にとって、それが現実の姿だった。そしてもう一つの現実が「稼がないプログラム」である。私は事務処理用のプログラムを書くことが多かったため、私の顧客は殆どが経理担当者であり経営者であることはない。
<   コンピューターシステムを導入する目的は、一部業務の合理化(ほとんどが請求書発行)のみである。インタビューの初期段階では経営者も参加することもあるが、コンピューターシステムが戦略的に意味を持たない場合、次回からは担当者任せになってしまう。担当者は、自分の仕事の合理化ではなく、便利さの追及に夢中になり、完成したシステムは請求書自動発行機であることが多い。まさに「稼がないプログラム」である。あれから何本の「請求書発行システム」を作りつづけた事だろう? いつの頃からかコンピューターシステムの殆どは「金を稼がない」ものである、というのが私の中で常識化されてしまっていた。

 ITコーディネータの説明会に偶然にも参加することがあり「ITが分らない経営者、経営のわからないIT技術者」という言葉に大きなショックを受けた。「そうだったんだ。私のシステムが経営に役立たないのは、私自身が経営を知らないからなのだ」早速ケース研修受講を申し込んで再び驚いた。ナント宿題があるではないか。研修とは「与えられるもの」という感覚を持っていた。これが大きな間違いである。宿題をこなし、討論を重ね、取りまとめ、発表し、質疑を行なう。「参加」しなければ研修ではない。自分の頭がどんどん耕されて行く。グループの仲間、クラスの仲間達から常に刺激を受けながら、少しずつ変化して行く自分があった。
  私は、ITコーディネータ補の試験に2度挑戦した。今思えば1度目の挑戦は不合格でも当然だったかもしれない。試験勉強といえば一通りの復習と、通り一遍の問題集をこなしただけである。いわゆる知識を確認したにすぎない。その「不合格通知」が私のモチベーションを高めた。

 2度目の受験の前に、私は意欲的に読書した。プロジェクト関連、コミュニケーション関連、BSC(Balanced Scorecard)、TOC(Theory of Constraints)、CRM(Customer Relationship management)。勉強方法も変化させた。「研修さながら」に友人を相手に講義し、図解し、質問を受け、合意し、時には脱線までしながら、声に出し、歩き回り、目と耳と身体で勉強した。
  2度目の受験が終了した。知識レベルでは問題ないが、設問の殆どが(私の印象では80%)判断型である。実際にITCとして活動を始めると遭遇するであろう様々な状況に対する判断力を問う問題が連なっている。だからといって今までの職業上の経験で判断してはいけない。これは試験なのだ。「あるべき姿」を回答にしなくては正解ではない。

 運良くひっかかり(まさしくこの表現がピッタリ)合格通知を手にした今、私は以前にも増して多くの本を読むようになった。今思えば1回目の不合格通知がなければ、私のような人間はステップアップできないのかもしれない。不合格に感謝するなんてことはしないけれど、高いモチベーションを維持することが(しつこく、粘り強く)今後の活動にも役立つはずであると思っている。

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