経営改革・IT化事例

経営改革・IT化事例
【事例概要】

1.事例報告者
事例題名 竹下医院のHPと経営改革(J004)
事例報告者 重松 康秀 ITC認定番号 0010652001C
事例キーワード 〔業種〕クリニック
〔業務〕医療
〔IT〕ホームページ

2.事例企業概要
事例企業・団体名 医療法人社団澄笛会 竹下医院 企業概要調査時点 2002年4月~
URL http://members.jcom.home.ne.jp/shigemat/takesita.htm
代表者 院長 医学博士 安藤由美子 業種・業態 クリニック
創業 1958年4月 会社設立 医療法人化2002年9月
資本金   -  年商   -  従業員数 12名
本社所在地 東京都練馬区
事業所  
業界特性 競争が激しくなり、差別化とマーケティング取入れが必要。広告規制緩和。
競合他社 練馬区南大泉および西東京市東部に競合クリニック多数
リード文  竹下医院は、外科、内科、形成外科の診療所であり、長年、地元のかかりつけ医の役割を果たしてきたが、 最近、他医院に対する差別化としてスキンクリニックに力を入れ、将来を見据えた経営をはじめた。

3.コーディネート内容概略
関与経緯  他ネットワークに全国の医療機関を紹介するHPがあり、同医院がごくかんたんに掲載されていた。 画一的な内容ではなく、あらたに患者の視点から同医院のHPを作り、その良さをもっと強調しようと院長に提案した。
事例対象期間
(執筆時点)
2002年3月 ~ (執筆 2003年1月)
事例分野 □経営戦略  □IT戦略  ■経営戦略+IT戦略
事例範囲 ■基礎調査
■経営戦略策定  ■戦略情報化企画  □情報化資源調達
□情報システム開発・テスト・導入  ■運用サービス・デリバリー
留意したこと  「患者の視点から同医院を見てどうか」という点を中心に据える。 一方、クリニック側には経営の考え方を取入れ、患者との双方向のコミュニケーションを高めるよう勧めた。
主な成果  HP完成、患者の反応も良好。患者数は増加傾向。臨時内科医師招請さらに得意分野の形成外科から美容外科で差別化へ。 改革に合わせ、HPの更新と改善を行い、さらに競争優位性確保のため経営改革を提案。
パッケージソフト情報 IBMホームページビルダーV6.5

【事例詳細】
1.事例クリニックの概要

(1)経営環境と院長の経営方針
組  織 医療法人社団 澄笛会
名  称 竹下医院
診療科目 内  科 外  科 形成外科 美容外科
(注)網掛け部分は2002年から。白地は2001年まで

 医療法人社団澄笛会 竹下医院は練馬区南大泉にあり、地域は緑の多いベッドタウンである。 同医院は現院長安藤由美子氏の父親である竹下氏が1958年に産婦人科として開業した。その後、竹下氏の晩年に内科等のクリニックとし、 現院長が、聖マリアンナ大学医学部卒業、医師国家試験合格を経て、経営地盤を引き継ぎ、以来10数年地域の医療機関として診療に当たっている。 日中は中高年者、主婦、子供と内科一般の他、リハビリや足腰のケアなどのため外科に通う高齢者が多い。5時以降は会社勤め帰りの患者も目立つ。
 院長は経営理念として「患者さん第一」の姿勢を貫いている。「医業一筋」、余計なことには手を出さない堅実経営である。  採算を無視した高価な医療機器への設備投資することもなかった。
院長は、診療では患者の話をていねいに最後まで聞くことにしている。 自分から話を打ち切ったり、せかしたりすることはない。患者に対する説明も分かりやすく、納得のいく治療をしてくれるという評判を得ている。 そのため、いつも患者が一杯であり繁盛している。昼休みも通常12:00~15:00のクリニックが多い中、午後の開始時間は14時からであり、 その上、午前、午後とも終了時間を過ぎてなお患者がたくさん待っている状態である。
 2000年に住宅と併設のクリニック全体の改築を行い、プライバシーの確保された診察室を中心に、 バリアフリーで床暖房された待合室など快適な医療空間を作りだしている。 地階には薬品保管庫やカルテ保管棚の他、つねに医療スタッフが、専門知識を身につけられるよう研修室を新設するなど診療体制の充実を図っている。

(2)スタッフ
人 員 医師(全般) 同(内科) 看護師 事務等
12人 安藤院長 関谷医師 正看 2名
準看 2名
事務長
受付 3名
清掃 2名
(注)網掛け部分は2002年10月から。白地はそれまで

 総員12名は個人診療所としては多い方であろう。しかし、診察患者数も多く、診察時間も長いので交代制を取っている。 何よりも「いいクリニックの条件としてクリニックの掃除が行き届いていて清潔な雰囲気があること」 (文藝春秋新年特別号「医療大特集」川端英孝JR東京総合病院外科医長)があげられており、スタッフに清掃2名が含まれていることも納得いく。

1)医師:患者数増加に対応、診療体制充実のため、2002年10月懸案の医師増員関谷氏、内科担当(専門分野:呼吸器)、週一回水曜日午前中勤務している。
2)看護師:正看護師2、准看護師2。准看護師で採用し、職務の傍ら、研修を積ませ、2002年正看護師の資格を取得、人材育成にも注力している。
3)事務職:事務長(男子)1名、女子3名。2000年に医院と住居の改築時、建築会社などとの折衝は男手が必要で現事務長を採用した。 同事務長は印刷会社に長年勤務した経験を持つ。民間企業出身だけに、医療にも経営感覚を取り入れ、正当な医療報酬を得、競争に負けない体制作りを志向している。 スタッフも民間企業並みに自己研鑚し、持ち場に応じた責任を果たすべきとの考えでTQCや、ホウレンソウ(報告、連絡、相談)の重要性も強調している。
4)スタッフは勤務時間帯による交代制をとっている。引き継ぎも円滑、チームワークもよい。 定着性が高く、受付は患者から「感じがよい」と好評である。

(3)診療科目
 内科、外科、形成外科および新たに美容外科。院長は形成外科認定医である。ケガやヤケドのあとの修復やホクロ除去などの診察、手術で、 多くの子供や女性の悩みを解決してきた。「女医さんならでは」の分野である。 また、他専門病院の紹介により、高度な技術を要するヒフ腫瘍の切除なども行っている。

2.ホ-ムページ開設

(1)医療業界のマーケティング
 医療業界は伝統的に聖職観が強く、「医は仁術。算術ではない」との考え方が尊ばれて来た。 医療法でも、「広告」は制約され、広告宣伝といえば駅の電車から見える看板、電柱にぶら下げる看板が主流であった。 今でも、こうした看板が患者獲得の「必要かつ十分条件」と考えている医師が多い。 これら看板の情報開示は「診療科目・時間」、「場所」など、「名刺」代わりであり、得意分野の症例や実績を示すことは考えられなかった。
 しかし、医療もサービス産業であり、サービスの良し悪しが顧客の満足度に影響する。 満足度に見合った正当な報酬を法の定める基準で受け取ることは恥ずべきことではない。 患者に得意な分野や実績を開示し、診療期間や費用(健保適用の有無)、自己管理の必要性と内容についての助言、支援に加え、患者の疑問や、 不安を解消することがいま何よりも求められている。 このため、「看板」などによる医療機関からの一方的な告知ではなく、患者のためにも、 患者と医療機関双方向のコミュニケーションを行う仕組みづくりが必要である。 患者と医師の対話の場はこれまで診療室の中だけであった。患者は痛みや悩みを抱えて医院に来るわけであるが、1人当たりの診察時間は短くなりがちであった。 医院が情報開示し、対話を促進するHPの意義は宣伝、広告ではなく、マーケティング・コミニュケーションといえよう。

(2)医療業界の環境変化と広告規制緩和
 医療法69条及び70条では広告は医療機関の名前、診療科目、所在地、電話番号、診療日・時間、入院設備の有無、 その他厚生労働大臣の定める事項など11項目に限定されている(医療法第5章医業、歯科医業または助産師の業務等の広告)。 しかし、患者が医療機関を選ぶ際に参考する情報は日本経済新聞の調査によると(a)「家族、知人」(82.8%)、(b)「かかりつけ医の紹介」(63.0%) と多い。「インターネット」と答えた患者は11.7%だが、30代では24.3%、20代では27.3%と若い世代ほど多く、 インターネットの役割は今後大きくなりそうだとされている。 また、医療機関に公開してもらいたい情報(3つまで選択)としては(a)カルテなど診療記録、(b)各医師の得意分野、(c)治療実績や症例数、(d)医療費、 (e)待ち時間・診療時間、(f) 過去の医療ミス、(g)第三者による評価、(h)紹介してもらえる医療機関名、(i)各医師の経歴、(j)経営状況、 (k)医師、看護師の数となっており(日本経済新聞2002年4月16日医療再生「病院の選択基準」)、医療機関を取り巻く国民・患者の意識は確実に 「診療の中味」にまで入り込んで来ている。このような環境変化の中で、2002年4月から医療機関の広告規制も緩和され、 条件付きながら医療機関ごとの手術件数などを広告できるようになった。
 こうした医療の世界をめぐる環境変化は著しく、患者も種々のメディア通じ、医療に関する情報に触れている。 意識の高い患者層による医療の選別がはじまる中で、広告の規制緩和により、 患者との双方向の意志疎通を図ることは将来に向けての一つのビジネスチャンスともいえる。 院長からの今回のHP作成依頼は患者数の多い当院の現状に安住せず、逆に潜在的な危機感を持ちながら、 時代の変化に対応し競争優位性を確保していく姿勢の表れと評価できる。

(3)竹下医院のHPの特徴と問題点
 HP上での医療機関紹介については、すでに全国規模ネットがあり、竹下医院もそこに掲載されている。 ネットの目的は医療機関の存在を認知させるところにあり、内容は「診療科目」、「時間」、「地図」の他に医師の写真とともに特色を紹介している。 数が多いので、医療機関全て同一のフォーマットにより上記項目をリスト化、内容も簡潔である。 ここでは当該医療機関が自分自身のHPを別途持つ前提で考えられており、リストにはそのURL記載欄も設けられている。
 院長は自身だけではなくスタッフあっての医院経営と考えているようで、私との話し合いの結果、 スタッフを含め医院全体がわかる独自のHPを持ちたいと作成を依頼された。 私は「患者兼コンサルタント」として、患者の視点に立ち、医院のよい点を紹介する他、他の患者の意見、医院の経営改革につながるポイントを掴むこととした。 このため同医院の院長、事務長と同医院の現状、問題点、将来のあり方を議論し、その結果をHPの中味に反映させた。つぎの点が特徴である。

1)トップページは当院の写真と例の医療法にある名前、診療項目、時間、場所などをリスト化、すぐ「患者の見た竹下医院」に続けた。 通常、企業のHPならば、冒頭に代表取締役が挨拶や経営方針を述べるわけで、クリニックの場合は院長が登場するところであるが、 まず、患者の視点から病院の特色を述べる構成とした。
2)つぎに「私もひとこと ちょっと チャットchotto chat」の欄で、患者が設備や医師、受付について自由に発言したり、 調剤薬局が医師に対するコメントをする場を提供、患者を中心に薬局などのサポーターを配置、スタッフ全員の職場写真を掲載した。
3)最後に院長が「患者さんの声をよく聞いて、研鑚を積んで参りたいと思います。」とあいさつを掲載した。
4)当院の診療科目の特色として、院長が形成外科認定医であり、ケガやヤケドのあとの修復やホクロの除去の治療を行っていることを強調した。

 HPへの患者などからの評判は「よくできている」、「分かりやすい」など好評であり、一応安堵した。 また、仕事をするスタッフの写真を掲載したことから院長を中心に求心力も高まった感じを受ける。 一方、つぎの通り、私との対話の趣旨を反映する形で、医院としての経営改革をいろいろ進めてくれたので、さらにリニューアルの必要が出てきた。

3.経営改革の進捗とホームページリニューアル

 当医院の経営改革はつぎの通り進んだ。私はこれらの経営改革の進捗をHPに反映すべく、2002年末~'03年1月、HPのリニューアルを実施。 その際、使用している写真のアップデートを同時に実施した。その内容は現在のHPをご参照。修正事項は「NEWS」と明示してある。

(1)医療法人社団への組織替え
 従来、個人診療所の形態であったが、2002年10月に医療法人社団澄笛会 竹下医院に改組し、認可を取得し、 これにより経営基盤の安定と拡充を目指す体制となった。

(2)内科医師の応援
 前述通り、10月から順天堂大学から若手の内科医師、関谷氏の応援を受けている。

(3)美容外科のスタート
 上記通り、当クリニックの特徴的な診療科目としては形成外科があるが、これをもとに2002年10月から美容外科をスタートさせた。 「シミ」、「そばかす」、「ニキビ」や脱毛など女性の関心の高い分野や肌のトラブルのカウンセリングに応じているほか、ケミカルピーリング、 クリームプログラムによるピーリングケアシステム等の治療を行っている。通院治療と医師の指導のもと自宅で治療するホームケアシステムがある。 美容外科の開始のため、医療用レーザーを購入し、シミ取りなどに使用し、治療の効果を上げている。
 本来、美容外科というのは形成外科から独立したものであり、皮膚縫合術や、組織移植術などのキチンとした形成外科のトレーニングを積んだ医師が、 美容外科医となるべきと考えられる。しかし、実際は広告をひんぱんに打って、女性心理をかき立て、 不完全な手術により医療被害を生じさせるケースが後を絶たない。美容医療については疾病の治療ではないし、原則、医療保険の対象外であるから、 内科や外科が3か月以上の研修が義務づけられているのと異なり、他の診療科目から医師が流れ込んでいるのが実情である。 また、エステなど異業種からの進出も活発である。
 当クリニック院長は聖マリアンナ大学で形成外科の認定を受け、臨床経験を積んだ上で、美容外科を行うものである。

 上記改革はこれまでの経営の流れの中で実行されたものが多いが、私の助言や支援を真摯に受け取ってくれた点に勇気づけられた。 一方、美容外科の開始により、この関係の患者の来院が増えているが、治療の方法・効果の相談や医療保険が原則きかないため、 費用の質問などで診療時間がどうしても長引く。このため、先行き患者待ち時間が悪化する不安も兆してきた。 それで、将来にわたり競争優位性を確保するためにはこの際、総合的に戦略をレビューし、重点項目を定めることが必要と思料された。 院長、事務長との打合せを重ねた結果、つぎの点を今後の経営営改革の新たな課題として提言し、2003年度内を実現目標に検討することとした。

4.さらなる経営改革の方向と新たな検討課題

 下記課題はいずれも単独の問題ではなく、相互に絡み合っており、適確な経営判断を必要とする。 そして改革がある程度軌道に乗れば、HPを更新し、成果を取り込んでいくことが、患者とのつながりを深め、当医院のイメージアップにも寄与する。

(1)IT化の促進
 医療業界におけるIT化の進行は今後さらにテンポが速まる。その内容は多様であるが、プライマリーケア(初期医療)を担うクリニックの世界を取っても、 たとえば電子カルテや遠隔診断は近い将来の課題となろう。たとえば、病診連携(病院と診療所の連携)を進め、 より高度の診療ニーズに応えるためにはデータのデジタル送信による交換が必要。また最適診療への情報共有を目指す動きが専門病院、有力病院、大学、 医師会の連携により進められようとしている。当院でもIT化の重要性は認識している。 また、院長の行っている美容外科でも治療過程をデジタルカメラで撮影し、その効果に患者の納得を得ながら、さらに治療を進めるのに役に立っている。 携帯電話でメールをしている事務職もいるが、日常の診療業務が多忙を極めており、診療サービス向上のために医院全体のIT成熟度を高める体制は未確立。 具体的にまず取り組むべき、身近な方策としてつぎの3点を提案する。いずれもコスト的には軽微で、基本的なものに絞っている。 しかし、当院におけるIT化の第一歩としては重要である。

1)電子メールの使用
 現在は院長がノートパソコンで電子メールを使用している。このアドレスをHPに掲載し、患者からの質問、問合せに対処することとした。 現在の電子メールの普及はいうまでもない。とくに当院では美容外科の対象となる若い女性層においてはほとんどがメールを使用している状況である。 上述通り、美容外科では多くの医療被害問題があり、また医療保険が原則きかない。したがって、受診希望者は信頼性や費用負担に不安を持っているが、 事柄の性質上プライバシーに敏感ゆえ、いきなり来院することにためらいがあろう。メールで問合せを受ければ適宜ガイダンスを行うことにより、来院を促進し、 すぐ本題に入れる利点がある。これは程度の差はあれ、内科などの他の診療科にもいえるので、当院の「患者待ち時間の短縮」を考えても十分メリットがあろう。 問合せにメールで答えても、実際の診療前に治療費は提示せず、医療収入が減ることにはつながらない。
2)事務部門にパソコンを入れる
 現在はレセプト処理用のスタンドアロンのコンピュータ(リース)のみである。院長はこのリースの終了を待たずに、 エクセルやワードなど統合ソフトを入れたパソコンへのリースへの切り替えを検討する意向である。 導入にともなうスタッフへのパソコン教育はリース会社がインストラクターを派遣してくれるとのことであり、まずリテラシ-を高める必要がある。 電子メールも先行き院長の個人用と診療業務用を分けてアドレスを取得するのが望ましい。
3)クリニック内のLAN
 地階には事務長のデスクがあり、ここにもデスクトップ型のパソコンを置くことが望ましい。 コンピュータを活用し、いろいろな経営数字把握や患者データベース作成充実をすることができるようになれば、一層医療の質向上と経営の効率化に役立つ。 そしてとりあえず院長室と3か所を情報共有のためLANで結ぶ必要性がでてくる。また、将来は習熟度に応じさらにパソコンを増設していく。 これらのIT化は企業のIT化同様、トップ、つまり院長、事務長が率先して行うことがスムーズにいくカギである。

(2)美容外科、形成外科への重点取組み
 当医院の診療科目を商品に例えれば、形成外科や美容外科はマーケティングでいう「商品差別化」である。 当医院の将来を考えると、他のクリニックが簡単に出来ないサービスを持っておくことは戦略的に必要である。 とりわけ、昨年開始した美容外科を今後伸ばしていくことを重点施策として考えたい。このためには治療を受けた患者の評判、口コミに頼るだけだけではなく、 自ら情報発信をしていくことが必要である。竹下医院のHPに症例や実績をアップし、 診療圏を広げ中距離の周辺地域からの患者ニーズに応ずる体制を目指すこととしたい。このためデータを収集、加工中である。 また、美容外科について当院でのFAQを掲載し、来院前に患者にある程度予備知識を持ってもらい、診療時間の短縮化を無理なく図ることも検討する。 さらに、アクセス数の増加も必要であり、そのためにはリニューアルを適時ひんぱんに行う他、他サイトとのリンクなども行いネットワーク性を高める。

(3)医師の増員
 現在、内科の応援のため、順天堂大学から来ている関谷医師は4月から都合がつかない見込みにて、院長としてはその交代を探す意向のようである。 上記のIT化も実現には時間が必要であり、次項(4)も考慮に入れると、現在の週1回午前中では不足であり、 内科医の応援診療回数を増やしていくことが強く望まれる。

(4)休憩時間の延長
 当院の診療時間で昼休みは12:00~14:00となっているが、他のクリニックでは15:00までが多い。 さらに患者数が多く、昼休み時間に食い込んで来るので、実際の休憩時間はもっと少ない。火曜日は訪問診療日に当て、金曜日午後は手術日(予約)である。 院長は「この時間で10年以上診察してきたので」といいつつも、昼休みの延長も検討課題と考えている。 院長は企業でいえば経営者、技術者であり、家庭では主婦、母親の一人4役をこなしている。 火、金曜日午後が外来の数に左右されず、マイペースで診療出来るとしても過重労働である。 このため、もし院長として、医療の質をさらに上げるとか、経営改革に取り組む時間が不足するようであれば将来のため得策ではない。
 たとえば、昼休みを12:00~15:00とし、院長とスタッフは患者のいないところで、14:30(または14:15)から 「ITの自己啓発に取り組む」、「メールをチェックし返事を書く」、「午後の準備をする」、「安全などいろいろな研修、自己学習に当てる」 など検討してはどうか。クリニックによっては昼休みに「読書手当」を支給して、スタッフに学習を奨励しているところもある。

(5)診療待ち時間の改善
 当医院の患者数が最近も増加しており、そのため待ち時間が長くなっている。ある調査では医療機関の満足度調査で、 不満として「待ち時間が長い」をあげた方が、「医療費」や「情報公開度」を上回って、トップであった。 「待ち時間」に関しては一般的に国公立の大病院が長いが、診療所にとってこの問題はより重要。 当院として患者1人当たりの診療時間を犠牲にせず、待ち時間を短縮することは短期的には上記(3)医師の増員、 中長期的には(1)IT化の促進による工夫が考えられる(一般的には医療設備機器導入、スタッフの増員も待ち時間改善の要素)。 (4)休憩時間の延長と診療待ち時間の改善とはトレード・オフ=あっち立てればこっち立たずの関係にある。 この際ほかの項目も含め、一度、患者満足度調査を行い、対策を講ずる時期に来ているといえよう。

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