東北リコー事例コメント

IT Coordinators Association
事例コメント
東北リコー(株) 作成者:(株)SRA
     岩佐 修二
ITC認定番号:0002032001C
作成年月日:2002年4月15日
<概要>
この度の事例報告では汎用機からパソコンへの転換を全社員の団結で図り、間接部門の生産性を大幅に改善された経緯が報告されている。市況は売上志向から利益志向へ、時代が著しく変化しているが同社が取り組まれた成果は多くの示唆を我々に伝えている。

なお、同取組みは94年より開始しIT/S(Information Technology/System)と呼ばれているが、社内的にパソコンを中心に仕事を進めていくことを称している。

<決算数値のモニタリング>
今回の事例報告は平成11年7月に行われたが、筆者は、同社の決算報告からIT化の成果を検証した。


売上高は平成11年3月を(100)として平成12年3月が(111)、平成13年3月が(120)、また経常利益についても平成12年3月が(122)、平成13年3月が(151)となっている。ここ数年市況の低迷のなかで、同社の卓越した業績は評価に値すると考えられる。この数値の向上は、IT/Sの導入により生産性が向上し、経常利益の増加に結びついた一因だと推測される。同社の決算報告書にも明記されているように、IT/Sの導入を契機に企業体質の改善に継続して取組まれている結果と考えられる。

以下は、事例報告書内容をITCのプロセスに従ってまとめてみた。
まとめることにより改めて方針と手順が認識できた。その方針と手順を確実に実行されたことが今回のシステム化の成果(=低コスト体質づくり)に結びついていると考えられる。

<SWOT分析>
同社の経営環境に関して、事例報告の情報からSWOT分析を試みた結果を以下に示す。


<新ドメインとCSF(需要成功要因)>
次に、報告事例から新ドメインとして顧客、ニース、コンピタンスを整理してみた。事例報告以上の内容を知ることはできないが、明らかにコアコンピタンスは情報の電子化「一貫性」、組織的なコンカレントな仕事の進め方「統合化」であると筆者は結論づけたが、注目できる内容と思われる。さらに、同社のCSF(重要成功要因)は"IT/Sを使って間接部門の生産性を向上と低コスト体制づくり"であることから、先のSWOT分析の結果より間接部門の生産性が低い(W)要因を強み(S)、機会(O)の要因で打消すことができたことは同社の組織的な強みであると推定される。


<CSFを具体化するためのマネジメント要件>
先のCSFを具体化するマネジメント要件を事例報告より、抽出した結果は以下のとおりである。全員参加、ITキーマン、お金をかけないといったキーワードが明確になった。

  CSF(重要成功要因)
IT/Sを使って間接部門の生産性を向上と低コスト体質づくり
間接部門は全員参加
(会社の構造改革に取り組む)・(業務改革)
取り組む期間は2年間
 
いちばん仕事を知っている人たちが、自分たちでやれるようにする
ITキーマンという推進体制。ITキーマン91人が中心になって各部門の人々にIT技術を教える)
お金をかけない
(パソコンの一部とLAN設置も内製化)
トップ自らが推進する
(最初にトップにパソコンを導入)

<成果のモニタリング>
決算数値については、前述のとおりであるが、定性的な効果(モニタリング)を事例報告内容から拾い出すと次のようにまとめることができる。

  売上は伸びても間接部門の人数は増加しない
  間接業務の円滑化、間接部門の3分の1の人材を新規事業や戦略的業務に転換
  情報の価値を高めると利益に繋がることを実感
  社員に期待する能力が明確になる、また管理者の役割(提案力と効果を図る)を再確認

IT/Sの導入が間接部門の人数増加を押さえられたことは評価できる。実は、情報の価値を高めることが利益に結びつくあるいは社員に期待する能力が明確になることに気づいたことが最も評価される点だと思われる。この気づきこそが、同社のマネジメント思想としてそれ以後の継続的な収益の源泉になっていることを、この事例報告は我々に示唆していると受け止めた。私自身のITCとしての今後の活動に生かしたいところである。

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