事例本文

出典:財団法人ひょうご中小企業活性化センター
経営改革・IT化事例(発表済事例)
事例企業 オイルワールド(久後石油株式会社)(Z006) 事例発表日 平成15年3月
事業内容 ガソリンスタンド、サービス全般
売上高 従業員数 資本金 設立
キーワード ガソリンスタンド、サービス全般、ITリテラシ向上


メールをやりとりしたり、社内文書を作ったり。
パソコンはすっかり手放せなくなりました。


これからはパソコンのひとつも使いこなせないと時代に取り残される・・・。 そんな危機感から、1年間週1回のペースでパソコン教室に通った久後さん。 社内向けの文書作成に、JC(青年会議所)での活動に、仕事の道具として片時も手放せない。




オイルワールド(久後石油株式会社) 久後 勇人さん(32歳)

播州地域でスタンド2店舗、複合店2店舗の計4店舗を展開するオイルワールドで現在取締役統括本部長を務める久後さん。 メーカー系列に属さず、いち早くオリジナルブランドを掲げて顧客サービスを追求。

遠ざけていたパソコン、危機感から教室へ

 久後本部長は、まだ中学生だった頃、一度パソコンにさわった記憶がある。だが操作の仕方もまるでチンプンカンプン。 それからというもの、およそコンピュータと名のつくものにはおよそ縁がなかった。いや、むしろ関りをもたないようにしてきたといった方が正確かも知れない。
 そんな久後本部長が、3年前のある日、パソコン教室に通い始めた。
 「ITブーム真っ盛りの頃。いつまでも知らぬ存ぜぬでは通用しない。 これからは、パソコンくらい使いこなせないと取り残されるんじゃないか・・・。 そんな危機感がありましたね。それで思いきって知人の経営するパソコン教室に飛び込んだんです」
 レッスンは週1回。「Word」「Excel」をひと通り習い、最後にメールのやりとりなどインターネットの使い方について学ぶプログラムだった。
 「実際に行ってみるまでは、抵抗がすごくありましたね。果たして本当にできるだろうかとか、上手い人がいっぱいいるんじゃないかとか、 余計なことばかり考えてしまうんですよね。これも仕事と割り切るしかありませんでした」

自己流は結局遠回り、それを実感したレッスン

 だが実際に教室を訪ねると、みんな自分と同じ初心者だとすぐに分かった。
 「意外に女性が多いし、相当年輩の方も少なくない。何だかホッとしたのをおぼえています(笑)」
 そればかりではない。授業が進むうち、内容についても納得のいくものであることが分かってきたという。
 「教室に通うしばらく前から、実はパソコンを手に入れて見よう見まねでさわっていてはいたんです。 でもレッスンを受けてみて、自分の理解が間違っているところや、ずいぶん遠回りをしてたんだなと実感させられることが思った以上にたくさんありました」
 久後さんは「Word」を使った日本語入力で実例を紹介してくれた。
 「日本語入力をする時、習いに行くまでは文字を入力するたびにひとつひとつ変換キーを押して変換していたんです。 でもスピードを考えれば、入力ミスがあってもそのまま文章を打ち続けてあとで変換する方がよっぽど効率的なんです。 そのことが分かってからは、ずいぶん入力スピードがアップしました」
 またマウスを使わず、ショートカットキーといってキーボード操作だけでパソコンに命令を与えるやり方も教わった。 久後さんにとっては、まさに"目からウロコ"の思いだった。
 「独学が悪いというわけではありません。きっと、努力すればそこそこ使えるようにはなると思います。 でもすごく時間がかかることは覚悟しておいた方がいいですね」

販促物の作成にフル活用、全員に配布する出勤表も手作り

 久後さんはパソコン教室で学んだ知識をもとに、従業員に今度は自らが先生役になってパソコンの操作を教えた。 現在オイルワールドでは、販促物の制作や、従業員の出勤表など、社内業務でパソコンをフルに活用している。
 「キャンペーンやイベントがある時は、ガソリンやオイルエレメントの半額券、あるいは洗車の無料券などいろんなクーポンを発行しますが、 今はぜんぶパソコンで作っています。イベント当日に手渡ししたり、事前にポスティングなどで配っておいて集客に使います。 一度作ってパソコンに記憶させておけば、数字やタイトルの色、大きさを変えるだけで何度でも使えるし、コストもほとんどかかりません。便利ですよね」
 また商品名や値段を書いたPOPの作成でも、パソコンは大活躍だ。
 「タイヤのようにスペースをとる商品は店の外に展示しているんですが、目立つようにパソコンでPOPを作っています。 屋外に展示していると雨にふられることもありますが、ラミネートしておけば雨がふっても大丈夫です」
 1ヶ月の勤務ローテーションを記した出勤表は、毎月従業員全員に配布されている。
 「当社では、隔月16日から翌15日までを1クールとして、出勤のローテーションを組んでいます。 出勤表は以前は定規とボールペンで作った手製。 お世辞にもスマートとはいえなかったですが、パソコンで作るようになってからはずいぶん見やすくなりました」

JCでの活動にもこれからはパソコンが不可欠

 このほか久後さんは、社内通達や人事異動の発令など、業務連絡用の文書を作る時にも、今はほとんど「Word」を使っている。
 「ローマ字入力に慣れてしまえば、手書きよりよっぽど早いですからね」
 仕事をする時は、すっかりパソコンが手放せなくなった。
 「パソコンを使いこなす経営者も、ひと頃のことを考えるとずいぶん増えてきましたね。 私もJC(青年会議所)や業界団体の会合に出席することがあるんですが、パソコンをメモ代わりに使っておられる方もたくさんいます。 特にJCはいまペーパーレス化に力を入れていて、日常の連絡は基本的にぜんぶメール、会議などもほとんど全員がパソコン持参です。 またグループで連絡を取り合う場合はメーリングリスト、書類もメールの添付ファイルでやりとりしているほどです。 パソコンができない人は少数派。ほとんどいないじゃないでしょうか」

九九や算盤と同じ、仕事になくてはならないもの

 今後も久後さんは、自らが率先して会社のIT化を進めていきたいという。
 「メールなどはまだ全員が使えるまでにはいたっていません。全員に浸透させることが最初の宿題ですね。 特にフロントのスタッフは、パソコンが使えないと仕事にならないですし。 また将来的には、現在ファックスで行っている納入業者さんへの発注なんかも、全部インターネット経由になると思います」
 いまガソリンやバッテリー、タイヤなどの仕入れは、ファックスに必要事項を記入して本店から納入業者にファックスで送っている。 4つある店舗からも所長が必要に応じて本店にファックスを送付して本店では4つの店舗の数量をまとめて納入業者にファックスしている。
 「でも、もう2~3年もすれば、全部端末を通じてインターネットで行われるようになるでしょう。 そうなってくるとパソコンが使えないと、仕事ができないという状況が起こることだって十分ありえます」
 パソコンは、今や九九や算盤と同じようなものだと久後さんは言いたいらしい。
 「慣れるまでは少し時間が必要ですが、一度おぼえてしまえば仕事はもちろんプライベートでも、いろんなことに使えるんですよね。 実際に使えると、またそれが嬉しい。これを読まれている皆さんにもぜひお勧めします」




【メーリングリスト(めーりんぐりすと)】
インターネット上で特定のメンバーに一斉同報の電子メールを送るシステム。ニューズレターの配信や、ネットを使ったディスカッションなどに使われる場合もある。
【添付ファイル(てんぷふぁいる)】
インターネットの電子メールに付録としてつけて送るデータファイルのこと。画像ファイルやワープロファイルなど容量の比較的大きなデータを送る際に使われる。
【ショートカット(しょーとかっと)】
何段階かの操作を一度のキーボード操作で行える機能のこと。マウス操作をキーボード操作で代用するキーボードショートカットを指す場合が多い。

<出典>
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
2003年3月発行 IT活用奮闘記(ITなんてこわくない)
筆者:六田 伸彦氏(ろくだ のぶひこ)
 (株)ジェイ・シー・エヌ 代表取締役
 ITコーディネータ(0006652001C)・ITCA公認インストラクター、
 ITSSPアドバイザー、中小企業事業団登録IT推進アドバイザー

本事例のお問合せ先:
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
産業情報部 情報推進課 八木課長様(078-291-8503)

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