事例本文

出典:財団法人ひょうご中小企業活性化センター
経営改革・IT化事例(発表済事例)
事例企業 トゥリー・トップ(Z014) 事例発表日 平成15年3月
事業内容 コーヒーショップ
売上高 従業員数 資本金 設立 1988年
キーワード コーヒーショップ、ITリテラシ向上


パソコンがないと、したいこともできない。
そんな時代なんですね。


長い間の夢だった心理学の勉強。だが受講するためにはパソコンが必須。 機械が大の苦手で、パソコンに触ったことすらない西海さんは、大慌てで勉強開始。 半年という限られた時間の中で、必要な知識とテクニックをマスターした。




トゥリー・トップ 西海 章子さん(44歳)

エスニックムードあふれるカフェ「トゥリー・トップ」を経営。今年で16年目を迎える。 社会福祉にも強い関心を寄せ、ホームヘルパー2級の資格も取得。介護サービスのボランティア活動にも従事。

パソコンが必須の通信大学、あわてて習うことに

 西海さんは、今年「大学生」になった。この春、武蔵野女子大学(4月から武蔵野大学)の通信教育部に入学。本格的に心理学の勉強を始めたのだ。
 「以前から社会福祉の分野に興味があって、去年まではお店の定休日に社会福祉施設でお年寄りや障害をもつ人の介護ボランティアにも参加していたんです。 心理学の勉強をしたいと思ったのは、その延長で体だけでなく心のケアについても専門の知識や技能を身につけたいと思ったからです」
 大学入学が正式に決まってからというもの、西海さんは授業が始まるのを今や遅しと待ち続けた。だが、困った問題がひとつだけあった。 通信教育部の授業を受けるためには、パソコンを扱えないといけないのだ。
 「必須といっても、メールのやりとりに使うぐらいだろうと最初は簡単に考えていたんです。 ところがよくよく資料を読んでみると、「Word」「Excel」の基本操作をマスターしていなければいけないとか、 通信回線はADSLじゃないといけないとか、いっぱい書いてある。言葉の意味さえ分からない私には、何をどうしていいのか見当もつかない。 とにかく今のままじゃいけないことは確かなんで、誰かに教えてもらうことにしたんです」
 西海さんは、パソコンに詳しい知人・友人を頼ることも考えたが、思いきってパソコン教室に通ってみることにした。
 「友人に習って、自分の中に甘える気持ちが出てくるのが恐かったんです。 真剣に何かをおぼえたり、新しいことを身につけようと思ったら、やっぱりお金を払ってプロの人に教えてもらうのがいちばん良いと思います」
 西海さんが店の近くのパソコン教室を訪ねたのは、入学を半年後に控えた昨年11月のことだった。

クリックもおっかなびっくり、不安だらけだったスタート

 西海さんは、お店が定休日の木曜をレッスンの日に選んだ。1回90分。教室に数人が集まり、マンツーマンでインストラクターが指導にあたる。
 「パソコンを始めるならWordとExcelが基本―そう先生がおっしゃって、Wordから習うことにしました。 表情は笑っていても、内心は不安で不安で仕方がなかったですね」
 アイコン、マウス、クリック。次々に飛び出す専門用語。コトバだけは聞きかじりで知ってはいたものの、内容までは分からない。 西海さんにとって、それは英語よりずっと難しものに思えた。
 「初めの頃は、マウスでアイコンをクリックするだけでももうこわごわ。押せば、何だかとんでもないことが起きそうな気がして(笑)。 恐怖感が薄らいできたのは、通い始めて1ヶ月が過ぎたあたりからです」
 自宅でも練習できるように、西海さんは自分専用のパソコンも手にいれた。1台20万円の最新機種。 ノート型だから、折り畳めばどこへでももって行ける。お店、自宅、教室。いつでも、どこでも開いた場所が練習の場になった。
 「レッスンが終わると、自宅に帰って練習の続き。平日お店にいる間も、時間を見つけては練習を繰り返しました。 ただしその場合は、お客さんが店にいないことが条件。以前お客さんがいる時にパソコンを触っていて、『終了』の仕方が分からなくなったことがあるんです。 しかたないのでそのまま放っておいたら、今度は画面が真っ黒になって、壊れてしまったのかと大騒ぎでした」
 西海さんが、それを「スクリーンセーバー」という機能のひとつだと知ったのはそれからしばらくしてのことだった。

短期間で上達するために自分に強いた宿題の山

 最初は左右の指を1本ずつ使っての文字入力だったが、慣れてくるとキータイピングの練習も始まった。左右10本の指をフルに活用してキーボードを叩く。
 「言葉でいうのは簡単なんですけど、これがホント難しくって・・・。滅多に使うことのない左手の小指が硬直してなかなか動いてくれないんですよ(笑)」
 もっとも、西海さんにはのんびり構えている時間などなかった。春になると、本番の授業が始まるのだ。残された時間は少ない。西海さんは、覚悟を決めた。
 「先生に相談して、毎回宿題をいっぱい出してもらうことにしたんです。私はなまけ者だから、宿題がないときっとどこまでもサボってしまう。 自分を追い込むことで、時間のハンディを乗り越えたいと思いました」
 せっかく教室でおぼえても、次のレッスンまでの1週間、キーボードに触らないでいるとすぐに操作の手順を忘れてしまう。 それがキッカケで、途中で投げ出してしまう人も少なくない。少しでもパソコンに触れる時間を作ること。それが短期間で上達する秘訣だ。
 「文字入力の授業では、制限時間内に文字を打っていく練習なんかもありました。私はこれがけっこう好きでしたね。 制限時間をオーバーしてしまうと、よーしもう一度って負けん気が湧いてくる。もっと早く、もっと早くとついつい頑張ってしまうんです」

自宅にはADSLも開通、この半年がウソのよう

 西海さんの上達ぶりには、めざましいものがあった。教室に通い始めて3ヶ月も経つと、お店で出すメニューも1人で作れるほどになった。
 「次はチラシ作りにも挑戦したいし、ゆくゆくはホームページをインターネットに公開して、よりたくさんの人にお店のことを知ってもらいたいと思っています。 あっ、そうそう。この間ADSLに加入してパソコンからつなげられるようになりました。やっぱり早いですねぇ。 ホームページの画像なんかも、一瞬で画面にあらわれるんです。これで準備は万端。あとは一生懸命勉強するだけです」
 わずか半年で、触ったこともなかったパソコンはすっかり西海さんの生活の一部になった。
 「実は私、機械が大の苦手なんです。機械をいじらずに生活できるんだったら、それにこしたことはないというくらい苦手。 でも今回は、そんなのんびりしたことを言っていられない。パソコンをおぼえないと、やりたいこともできないんですから。 そういう時代なんでしょうね、きっと・・・」




【スクリーンセーバー(すくりーんせーばー)】
パソコンのディスプレイに同じ画面を長時間にわたって映し出していると、画像がディスプレイに焼き付いてしまうことがある。 それを防止するために、一定時間ごとにディスプレイの映る画面を変えていくプログラムをスクリーンセーバーとよんでいる。
【ノート型パソコン(のーとがたぱそこん)】
B5版~A4版ほどの大きさの、持ち運び可能なパソコン。これに対して机の上におく据え置き型のパソコンを、デスクトップパソコンとよぶ。 最近は技術が飛躍的に進歩し、ノート型でもデスクトップ型に匹敵する性能を備えたものが多数登場している。
【アイコン(あいこん)】
パソコンで作成した文書やデータのファイルを、小さな絵で表現し、中身や機能を直感的に理解できるようにしたもの。

<出典>
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
2003年3月発行 IT活用奮闘記(ITなんてこわくない)
筆者:六田 伸彦氏(ろくだ のぶひこ)
 (株)ジェイ・シー・エヌ 代表取締役
 ITコーディネータ(0006652001C)・ITCA公認インストラクター、
 ITSSPアドバイザー、中小企業事業団登録IT推進アドバイザー

本事例のお問合せ先:
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
産業情報部 情報推進課 八木課長様(078-291-8503)

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