レンタルのニッケン事例コメント

IT Coordinators Association
事例コメント
(株)レンタルのニッケン 作成者:富士通(株)
     浜口 和己
ITC認定番号:0005032001C
作成年月日:2002年6月7日
[業界の状況]
 建設業界は、景気の低迷により平成2年をピークに建設投資額が抑えられ、建設機械の購入台数は伸びていない(図1)。それに伴い建設機械をゼネコンは自社で購入せず、リースする傾向になってきており、リース業の建設機械の購入台数は年々増加傾向にある(図2)。
 建設リース業界の特徴として、①取扱商品がトイレ、オフィス用品などの日用品や工具類、電機設備類からダンプ、ショベル、クレーン、ブルドーザなどの大型建設機械まで幅広く、多岐多様にわたっており品目数が多い、②建設スケジュールが天候などに左右されやすいため、 貸し出し予定と実績が大幅に狂うことがあり、リース品のスケジュール管理をリアルに実施し利用率を上げることが重要である、③リース品を現場から他の現場に直接配送することが多く、在庫場所の的確な管理と、効率よく配送を実施することが重要である、などがあげられるであろう。


[当社の状況]
 当社は、建設関連器具のリース業の中で業界屈指の全国ブランドの会社である。取引先は、清水建設、竹中工務店、鹿島、大林組などのゼネコンがメインである。
 取扱商品は2000アイテム、100万点と多く、事業所は全国約160ヶ所に分散しており、従業員は約1700人である。また、他社との差別化をはかるために、クレーム、要望など顧客ニーズを取り入れたユニークな新商品開発が盛んであり、それに伴う特許も累積500件以上と数多く出願していることが特徴である。


[IT化の要件と成果]
 このような状況において企業の情報システムに求められる要件は、①商品に関するリアルタイムな情報提供、②社員全員での情報共有化、③現場からのクレームなど、リアルタイムな情報の収集、④そしてこれらを実現するために全国の拠点を結ぶネットワーク網の整備などが考えられる。
 本事例において、当社はこれらの要件を満たすべくIT化を進め、課題を解決することにより、スピード経営を実現した。結果、2001年度はこの不況下、多くの企業が売上低迷のなか、逆に売上を伸ばしている。(図3)


[IT化が効果的な業務]
 この事例で見られるブラウザ(注1)を利用したWebシステムの効果が活かされる業務としては、
  ・リアルタイム性や機動力が必要となる業務
  ・広範囲にわたり情報共有が必要となる業務
  ・商品などのデータの変更頻度が高い業務
  ・均一の情報を広範囲に提供する必要がある業務
  ・取引先、外注先、関連企業、顧客など外部連携が必要(有効)となる業務
  ・将来にわたり拡張の可能性が高いと判断される業務
などが考えられる。IT化を推進するにあたっては、これらの業務を中心にIT化を進めることが、費用対効果面から考えると効率的であろう。


[IT化を阻害する要因とその解決策]
 中小企業庁によると、IT化を阻害する要因として、「社内で使いこなせない」があげられている。(図4)
 本事例においては、この点を社員全員が持つビジネスネームと、徹底したペーパレスにより解決している。ビジネスネームは、社員全員がユニークな名前を付けて、自分をアピールすると同時に、その名前を登録することによる参加意識が芽生えるという利点がある。 また、ペーパレスも徹底して実施されており、パソコンの画面を見ないと日々の仕事が進まないような仕組みになっており、全員がパソコン操作を必然的に覚え、利用するようになっている。


[グループウェア利用のメリット]
 全員がグループウェア(注2)を使用して情報共有するメリットは、
  ・実際に顧客と接している現場から、顧客のクレームや要望、意見などを取り入れて
  ・即座に社員全員が把握し
  ・それぞれの個人が問題意識を持ち必要なアクションをとることが可能になる
 これにより顧客満足度が向上し、ビジネスに活かすことができることであると考える。
 結果、会社の業績向上につながるメリットがある。


[IT化を成功に導くポイント]
 最後にこの事例を踏まえて、IT化を成功に導くための留意点を述べる。
一点目は、「今までにとらわれない柔軟な発想」
 IT技術の利用により、ベンチャーの台頭にみられるように、これまでの経験やノウハウ、企業規模、地域の優位性があまり意味をもたなくなってきている。自社の強みを生かして他が実施していないビジネスモデルを考え、他社に先駆け実施することが必要であろう。
二点目は、「トップダウンによる強力なリーダーシップ」
 IT化の推進を情報システム部門だけに任せないで、パソコンの利用などトップ自らが先頭に立って実践し、掛け声だけに終わらないよう目標を決め、短期間でIT化を実現することが必要であろう。










参考にしたサイト

「レンタルのニッケン」ホームページ
http://www.rental.co.jp

注1:ブラウザ(browser
 利用者が、インターネットでWWWサーバに接続し、主にホームページの情報を画面上に表示する閲覧専用ソフトのこと。
ホームページのデータや文書、画像、動画などの情報は、サーバ内にHTML(Hyper Text Markup Language)などの言語で記述され蓄積されている。これを決められた手順でインターネットを通してパソコンに取り込み、画面に表示する。 Internet ExplorerNetscapeが有名である。

注2:グループウェア(groupware
 チームや組織的な活動を支援し、その生産性を高めるためのパソコンソフト。 LAN(構内情報通信網)を使った電子会議システムや電子メールソフトもその1種で本事例にでてくるノーツはロータス社製の商品でこの代表的なもの。

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