支援制度活用事例

連載 ITコーディネータ活用記
<実録 京都府矢代仁の経営改革>


第1回 このシステムは求めているものと違う...〔改革の決意〕
本コーナーでは、プロのIT コーディネータ組織「ITC-METRO」が、中小企業経営者と出会い、
改革を進めていく様子をレポートしていく。
今回、ITC-METRO にコンサルティングを依頼した矢代仁は、創業280年の伝統ある呉服メーカー問屋だ。


上品な風情を醸し出す「御召」は、京都はもちろん、着物を愛する人々の「程合いの良いおしゃれ着」として重宝されている織物だ。京都府京都市の矢代仁は、この御召を主力商品に据える享保5(1720)年創業の伝統ある呉服メーカー問屋である。
戦後、人々の服装は洋装化へと加速する。同社もその流れを受け一時は多角化を図り、洋装品も取り扱った。しかし、「私どもの強みはやはり呉服。2000年ころからは再び御召と染物の和装品に事業を集中するようにしました」と矢代仁の矢代一社長は説明する。最近になって、「和」が見直されていることも追い風になっているという。


スリム化の先の経営改革をどうするか

呉服業界は債権回収までの期間が長く、また在庫を豊富にキープしておくなど独特の商習慣があった。今の時代、これでは経営を圧迫する。
矢代社長は経営のスリム化を進める一方でITの活用にも取り組んだ。
しかし、どうもすっきりしない。岡本巧取締役は当時を振り返る。
「オフコンのベンダーから何がしたいか聞かれ、皆で希望を言いました。しかし見積額を見てビックリ。仕方なく機能を減らしましたが、出来たものは求めたシステムと何か違う。冷たい物を頼んだはずが、暖かくて湯気が立っている物が出されたような...」
導入したオフコンは商品の一品管理が可能なシステムだったが、業務改革に結びつくものではなかった。適切なアドバイスをくれる立場の人もいない。メーカーを変えても事態は同じだった。

取締役営業部長 岡本巧 氏

相談相手との出会い、そして決意

困惑したままオフコンの保守契約が切れる時期を迎えた矢代社長は、顧問契約を結んでいるひかり税理士法人の間宮達二氏に相談を持ちかけた。税の専門家であるとともにITコーディネータとしての顔も持つ間宮氏は、同法人主催・NPO法人ITC―METRO運営の経営者研修会へ参加を勧める。
2005年7月に開催されたこの研修会は、「予想と違ってITの講義ではなく、自社の問題点を見つけ、参加者のアドバイスを受けるという有意義なものだった」。矢代社長はすでに研修の途中で、ITコーディネータ(ITC)の活用を決意したそうだ。
一方、インストラクターを務めたITCの小形茂氏は「矢代社長の熱心さはひしひしと伝わってきた、是非経営改革のお手伝いをさせていただきたいと感じた」と言う。
こうして両者の波長は合致。来年3月までのシステム発注を目指し、第一ステップである現状分析に着手した。


NPO法人 ITC-METROのメンバー
小形茂 氏(写真右)、間宮達二 氏(左)

年代別に御召の色・柄を記録している台帳。
明治時代の織を参考にすることもあるとか。
同社の大きな財産だ。

(次号に続く)

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