イノベーション経営成熟度診断ツールを公開

イノベーション経営成熟度診断ツールを公開

~イノベーションを起こすことができる組織をつくるために

 

2016年3月31日

IT経営研究所


 

 ITコーディネータ協会(ITCA)は、「IT経営力」の組織成熟度を自己診断するツールとして「ビジネス競争力自己診断ツール」を開発・保有し、現場で活用が行なわれている。

 このたび、「イノベーション経営力」の組織成熟度を自己診断する「イノベーション経営力自己診断ツール」を開発したのでここに公開し、利活用に当たってのポイントを解説する。

 

 

 1.開発の背景、経緯

 ITCAは、イノベーションを起こすための企業経営のあり方について、2014年5月に「プロセスで解き明かすイノベーション」(副題:イノベーション経営プロセスガイドライン)(以下IPGLと記す)として取りまとめ、書籍として出版を行った。

 また、2013年度にIPAと共同で推進してきた「IT融合人材育成連絡会」では、イノベーションを起こすには個人能力とともに組織能力が求められると言う提言を行なっている。このため組織能力を評価する指標を用意することで、各組織が自己診断等を行い、継続的なイノベーティブな組織作りに役立てられるようにすべきとして、ITCAにおいてこの指標の開発に取り組むことが要請された。

 協会としては、2014年11月よりITCからの公募により「イノベーション経営力評価指標開発WG」を組成し、半年以上にわたり議論と実証を行いながら指標の開発に取り組み成果物を完成させた。このことは2015年9月のITCA機関誌「架け橋」にて広報したところである。

 その後中小企業おいび大企業での実証を続け、このほど、「イノベーション経営成熟度診断ツール」としてWebにて成果物を公開することになったものである。

 

2.診断ツールの成果物

 

成果物は以下の通り。

「イノベーション経営成熟度診断ツールについて」
 → ツールの趣旨、概要、使い方などを外観する資料

「イノベーション経営成熟度診断シート(A)」
 → 組織のイノベーション経営への取り組みの全体感を診断するためのシート

「イノベーション経営成熟度診断シート(B)」
 → IPGLのプロセス・フェーズごとに、組織IQの視点で詳細に診断するためのシート

「IPGL逆引きINDEX」(ITC用)
 → 「イノベーション経営成熟度診断シート(B)」 とIPGLとの対比に使うシート

「イノベーション経営成熟度診断ツール利用の手引き」(利用者用)
 → 利用者のための手引き書

「イノベーション経営成熟度診断ツール活用の手引き(ITC用)
 → 利用者を支援するITCのための手引き書

「案内リーフレット」
 → 当ツールの導入を勧めるためのPRチラシ

 

- イノベーション経営成熟度診断ツール活用のイメージ -
innov-tool-map_20150901.jpg

 

3.診断ツールの目的、適用範囲

 

  「イノベーション経営」と「IT経営」は、経営手法が異なる。そのため、それぞれの経営スタイルに適した診断ツールを使う必要がある。当ツールを使うには、ITCなど適切な専門家が経営者との面談の中で、少なくとも以下「診断対象」に掲げるような組織を対象とすべきで、既存事業の成長戦略を掲げている組織にいきなり適用しても、かえって混乱を招きかねないので注意が必要である。

 

ツールの目的:
 組織のイノベーション経営力を成熟度レベルで評価することによって、イノベーションが起こせる組織にするための気づきと処方箋が示せること。

組織形態:
企業、国、自治体、病院、学校、農業法人、NPOなど、あらゆる組織と、その中の特定組織(部署など)

組織規模:
大企業と中小企業、業種・業態での違いはない。ただし、独立系ITCにとっては、もっぱら中小企業がターゲットとなる。

診断対象: 
 ・イノベーションに関心がある組織
 ・イノベーションしなくてはと考えている組織
 ・新事業、新商品・新サービスが必要と考えている組織
 ・今のままではまずい、将来は無い、ビジネスモデルを変えたいと考えている組織

診断階層:
 
・経営者(経営層)
 ・管理組織(経営企画、人事開発部門など)
 ・個人・チーム(現場)

の3層で出来るだけ多様な人材に診断させることが望ましい。仕入れ先やパートナーなど、ステイクホルダーに診断してもらう場合にも使える。

 

4.成熟度の評価方法

イノベーション経営力の評価には、
 ・IPGL(イノベーション経営プロセスモデル)
 ・成熟度モデル
 ・組織IQモデル、 を援用している。

評価に当たっては、

前提:  IPGLの記述を「正」とする

評価要素: IPGLに書かれているプロセス、基本原則、基本姿勢をベースとする

評価項目: IPGLのプロセス・フェーズ単位に、組織能力(イノベーション経営力)を評価する

評価軸: 能力のレベルは「成熟度モデル」を援用し、能力の視点は、「組織IQモデル」を援用する 。

評価者: 組織自体が自己診断しても良いが、IPGLや組織IQのことを良く理解しているITCなど専門家に支援を受けながら診断を行うことで、処方箋も作ることができる。

評価軸に組織IQのフレームワークを使う理由:
IPGLの考え方を適用してイノベーションが成功した実証データはまだ存在しない。従って、イノベーション経営力の評価には、企業業績との相関性が証明されている組織IQのフレームワークを援用することにした。

 

5.今後の展開

 一般的に組織の能力は、「組織の能力=組織メンバーの資質×組織能力」の式で表現される。当ツールは、この式の「組織能力」を評価するものであるが、「組織メンバーの資質」能力については日本イノベーション融合学会で開発が行われているので、当ツールと合わせた使い方も検討されると良い。

 当ツールはまだまだ緒についたばかりであり、今後の利用に当たって、不十分な点もでてくるかも知れない。従って、協会の「ビジネス競争力自己診断ツール」と同様、ITCのビジネス現場での活用を通じ、皆様からのご意見でさらに磨かれたツールとなるよう、継続的な改善を行なっていく予定である。

  

6.本ツールの開発WG

 本ツールは、2014年11月、ITコーディネータからの公募により「イノベーション経営力評価指標開発WG」メンバーが選抜され、その後の検討を経て2015年9月に成果物が完成した。2015年9月に機関紙「架け橋」で公開の広報が行なわれ、その後ITコーディネータおよび協会において、中小企業現場や大企業での利用実証を経て、今回のWeb公開となったものである。

 

 「イノベーション経営力評価指標開発WG」メンバー 

役割 ITC氏名 所属
   水口 和美  株式会社ARU
   小峯 嘉明  ラーニング工房
   中崎 博明  戦略人材育成オフィス
  リーダー  浅井 治  ソフトバンク株式会社
   鈴木 伸彦  株式会社野村総合研究所
   山本 由美  インフォコム株式会社
   川野 太  一般社団法人ヒューリットMF
   永吉 実武  早稲田大学商学学術院総合研究所WBS研究セ ンター
   太田 綾子  虎の門経営支援センター
  事務局  平 春雄   ITコーディネータ協会
   前田 信太郎   ITコーディネータ協会
   石井 由美   ITコーディネータ協会

 

以上

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