経営改革・IT化事例

経営改革・IT化事例
【事例概要】

1.事例報告者
事例題名 中小企業によるASP実証・実験と活用(J009)
事例報告者 近藤 正雄 ITC認定番号 0003262001C
事例キーワード 〔業種〕サービス業、製造業、商店街
〔業務〕販売促進業務、会計管理支援
〔IT〕ASP活用による情報発信とLAN構築

2.事例企業概要
事例企業・団体名 岸和田IT研究会 企業概要調査時点 2002年12月
URL  
代表者 近藤 正雄 業種・業態 サービス業、製造業、商店街
創業   会社設立 平成13年10月
資本金   年商   従業員数 (会員)12社
本社所在地 大阪府岸和田市・岸和田商工会議所内
事業所 (会員)岸和田市内・会社・団体:12社
業界特性  企業のIT化は時代の趨勢だが、中小企業にとっては自社専用のアプリケーション開発ソフトは高価で装備しにくい。 それに比べてパッケージされたASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)ソフトは安価で手軽であり管理部門別に選択できるメリットもあり、 多くの企業が作成、販売している。
競合他社 IT化への中小企業中心の実証・実験グループによる試みは、今回の大阪府の例が全国で初めてであった。
リード文  中小企業にとって経営に役立つ安価で、操作の楽なITソフトASPの導入実証・実験をグループで行った。

3.コーディネート内容概略
関与経緯  2001年秋に大阪府主催で結成された「中小企業情報化推進協議会」でのASPソフトの実証・実験に、 岸和田商工会議所の後援で「岸和田IT研究会」が結成され、 その際、大阪泉南地域中小企業支援センターのITCの立場でまとめ役としてその進行・助言・支援にあたった。
事例対象期間
(執筆時点)
2001年10月 ~ 2002年12月(2003年1月)
事例分野 □経営戦略  □IT戦略  ■経営戦略+IT戦略
事例範囲 □基礎調査
□経営戦略策定  ■戦略情報化企画  □情報化資源調達
■情報システム開発・テスト・導入  □運用サービス・デリバリー
留意したこと 各社毎の必要とするASPソフトの選択
ASPソフトの導入・活用なので事例会社向けのカスタマイズの程度とその後の運用のし易さ
主な成果 ASP5ソフトの実験運用と継続利用は4ソフト
(ホームページ作成と会計管理及びファックスによるHPへの公告掲載)
パッケージソフト情報 ASPソフト:N社「IT基本パック」・「らくらくオタックス」
        R社「樂着会計プロβ版」 Z社「3Dステーション」

【事例詳細】
1.研究会発足経過
 平成13年秋に、大阪府と大阪商工会議所との共催で「中小企業情報化推進協議会」が結成され多くのASP1)ソフトの実証・実験が行われることになった。 府内各商工会議所に連絡があり、岸和田商工会議所もそれに参加することにきまり、 大阪泉南地域中小企業支援センターのITコーデイネータであった筆者と岸和田商工会議所指導員とが中心となって「岸和田IT研究会」を立ち上げ、 中小企業のIT化を推進することになった。当初は支援センターでIT化を支援中だった8社程度を選び、メンバーになってもらった(表1:最終12社に増加)。

表1 <主要メンバー会社一欄表>
会社名 業務内容
株式会社 岸煉 製造業・サービス業(健康センター)
(有)コスモス総研 経営コンサルタント
平松会計事務所 会計事務所
すみれ フラワーアレンジメント資材販売
岸和田駅前商業振興組合 振興組合(商店街)
ベクタービュー サービス業(HP作成、保守、ソフト作成)
(有)ゼロワンビュー サービス業(HP作成、保守、ソフト作成、3Dステーション)
米蔵ヒラマツ 小売業(米穀販売)

2.研究会でのASP導入の経過
 まず研究会メンバーの必要とするソフトを各社ごとに検討した。その結果は下記の通りである。(表2)

表2 <必要ソフトの検討結果>
活用したいソフト 使用したい会社・団体
ホームページ作成ソフト 岸煉、コスモス総研
メール配信ソフト 岸煉
会計管理 岸煉、平松会計事務所、すみれ、ベクタービュー、米蔵ヒラマツ
在庫他管理業務 すみれ、米蔵ヒラマツ

 以上の希望に対して、それらにマッチしたASPソフトがあるのかと思っていたところ、 推進協議会主催のASP紹介展が10月に催され、メンバ-共々それに参加した。 当日はITベンダー3)各社約30社の参加展示ブースに於いて、各々関心のあるソフトの説明を聞き、資料を持ち帰り研究会で検討した。
 協議会参加の100を超えるASPソフトの中から検討の結果、次のASPソフトを共同で選び、合同説明会を商工会議所で10月25日に行った。
  ⅰ. ホームページ作成・社内LANソフト :N社 「IT基本パック」「らくらくオタッス」
  ⅱ. 大量メール通信ソフト :O社 「MMS」
  ⅲ. 顧客管理とデータベース構築ソフト :S社 「S-KIT」
  ⅳ. 財務管理ソフト : I 社 「楽着会計プロβ版」
  説明会では、各々のベンダー会社がそのソフトの特徴説明及びデモンストレーションを実施し、操作の仕方や価格の説明を行った。 中には利用価格が大企業向けの値段で到底中小企業が利用できないものもあった。その後、参加各社毎に利用したいソフトを決め、それぞれ導入・実験に入った。 そのうち継続利用されている事例を数例紹介し、最後にASP活用についてのまとめと今後の展望について述べる。

3.各社別ASP導入と経過

3-1.(株)岸煉の事例(http://www.liberty-1126.com/)

(1)会社概況
 岸和田では歴史のある会社で、明治20年創業以来煉瓦製造業が中心であったが、創立100周年を記念する建物建設のため、 ボーリング調査をしていたところ温泉脈を掘り当て、 それを契機に経営多角化の一環(他に不動産部など有り)として総合温泉ランドを「泉州健康センタークオアルトリバテイー」の名称で営んできた。
図1 リバティ全景 図2 リバティ天然温泉

 当初は大阪湾近くで温泉が湧いたとのニュース性で大いに賑わったが、近年貝塚市内の日帰り温泉センター「青児(せちご)の湯」や、 岸和田の牛滝川上流の「いよやかの里」等の競合相手も増え、来客数も頭打ちの傾向となった。その打開策として、 従来の広告宣伝方法からもっと効果的な広域にも有効な宣伝方法の採用、それと同時に社内の4事業部の連絡網の確立や迅速化を検討しているところであった。

(2)経営課題と導入を検討したASP
 以上の状況から、同社の経営的な課題としては
  ・広域にも有効な広告宣伝方法
  ・顧客管理と顧客との相互連絡網の樹立
  ・社内4事業部間の連絡網確立と情報共有化
  ・財務管理の効率化
などが挙げられ、それらの課題解決に苦心していた時期でもあったのでタイミングよく今回のIT研究会の呼びかけに参加してもらうことが出来た。
 以上の課題解決として検討の結果、次のASPソフトを共同で選んだ。
 ⅰ.ホームページ作成・社内LANソフト
 ⅱ.大量メール通信ソフト
 ⅲ.財務管理ソフト

(3)ソフト選定と導入結果
 上記のⅰに関しては、N社の「IT基本パック」でホームページ(HP)容量50MB、メール通信容量50MBでHPを作成し、 独自ドメインを取得することにした。また、ⅱについてはO社など2-3社から説明をうけたが、月別経費が大企業なみで第2段階で検討することとなった。 ⅲについては、会計事務所との同時相互連絡のできるR社の「樂着会計プロβ版」を会計事務所と合同で実験することになった。
 結果的には、ⅰについてはそのソフトを採用しHPを作成、社内LANも同時に構築できた。ⅲは他の研究会会社と共に講習を受けたが、 会計科目入力など不慣れな点がありこれもⅱと共に第2段階で行うことになった。 効果については、新HPに臨場感ある写真や360度回転する「3Dステーション」ソフトを導入したせいか、アクセス数(9ヶ月で6万件)も多くなり、 遠隔地からの問い合わせや顧客も増加し顧客データベースの蓄積もできてくるなど効果は認められた。

(4)今後の課題
 まずHPの更新、維持、メールによる問い合わせへの迅速なレスポンス・情報伝達などで、その効果は大いに違ってくるのでその辺が今後の課題である。 将来の総合的な管理のIT化にもASPソフトは廉価な維持費で済むものの、従来の自社のシステムとのカスタマイズの程度とその費用の検討及び、 社員のITの運用・維持技術の早期習得が課題と考えられる。 さらに次期の課題として顧客管理と「大量メール配信網」確立及び、会計管理のIT化等が残っている。

3-2.(有)コスモス総研の事例(http://www.cosmos-sohken.com/)

(1)会社概況
 約2年前に、中小企業診断士の現社長が永年の経験と知識を地域振興に役立てるために創業した経営コンサルタント会社であり、「経営支援」、「IT化支援」、 さらに、「ISO導入構築」コンサル等を業務内容としている。 今回はITコーデイネータとして、IT研究会のまとめ役と同時に自社のIT化の実証・実験も行う目的で参加した。

(2)経営課題と導入を検討したASP
 同社は創業間もないため、会社PRと経営分析のスピードアップの為に
 ・HPの作成による業務内容PR
 ・メール機能による顧客へのコンサルとしての応答の迅速化
 ・財務分析・経営分析ソフト
などが運営上必要であり課題でもあった。

(3)ソフト選定と導入結果
 以上の必要性からソフトの選定を行い、HPの容量が50MB、メール通信容量が50MBのN社の「IT基本パック」を選んだ。 パックに無料でついている3ページのHPの作成を依頼し更新は自社で行うことにし、メール配信網もセットした。 実験後もこのASPを導入・契約し、その後HPを本人なりに更新し、ページも増加させ改良を図ったためか、 アクセスも増え商談に活用が出来てきているので、導入効果があったと言える。 ただ、魅力あるHPにするためには、常に新しいニュースで更新を行う必要があるが、 定期的なリニューアルや、トピックスの選択更新などが、今後の課題といえる。
 また財務分析、経営分析ソフトについては必要であったが、ASPは毎月継続して使用料を払わなければならないため買取の市販ソフトと較べ割高となり、 この種類のASPの導入は行わなかった。

(4)今後の課題
 HPに関しては、各プロバイダーが最近は無料で50~100MB程度の容量を提供しているため、 今回の「IT基本パック」のHP用50MBは初期段階では良いが、商業用にカタログで多くの画像を入れるにはやや不足ぎみである。 さらに自身で維持・更新ができる場合は、容量に余裕のあるものへの乗換えが必要になると思われる。 またメールによる簡易経営支援も検討しているが、配信もパックの50MBでは数十通の場合はよいが、 100通以上になると別の大量配信ソフトを選ぶ必要があることが判った。 また、財務分析ソフトなどもASPとしてあるが、更新のあまり必要で無いソフトについては安くつく「買取」か、 毎月継続して費用が発生する「ASP」をとるかの「費用と効果」の比較検討も今後の課題となった。

3-3.平松会計事務所の事例

(1)会社概況
 同社も市内では古くからの信用ある会社で商工会議所の役員でもあり、多くのクライアントをもっている会計事務所である。 従来は自社独自の会計ソフト(DOS/V機専用)を持っており、それで今まで会社経理代行と税務会計・税務申告業務を行っていた。 その後、パソコンの機能が発達し、市販ソフトが多く出まわってきたため、良いソフトを探していたところであったので、 今回の実験に参加してもらうことになった。

(2)経営課題と導入を検討したASP
 課題としては、次のものがあげられる。

図3 平松会計事務所
帳面づけが市販ソフトで簡単にできるようになってきたため、従来ほど会計士の手助けを必要としなくなってきたことと、 それらによる顧客ばなれの懸念
従来から使用のソフトがDOS/V専用に開発されたもので、近年は旧式バージョンとなり、最近のXPとの整合性や、 使用中の新しいソフトに対応しにくくなってきたこと
顧客の市販購入ソフトとの対応性・互換性のあるソフトの必要性
簡単に入力や科目変更ができること
以上の課題解決ができるソフトを、日ごろから探していたとのことであった。

(3)ソフト選定と導入結果
 ASPの会計管理ソフトも多くあったが、プロの会計事務所用は2~3社のみで少なく、選定が限定された。 しかしその中にI社のプロの会計士用に開発したASPのベータ版の「楽着会計」があり、とりあえず完成までテストの意味もあって、 実験をスタートすることになった。このソフトのテストには、インターネットで送信して双方が同時による記帳確認作業テストも加わり、 4社ほど同時にI社の講習を数回受講した。 筆者も受講したが、科目設定入力に時間がかかり、普通の会社にはやや詳しすぎる内容であった。 しかしB/S、P/Lのみならず財務分析のソフトへの展開も可能であり広い展開性に富んでいるとの説明があった。 結果的には会計士事務所を持たない会社1社が会計管理に利用することになった。
 この実験では、会計事務所と会員会社の双方がインターネットで資料送付後、両者が同時に画面をみて、 電話でやりとり(双方向性)でき修正指導などが受けることができるメリットがあるため、今後の活用結果が楽しみである。

(4)今後の課題
 実験開始後、まず科目入力にかなりの労力がいり、今まで会計士任せで記帳事務をやっていなかった会社では入力がうまくゆかないことが判った。 さらに毎月の利用料が買い取りソフトに比べて割高であることなどがマイナスとしてあげられ、 反対に会計法・税法などの改訂・更新に合わせてソフトも更新されるため、改訂時には役に立つことなどが判明した。 また今後の課題としては、科目入力をもっと簡単にできるようにするか、会計士などが代行入力するなどで初期導入をし易くする必要が残った。 同事務所としては、継続的な費用の発生するASPと市販の優秀な買取ソフトとの費用比較もあり、全面的な導入には躊躇している現状である。

3-4.岸和田駅前商店街振興組合の事例(http://www.kishiwadasyoutengai.com)

(1)会社概況
 岸和田駅前商店街は市内でも最も古い歴史を持ち駅前の顔としての役割をはたしてきた。 現在64の店舗構成だが、近年、海岸付近の「かんかん場」に大型店の進出をみて顧客の流れが変わり、 今まで以上に宣伝・広告の必要が生じて来ていた。今までに振興組合の中にIT委員会を作りHPを運用し、それで各種の情報発信はしていたが、 もっと効果的なものがないかと検討していた時期でもあったので、今回の実証・実験に参加してもらうことになった。 今回は時間的余裕がなくて、RFP2)やアクションプランなども各社ごとに作成できぬままに実験に入ったが、 継続使用の場合は上記計画や情報化実行計画などが必要となる。
図4 岸和田駅前商店街看板 図5 オタックス

(2)経営課題と導入を検討したASP
 組合の経営課題としては、商店街のさらなる魅力づけと買い物客の増加を図ることであり、 従来の広告宣伝にさらにプラスになるHPを利用した宣伝強化を行うことが検討されていた。 そのなかには、HPに週間や日替わり情報及びタイムサービスなどがリアルタイムに毎日、何回でもHPに反映でき、 チラシ広告にない機能を持たせることが出来ないかなどの意見もあった。 その折に、N社が九州福岡の「美野島商店街:www.minochan.com」 が日本で初めてのカラーファックスにより各店からHPへ手書きによる宣伝文の挿入・更新が図れるASPソフトを活用していることを聞き、 そのソフトの導入実験に参加することになった。

(3)ソフト選定と導入結果
 検討の結果、上記のN社の「らくらくオタックス」を選び、カラーファックスを購入し、その後仕様などの説明を受け、操作練習をした後実験に入った。 実験には希望する9店と商店街組合とが参加し、特に週間での売り出しものや日替わりもの、 時間による特売ものなどを中心にHPでの広告の更新・宣伝をはかった。その結果、週間もの、新入荷ものなどは反応がみられたが、 時間帯勝負(夕方など)の鮮魚などの特売ものはHPを見る人のタイミングもあり効果はさほどなく、商品選定に工夫が必要なことが判った。 (ちなみに「美野島商店街」では幼稚園なども参加し、毎日のように更新され効果が生まれている)。 もっとも、手軽な「手書きによる広告・宣伝」は各店のキャラクターが良く出るので、実験後もASP導入をして継続利用を行っている。

(4)今後の課題
 多くの業種の違う商店の集合体たる「商店街」の活性化には、地域住民に愛されるのはもちろんのこと、 かなり遠方からも来街してもらえるような魅力付けが必要であり、当商店街も今までも工夫をかさねてきた。今後の商店街を取り巻く経営課題としては
 ・大型スーパー店やモール街との競合
 ・モータリゼーションによる購買様式の変化
などへの対応があげられる。それらの課題が
 ・IT化でどこまで解決できるのか
 ・商店街としてHPでの吸引力はどの程度まであるのか
 ・HPは従来のチラシなどの広告・宣伝媒体を凌駕しえるのか
 ・商店街のHPと携帯電話とのリンクの広告は今後有効かどうか
 ・リアルタイムでの広告はどの媒体、どの業種が有利なのか
など検討すべき課題は山ほどあり、当商店街も例外ではない。またASPの「らくらくオタックス」の実験はしたものの、 使いこなすにはHP広告更新をもっとやり易くする方法や、利用する業種及び曜日と時間帯やPR内容を再検討する必要があるとの結論に達した。

4.ASP活用による各社効果のまとめ

 以上のASPソフトの実証・実験の導入ソフト及び効果などを下記にまとめてみた。
表3 <導入ソフトと効果>
業種(社名)・業務名 実験ASP その効果と結果 継続採用
健康センター業
(岸煉)
・HP改善
・会計業務
・メール配信
IT基本パック 独自ドメイン取得,HP革新,社内LAN構築ができた 採用
3Dステーション HPに動画挿入・効果有り 採用
楽着会計β版 テストしたが次期に検討 次回検討
大量配信ソフト データベース構築後に検討 次回検討
コンサル業
(コスモス総研)
・HP作成
IT基本パック 独自ドメイン取得、HP作成 採用
会計事務所,他
(平松会計事務所,岸煉,
  米倉ヒラマツ,すみれ)
・経理会計業務
楽着会計β版 ・双方向性で効果あり(1社)
・他社はクライアント及び,社内体制の関係で検討中
・1社採用
・他社は検討中
商店街
(岸和田駅前商店組合)
・広告宣伝業務
らくらくオタックス ・手書きによる広告でPR効果有り
・広告内容の再検討
採用

 以上の結果のまとめとして次のような点がASPの効果・問題点としてあげられる。
表4 <ASPの効果・問題点>
効   果(長 所) 会社名
ASPソフトは比較的に利用料が安く、中小企業が採用しやすい 各社
各分野のソフトがあり、企業が随時に必要な分野のソフトを選べ、導入できる 各社
HPとメール配信のパッケージソフトは採用されやすい

岸煉,
コスモス総研
買い取りソフト品にくらべて、更新情報が楽に得られる 各社
手書きなどの情報が簡単にHPにUPできて便利

振興組合
問 題 点(短 所) 会社名
継続使用料が多くなると、買取ソフトとの費用比較が生じ採用されにくくなる 平松会計他
自社事情に合わせカスタマイズが必要な会社には、費用が余計にかかる 岸煉
各分野でばらばらのソフトを導入してゆくと、整合性や将来のシステムのインテグレーション(統合)の妨げになる 岸煉
入力のわずらわしいソフトは、採用が敬遠される 米倉ヒラマツ他
専用システムと違い、導入・運用フェーズでの維持・運用のテスト期間が短く、運用技術習得が短期間で困難となる 各社

5.今後の課題と展望

 ASPソフトは今回の実証・実験で、会社のニーズにマッチした適切なソフト選定が行われれば有効であることが判明した。 本来は事前の手順として各社の経営戦略策定、現行のシステムの分析・評価が行われた後、個別アプリケーションプ開発か、 ERP(基幹業務統合パッケージ)4)か、またはASP利用かなどを総合的に判断してから導入されるべきものである。 今回は比較的に時間に余裕のない実験計画だったので、アクションプラン作成や、 各社の必要なソフトを特にRFP(提案要請)も発行せずに与えられた条件で実験したが、今後は導入時の課題として次のような点を留意すべきである。
表5 <ASP導入時の留意点>
導入時の留意点 今回の例
サービスメニュー、カスタマイズの可否の確認 部分カスタマイズでも高くついた(岸煉)
複数のASP利用の場合、データ連携が検討されているか ほとんどされていない(岸煉)
ネットワークのセキュリテイの確認 自社のみでの導入は高価なものにつく(平松会計)
サーバー能力、アクセス回線能力などの確認 中小ASP会社だと不安である
サービス継続性におけるリスク管理・ヘルプ体制の確認 同上(各社)
操作マニュアルの完備と導入指導の徹底 不充分なASP会社もあり苦労した(2-3社)

 以上の今回の実験・研究と活用について述べてきたが、将来の展望としては、 個別ASP導入各社のシステム統合をしやすくするための方策を、ASP業界全体で研究・開発してもらえたらありがたいと思った。 現在の各社ばらばらの各分野のASPを、1社又は共有化できる統一基準で総合的に開発・統合できれば、 同一会社及び各社の分野別ASPパーツの順次導入でも、最後にはERPと同様な統合パッケージができるようになる。 そうすれば過大な費用をかけずとも自社専用の統合システムが可能となり、中小企業を問わず各企業とも大いに採用し易くなると思われる。 今回の実験・研究を通じてASPは中小企業にとっては有用であり、適切なソフトが広く望まれていることが判ったので、 今後とも各社及び業界の研究・開発しだいで、ASPの将来には大きな展望と可能性が開けると信じている。


【用語解説】
  用語 解説
ASP Application Service Provider インターネットを使って、月決めなどの利用料を払ってアプリケーションを利用するシステムのこと
RFP Request for Proposal 調達の目的を達する為、調達対象に情報化資源に対する提案を求め、最適な調達先を決定するための「提案要請」のこと
ITベンダー IT vender 各ソフトのシステム開発やパッケージソフトを提供でき、システム構築やその導入、運用、維持管理のできる会社のこと(多くの系統がある)
ERP Enterprise Resource Planning 企業の基幹業務の機能をパッケージ化したアプリケーションソフトのこと

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