2015年度 IT経営カンファレンス開催地概要報告(福井)

 



2015/12/24
ITコーディネータ協会
事業促進部 中村 路子

 

 

2015年度 IT経営カンファレンス開催地概要報告(福井)

 

 


講演内容
基調講演 『中小企業が可能なIT経営~クラウドで始める経営効率化~』
一般社団法人クラウドサービス推進機構(CSPA:シェスパ)
代表理事 松島 桂樹氏
企業事例発表 『経験と勘から「経営ナビシステム」へ』
有限会社瑞穂 専務取締役 事業統括部長 丸山 長宏氏
サービス事例紹介 『クラウドサービスのこれまでとこれから~rakumoを事例に~』
rakumo株式会社 代表取締役社長 御手洗 大祐氏
パネルディスカッション パネルディスカッション
松島 桂樹氏/丸山 長宏氏/御手洗 大祐氏

 


・参加人数 38名
・参加者分類 一般 20名 ITC 18名
 
今年度の「IT経営カンファレンス」2回目は福井県での開催になります!
北陸新幹線の開通を控え、福井駅の周辺も大規模な改修中でしたが、原寸大の動く恐竜モニュメントや、飛び出すトリックアートなど楽しい仕掛けがたくさんあり、新幹線開通が楽しみです。

 


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初めに主催の特定非営利活動法人福井県情報化支援協会の栃川理事長より、開催のお礼とともに、最近の動向として、単純なことはますますIT化される一方で中小企業はIT化が進まないままである。このままでは存続できないのでは?という問題解決策のひとつとして今回のテーマ「クラウド」がある。本日のカンファレンスが今後の経営のヒントになれば。とのご挨拶がありました。
 

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続いて共催機関としてITコーディネータ協会会長播磨より、協会の取り組みのご案内と、IoTや3Dプリンタの活用で仕事のやり方が大きく変わってきている。今後の日本の産業構造が大きく変化することが「日本再興戦略」にもあるが、これに備え取り組んでいかなければならない。これから中小企業の稼ぐ力の強化手段のひとつとして「クラウド」がある。とのお話をさせていただきました。
 
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基調講演 『中小企業が可能なIT経営~クラウドで始める経営効率化~』
一般社団法人クラウドサービス推進機構(CSPA:シェスパ)
代表理事 松島 桂樹氏

 


(講演概要)

・現在はスマホやタブレットが常識となっており、皆が気づかない内にクラウドを利用しており、欠かせないものである。
農業分野→その場で記録をとることが出来る。サービス分野→スマホ・タブレットがレジになる。運輸業→配達の空振りを防ぐなど様々に活用されている。クラウド中心になると、スマホ・タブレットで仕事ができるようになりノートPCは不要になっていく。
・製造と販売の連携こそ、日本らしさの象徴である。生産地は地方集積、顧客は中心都市なので、クラウドで繋ぎふるさとと都会のコラボが必須である。地方創生は中小企業の稼ぐ力の強化からであり、アイディアは地方にある。

・インダストリー4.0→今世界は大きな産業革命の中にあるが、サービス革命でもある。売り切りビジネスからの転換、買うから使うへ。
今までと何が違うのか?→一方向のサービスだったものが、情報収集・データ分析・サービス改善・提供と円になり、「ものづくり」から「おもてなし」になる。
カーシェア・DCストリーミング・チャージプログラムなど、使っただけ支払うサービスモデル→富山の薬売りビジネス「用いることを先にし、利益は後から」

・CSPAでクラウドサービス認定プログラムを始めてみて、各分野で提供されている・小さく始められる・組み合わせて自社に適合できる・パッケージを「買う」ではなく「組み合わせる」等わかったことがある。

・明日から出来るクラウド経営として、まずデータをクラウドにあげる。
現場機器のスマート化→タブレットで現場で見られる
製品・サービスのスマート化→顧客、現場の意思疎通・提案改善
品質保証のクラウド化→トーレサビリティこそクラウドである
経理業務のクラウド化→自動化により処理の軽減
・人材が足りない
どんな人材が足りないのか?クラウド活用し業務の効率化とテレワークによる中核人材確保が可能

・まとめ:中小企業の取組み課題
現場のスマート化・品質改善・商品サービスのIoT化による顧客満足度改善・データ分析サービス分野への進出
 

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企業事例発表 『経験と勘から「経営ナビシステム」へ』
有限会社瑞穂 専務取締役 事業統括部長 丸山 長宏氏

 


(講演概要)

・広島県安芸郡熊野町の伝統工芸品熊野筆の製造販売会社/女性の職人が多い/見える化への取り組みのお話

・IT経営導入前には、事業継承と経営・生産管理基盤の確立を分析していたが、データが色々なところに点在し共有できないなどどこから手を付けて良いのかわからなかった。
・多品種少量型オーダーでアイテム数が増加。短納期の要請があっても複雑化して管理ができない。利益目標の見える化・相互業務の見える化をし、全員参加型の経営方式へ!

・①販路開拓→自社ブランドの設立②生産管理→勘に依存したトップダウンから在庫、生産、仕入れ管理体制③経営管理→「OEM/直販、国内/海外」事業の収益分析ツールがない。といった問題が顕著化→経営・生産基盤強化の必要性を痛感し専門家の導入を決意

・①社内に散逸しているデータを繋ぎ経営ツールとして活かす②現場で使える生産・経営管理システムを安価で導入③計画に沿った全員参画型の体制の確立を3年かけての業務改善方針が決まる
・経営管理領域の改善→BSC戦略マップ(数値計画・財務計画)を作成。既存システムを最大活用し、製品の利益貢献度や生産性検証を行い経営計画立案へ活用→見える化へ一歩近づく

・生産管理領域の改善→「5S活動」を展開し、従業員の意識改善。新たな生産管理システム(SDBR)の導入、POSの運用開始、受注情報の共有化を進める

・2年目には「経営計画を最重要視」「全員参画」「経営NAVIシステム本格運用」へ

・活動の成果として、売り上げ&利益率が上がる。社員のモチベーションアップと人間関係の深化。勘に頼らない新しい経営スタイルが見えてくる

・生産能力や業績がデータとして見える化された当初は、社員同士の摩擦、問題意識など隠れていたものが見えてきた。トップダウンから全員参画型への過渡期にあり社員は戸惑う。など問題もあった

・海外事業の強化・自社ブランド強化・研究分野へ・IT活用による経営生産基盤強化プロジェクトへのチャレンジなどの事業活動が創出された

・IT導入の意義に据えること→スタイルに合った設計を心掛け、顧客および社員の満足度に寄与するものであること→「IT導入後に仕事が増える」事態に陥らないように!

◆本日のご講演内容はこちらでも要約版がご覧いただけます
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20140430/553870/

 

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サービス事例紹介 『クラウドサービスのこれまでとこれから~rakumoを事例に~』
rakumo株式会社 代表取締役社長 御手洗 大祐氏

 


(講演概要)

・日本の今後は労働人口が減り支えないといけない人が増える→1人1人の負担が上がり酷使せざるを得ない→1人当たりの生産性向上、今仕事が出来ない人が参画できるワークスタイルに向けたアプローチである。
・業務プロセス・業務環境、ビジネスそのものの見直しが必要である。

<<クラウド会計ソフト導入事例の紹介/イトウスポーツ>>
奥様が昔ながらの手書き帳簿で管理していたが、体調不良で子育て中の娘さんが引き継ぐが本人でなければわからないことが多くミスが多発→freeeの導入により入力が合理化され、プランナーにもアカウント共有し、リアルタイム入力、不採算がわかるようになる。レジにはタブレットでエアレジ・Squareを導入しクレジットにも対応できるようになった。

・クラウドのいいところは「いつでもどこでも使える(ユビキタス)」「安価で使いたいときに使える(固定資産ではない)」「データの蓄積・分析が可能」
・クラウド化でスライス時間での業務効率化が可能。取引先へのレスポンス、意思決定が速くなる→帰宅時間も早くなる。

・クラウドのこれから
機械学習の発展による業務自動化、最適化提案
IoTとの邂逅
社員の健康に配慮したサービスも出てくる

・まとめとして、クラウド化により
「ITコスト最適化と効率up(ITの民主化)」
「ワークスタイル変革」
「見える化により効率up」が出来る

 

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パネルディスカッション 松島 桂樹氏/丸山 長宏氏/御手洗 大祐氏

 


御手洗氏(以下:御):丸山氏(以下:丸)IT導入成功のポイントを教えてください。
丸:何かやりたいがどうすればいいのかわからなかった。出会いもないですし。中小企業基盤整備機構へ相談し、悩みを聞いてもらいITCの方を紹介してもらったんです。ITCは広い目線で見てくれて、適切なものを提案してくれました。
御:社員へはどう説明したんですか?
丸:皆仕事を楽にしたいと思っているから。これをやれば楽になるという事をITCが皆に説明してくれました。
松島氏(以下:松):ベテランの職人さん。というかおばさん(笑)は難しいと思うけど?
丸:良い感じで説明して、もう最後は3人(丸山氏・奥様含む役員)で頭下げるしかないです(笑)。

丸:今はまだクラウドアプリなどは使っておらず、出張中はFacebookグループで共有していますが、こういったものは役員から使った方が良いのでしょうか?
御:情報システム担当などから少しずつ使って慣れていって、みんなに広めた方がいいですね。クラウドは実装に時間がかからないし、すぐに変えられるのが特徴ですから。
松:ツールを使いながらワークスタイルを変えるの?ツールを入れたからワークスタイルが変わるの?
御:どちらとも言えないが、ある程度は経営者の理解が必要ですね。テンプレがあるから安いというのも理解して欲しいです。
松:カレンダーを軸にアプリを回していくのは現実的だよね。
御:要望でもtodoものは多いです。

丸:女性は顔と顔を合わせてやって行くのがうまいですから、ソーシャルに反発を覚える人も多いんですよ・・・
御:確かに新しい事を始めるにはFace to faceが必要ですが、テレワーク制度があれば安心ができます(急の病気や介護など)。人を集めないとダメという流れもあり二分化していますね。確かにデータを見ているだけでは最適化は出来ても変化にはついていけません。バランスが大事です。コミュニケーションは不可欠であり、ネットで出来ないかは課題として考えています。

播磨会長より質問:瑞穂の海外展開やネット販売をどう考えてます?
丸:今はJetroの補助金など使って海外の展示会に出ていますが、直接輸出できるようにドキュメントを勉強中です。
松:最初にやることは何?
丸:英語でホームページを作りました。直販の問い合わせが多いので、手数料のみで直販しています。ブランドリリース後「いつ買えるのか?」というお問い合わせが多くなりました。
松:今は楽天離れが多いよね。結局はGoogleで調べるから。
御:モール商売が出来るのは日本だけです。海外はほぼ直販ですね。決済サービスが出来てるから、みんな自分でやるようになる。後は集客のノウハウくらいですかね。
松:自社のECサイトを作るのは大変ですか?
丸:ブランディングやデザインはプロに頼みました。この辺りは補助金も出るので利用させてもらいました。

御:「丁寧に売る」ってネットではどうやっていくんですか?
丸:このクオリティは熊野筆にしかないと思っています。価格も含めて価値を提供しないと伝統工芸は廃れていきます。付加価値をきちんとつけていくことが必要だと思っています。
松:クラウドはお客さんの顔が見えないけど「丁寧に売る」って?
御:社内の1/3は営業マンです。お客様にメリット等きちんと伝えることができなければいけない。要望は千差万別でWebだけでは説明できません。
松:品質管理にWebは必要ですか?
丸:ブランドネームを#ハッシュタグで検索すると、いい事と悪い事両方が書いてあるので商品開発の参考にしています。問い合わせはネガティブな事が多くてつぶやきはポジティブな事が多いですね。

松:最後にITCに向けて「こういう支援があるといい」などの要望はありますか?
丸:ネットで色々と情報は出てくるけど、それだけではわからないことが多いのでユーザーとベンダーを繋ぐマッチング能力を求めています。
御:導入の際に、私たちは業務のことはわからないのでそこをカバーしていただけるといいと思います。後、導入後の支援までしていただける方がいいですね。

 

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2016年は1月の熊本をスタートに、北海道から沖縄まで5箇所での開催が予定されております。
今後のIT経営カンファレンスにも期待が高まります!



 

【開催情報】
セミナータイトル
中小企業が可能なIT経営 ~クラウドで始める経営効率化~
IT経営カンファレンス2015 in福井
開催日時 2015年12月3日(木)13:00~17:00
主催 特定非営利活動法人福井県情報化支援協会
共催 特定非営利活動法人ITコーディネータ協会
後援 特定非営利活動法人ITコーディネータ富山、特定非営利活動法人石川県情報化支援協会



 

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本件に関するお問い合わせは、ITコーディネータ協会 事業促進部まで
 
 

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