合格体験記


株式会社シスミックインテグレーション
  中尾 順一(第14回試験合格)

1.はじめに
 第14回ITコーディネータ試験(2008.5.25)において、晴れて合格者となったが、私にとっては(第12回及び13回に続く)三回目の受験であった
 今年で59歳となるが、ITコーディネータ資格取得がきっかけとなって今秋から、念願のIT業界に再就職することができた。
 ITコーディネータ協会(以下ITCA)のプロフィール照会で検索すると60歳  以上のITコーディネータ(以下ITC)の人数は全国で僅かに390名だそうだ。今後とも、さまざまの分野で活躍するベテラン実務経験者が挙って、ITC資格取得を目指し、人材交流の領域がますます拡がるようになればと思う。
 このたび、ITCAから私の受験体験について一文を求められたので、特に前記経験者の方々の受験を想定して、その対策として少しでも役立つならと思い、自らの体験記を寄稿することにした。

2.一回目の受験(2007.5.25)について
 雇用契約の終了(2007年4月末)を待って、自己研鑽のため一年間は勉強する計画を立てていた。そこで、まず手始めにITC試験の合格を目指しはしたが、その後につづくケース研修参加は、当初は予定していなかった。この時、ITC試験は単なる通過点と考えており、次なるIT系あるいは他の資格取得のための受験を検討していた。
 当然、試験に対する恐怖心はカケラもなく、試験区分として経営系さえ選んでおけば、これまでの経験をもとに判断できるのだから、この試験合格は、さほど難しくないと勝手に高をくくっていた。
 従って、一回目は、ダウンロード版PGL(プロセスガイドライン)とITCA認定教材「IT経営の最新知識」を入手し、漫然と受験勉強していた。
 試験当日も暢気なもので、設問の一つ一つの文章を吟味・熟読しながら「四肢択一」問題に取り組んだ。基本問題(40問)が終わりそうになった頃、ふと我に返って時計を見ると既に一時間経過。難題の応用問題(60問)が控えていることに気がつき、さすがに今回は、ギブアップかと焦った。
 それからは、脱兎の如く読み飛ばし、直感でもってマークを記し、タイムオーバー。こうして、第12回ITC試験はあっけなく終了し、見事に不合格。私の心境は正に曳かれ者の如くであり、粛々とケース研修受講の手続きを済ませることになったのである。
 しかし"人間万事塞翁が馬"である。このケース研修では、肩書にとらわれず他の若く優秀な参加者とのスリルのある議論が行われるなど、研修を通じて醸成された知識・体験・人脈等が如何に有意義であったかは、参加したが故に、初めて思い知らされることになるのである。

3.二回目の受験(2007.11.25)について
 ITC資格認定のためのケース研修は2007年11月11日に終了した。その二週間後に、受験した。さて、今回の受験対策に関しては、3ヶ月に亘るケース研修も無事修了した直後でもあり、基本的に遺漏なきものと思い込んでいた。よって、不合格懸念などに悩まされることも無く、次にチャレンジする資格試験の受験勉強に専念できていた。
 やがて、年が明けて、第13回ITC試験に対する判定が不合格と知らされた時には、正直心底仰天した。
 その後、ITCAから送付された「分野別正答率グラフ」を見ても「経営戦略フェーズ」と「IT導入フェーズ」は満点、また他の分野においても、かろうじて合格者平均正答率に近い円グラフの軌跡を示していた。
 しかし、あろうことか、円グラフの一点は鋭角に切り込まれ、見事に陥没していたのである。私の「モニタリング&コントロール」分野の正答率は三割以下の落第点だったようだ。しかし、それでも平均正答率は七割以上である。受験体験記などでは、七割の正答で合格と聞いていたので当時はITCAの合否判定に対して大いに憤慨したものである。
 ITCAは現在も「個別の点数及び合格ライン、合否基準等は公表しない方針」を堅持している。従って過去問題の内容並びに正解、配点などは一切公表されておらず、事の真相は今日も謎である。
 しかし、自らが演じたこの受難劇は、本人には不本意な結果ではあったが私を含め、ITC試験合格を目指す受験者には、常日頃の慢心を戒める良い教訓として受けとめていただけそうだ。

4.三回目の受験(2008.5.25)について
 前回の不合格判定を厳粛に受けとめ、第14回ITC試験を目指すことにした。
 思い起こせば、今までは試験合格の最短コースを歩むことのみに関心があったようだ。今回の受験では、少し目線を上げて取り組んでみようと思い始めた。そもそも、試験合格は一つの目標であって、究極の目的ではない。
 二度の不合格判定もこの際、折角の機会であると受け止め、本格的に勉強することが、自らの将来に向け得策であることに気づき、方針を改めた。
 この心構えができれば、少なくとも一度や二度の不合格判定で悩む必要はなくなる。
 そこで、前記の視点から、ITCA認定教材・推薦図書を中心に、特にケース教材として有用となる書籍を選び、速読を念頭に幅広く長文読解を試みた。
 また、一方で具体策として、情報戦略モデル研究所の「ITコーディネータ試験対策コース(2日間)」を受講することにした。この時の講師の指導が試験対策としては、最も有効であったように思う。
 さすがに、三回目の受験は自信過剰とはならず、運を天に任す心境で試験会場に臨んだ次第である。この時の第14回ITC試験に対する判定は合格であった。

5.受験対策について
 最後に、このITコーディネータ試験を三回受験した体験から、私なりに考えた末、受験の予備知識として特に次の三点を挙げ、注意を促したいと思う。下記用語とその解釈について、常日頃から、関心を持つようになれば受験に際して、設問作成者の視点に立って、個々の試験問題を見ることができるようになるはずだとの考えである。
 (1)IRT(Item Response Theory:項目応答理論)
 (2)設問作成者の視点から見る「多岐選択・良問の作り方」
 (3)コンテキストとコンテンツの識別
 何故ならば、私も含め多くの実務経験者がITC試験に失敗するケースではこの三点の認識を欠きがちであるように思う。
 例えば、そのひとつ「(3)コンテキストとコンテンツの識別」に関して解説すると、私の場合なども素直に下記解釈a:を受け入れることができていなかった。与えられた設問に対して、私独自・独特の立場・見解・感性が強く働くためであろう。長年蓄積された嗜好や習性から脱却できるようになるまでに、相当の時間の経過が必要であったようだ。

 a:(当たり前のことではあるが)"ITC試験の応用問題"は「受験者である、あなたの見解」を聞いているのではない。
 ITC試験問題は、設問作成者が提示する「解説・モニタリング結果等のコンテンツ」を読んで、この設問作成者なら是とするであろう、コンテキストを素早く察知・共有できることの証明として「四択の答案コンテンツのうちの一つ」を選んでみせよ!と要求しているのである。
 その"コンテキスト"とは即ち「ITコーディネータの立場」と言い換えることができる。

 今回の体験を通じて、学んだ教訓を忘れず、自己研鑽に努める所存である。



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