事例本文(金井度量衡)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:19 金井度量衡(株)   事例発表日:平成12年9月8日
事業内容:計測機器販売
売上高:19億5000万円 従業員数:37名 資本金:3000万円 設立:1959年6月
キーワード 計測機器販売、
販売管理、
社員コンピュータ能力アップ、情報共有、情報伝達のスピードアップ、
取引先ネットワーク構築
情報ネットワークを活用した業務革新
  

金井度量衡(株) URL:http://www.kanai.co.jp/

金井度量衡(株)取締役 金井利郎氏

プロフィール

 金井度量衡(株)取締役として社内の情報化推進を率いる傍ら、各種のネットワーク研究会などでも活躍中。ファイナンシャルプランナー

~パソコン好きを活かし、試行錯誤を重ね自分たち流に使いやすいシステムづくりを展開~

 ハカリなどの計測機器を販売する企業、金井度量衡(株)は、新潟県内ではいち早くIT化への取り組みを図ってきた。コンピュータにおいてはマニアだと自称する同社取締役の金井氏が、情報化への取り組みの歩みを語る。数々の課題も次へのステップに活かして、使いやすい自社仕様を実現しつつある情報化戦略は興味深い。


■IT化の波は幅広い年齢層に広がっている
  ITという言葉が出てきたのは20年くらい前。確か、79年か80年の通産白書においてだと思います。
  パソコンの創世記といいましょうか、まだ学生だったビル・ゲイツがベーシックプログラムを開発してそれを日本のNECなどの大手コンピュータ企業に売り出した頃、その頃から私自身もコンピュータを模索し始め、ずっといじってきて技術的な面ではかなり詳しいと自負しています。加えて、経営という面においては、父が社長を務める会社で取締役として関わっています。
  まず、日本の現状として、森総理がITの旗振り役をしてくれていることは非常にうれしいことです。首相官邸のホームページによると、高齢者、リタイアした人たちの中にITを使いこなそうという動きがあるとのこと。
もうひとつ、新潟日報のホームページで、高校生が専用の掲示板で色々な情報を共有していくシステムの立ち上げのニュースがありました。これは携帯電話からもアクセスできるような仕組みで、学業、友だち、恋などの悩みを話し合っていけるものだそうです。
現代におけるIT化は着実に進んでいるといえましょう。

■情報化の基盤として、その企業なりの経営設計を
  冒頭、私がファイナンシャルプランナーの資格を取得したと紹介いただきましたが、ファイナンシャルプランナーは人生のライフプラン、お金に関する部分で色々な人生設計を作っていくのが役割です。これは企業においても必要で、企業の人生設計、特にお金の面でそれができていない企業があまりに多いというのが最近の私の感想です。
  こうした状況の中で、情報化を進めていくにあたり、経営者に対してこういうことをできないといけない、とか話してもなかなか受け止めてもらえずに悔しい思いをしまして、私自身が経営の勉強をしなくてはと発奮しました。それには世の中の仕組み、雇用の仕組み、財務の仕組みなどを一通りわからなくてはと考え、ファイナンシャルプランナー以外にも中小企業診断士や社会保険労務士にもチャレンジしています。まだまだ勉強の真っ最中ですが、経営を学んで、あらためて情報化への取り組みを見直していきたいと考えています。
  当社のシステムの紹介をします。サーバーはIBMのPC互換機です。当社は中小企業なのでなるべくお金をかけたくないということがあり、こうした手作りで、どこにでもあるパソコンをサーバーにしています。
  10年前にパソコンを初めて導入し、売上管理を当時はノベル社のNetWareというシステムで行っていました。その頃、出入りのシステム業者さんに、パソコンでLANを組むのは無理だと言われたのですが、私にパソコンの知識がありましたのでパソコンでやってくれと交渉して何とか入れることができました。
  その後、電子メール、インターネット、グループウエアと続けて展開していきました。そのようにパソコンベースで広げていくと安くできます。ベンダーさんなど専門家に言わせると、安かろう悪かろうだと釘をさされましたが、そういうことを試行錯誤しながらやってきました。
  96年に、ノーツでグループウエアを確立し、掲示板やメール、その他色々なワークフローを電子化しました。インターネットのホームページも早い段階から出してきました。
  当社は測量機械の販売・修理調整の部分で、ISO9002認証を全国で初めて取得しました。それには非常にたくさんの書類やマニュアルが要るのですが、そういったものにも電子メールやグループウエアを活用してきました。
  昨年、基幹システムの売上部分をバージョンアップして、ターミナルサーバーを導入しました。これは100台くらいあるパソコンがよく壊れてメンテナンスが大変なので、端末のほうにアクセスするだけのプログラムを入れておいて、売上の入力、入金の結果などを見られるシステムにしたものです。
  今年度からはモバイル化、つまり、携帯電話などに対応したシステムに入り始めているところです。


■情報ネットワークづくりによって目指す3つの向上とは
  当社の、情報ネットワークづくりの目的は次の3つです。
1)情報の共有&伝達のスピードアップ
 中小企業では、e-ビジネスと称してインターネットで売る商品があるか云々を考える前に、まず担当者と担当者の連絡をいかに早くするか、ファーストコンタクトをいかにするかが大切です。そういった意味で、今、携帯電話など色々なツールが出ていますが、それがまだ活かしきれていません。特に当社は商社ですから仕入先であるメーカー、担当者、サポートなど色々な部分が絡み、その連係を図るには情報システムの活用が効率的なのでこれを目指しています。
2)社員のコンピュータ能力のレベルアップ
 当社は5年前、Windows95が出た時に社員1人にパソコン1台の体制にし、グループウエアをやろうと社内一致団結して進めました。40代50代60代の中高年の世代にも高い投資ではありましたがパソコンを配りました。しかし、現在は半分くらいが壊れて埃をかぶっている状態です。しかし、今でも色々なところから新しい発想が生まれてきているので、能力をアップしてパソコン及びシステムを活用できるようにしたいと考えています。
3)取引先との付加価値ネットワークづくり
 97年、KDネットという会員制のネットワークができる仕組みを、ロータスのノーツが当時出たばかりで誰もやっていなかったのでそれを使って、関連会社とインターネットを通じて会員制のやりとりを始めました。最近は無料でできる掲示板や会員制のホームページが出てきているので、今になってフライングだった感はありますが、その経験を活かしネットワークを使って取引先との連係をスムーズにしようと考えています

■3つの拠点で情報共有できるLANシステム
  次に社内システムの紹介ですが、現在の社内システムは3種類あります。

  当社は新潟の他に、長岡と上越にも1店ずつ拠点があり、それらを電話回線によって繋いで全社的にLANを構築しています。各店に情報系のシステムのサーバーとして、ノーツサーバーが稼働しており、ユーザーネットを張り全部繋がっている格好です。
  最初の頃は、モデムでダイヤルアップという形で必要な時だけ繋ぐ方法でしたが、データが増えるにつれて大変になりフレームリレーで常時繋ぎました。これは当時フレームリレーが安かったからですが、安いものだと帯域保証がなく、夕方などのネットが込み合う時間帯になると不便なため、去年、基幹系を入れ替える時にこの回線もデジタルアクセスに置き換えました。
  現在は、上越─新潟間は64キロのデジタルアクセス、長岡─新潟間は128キロのデジタルアクセスを使っています。ノーツは各店常時繋がっている形になり、情報系のメールも全部ノーツで行なっています。
  基幹系は、基本的にデータプログラムとも新潟店のみに置いています。プログラム類は全てここ、SQLサーバーとターミナルサーバーの中にあり、新潟店も同じLANの中ですのでそのまま引っ張ってこれます。他の店は、端末のパ ソコンの中にアクセスプログラムをおき、ネットワーク越しに新潟店のサーバーの中に入って処理をしています。

■問題点をガラス張りにして意見を出し合える、グループウエアのメリット
  グループウエアはロータスノーツのR4.5を導入しています。現在はR5.0というものが出ていますが、機能的には現状のままで十分です。社内のお知らせは掲示板でやっています。例えば、機械の在庫状況、品質管理責任者からクレーム情報、レンタル切れの報告のない人がいます、など、QC的なことをどんどんノーツ上で会社から連絡を入れます。社員は一日一回これを見なくてはなりません。
  今まではお互いの店に対して良いことはともかく、悪いところを指摘したり、ここをこうしろ、などの意見は遠慮してお互いに言いませんでした。報告があっても一部の上司の中でだけ伝わっていました。それが、こうしてグループウエアになりどの部署がどのように悪いということが営業マンでも技術の人でも事務の人でもわかるようになりました。つまり、会社の問題点がある程度ガラス張りになったことがよかったと思います。
  また、当社では、営業、事務、技術、全部が日報を書くことになっていて、日報ページの下の部分に精算、仮受金、日当などの項目ありますが、お金を使ったら必ずここに記入しなければ精算はしません、というルールもつけました。
  電話の伝言メモも電子化しています。このきっかけは、電話の伝言メモを机の上に置いてもそのまま見ないで置かれていることが過去に何回もあったこと。電子化によって、電話がかかって来た時に本人がいなくても、このお客さんだったら自分でも対応できると他の社員が判断して進められる、といったことを可能にしたのです。これは新潟店のものが長岡店でも上越店でも見られるような仕組みになっています。情報のコミュニケーション、スピードアップの推進を補うひとつの簡単な手だてだと思います。
  当社が取得したISOのマニュアルや書類は非常に多く、各担当者に報告書を書かせるのですが、これも全部ノーツの中で書くことに決めています。ペーパーレスもひとつの成果になりますが、それよりも、直接の担当者でなくても見られる、お互いにチェックできる、誰が出してないかがわかる、などの面で大変役立っています。皆さんの会社でも実際の業務で紙の書類にハンコを押していく流れがありますが、それが一覧で見られるというのはよいと思います。
  クレーム処理についても全部電子化でのせました。当社で考えられるクレーム例としては修理に出した量りに誤差があったなどですが、それがクレームかクレームではないか、是正の必要があるかないか、なども全部情報を共有しています。

■まずはやってみなければIT化は何も始まらない
  まず問題点の心構えとして、パソコンのサポートについてお話します。パソコンは壊れやすいものなので、パソコンの台数が増えれば増えるほどサポートが増えるということになります。当社は一時期100台くらいのパソコンがありましたが、システム管理者の仕事ばかり増えて非常に大変でした。パソコンのサポートはひとつの大きな課題です。
  次に、パソコンが1人1台あったほうかいいかについて。これから始めようという人にはそうであったほうがよいと思います。情報リテラシー向上とか色々机上の空論で説明してもわからないので、実際に各自が使えたほうがよいと思います。当社では先ほど話したISOの報告書にしても、打ち込んでいるのはほとんど40代50代の人が主流ですし、中には60代のシルバー人材センターの人にお願いしているものもあります。もはや、昔の読み書き算盤と同じであったほうがいいものでしょう。ただ、うちでは費用的なこともあり、パソコンが壊れた場合のリプレイスは希望者だけにしています。
以上、私どものIT化についてお話してきましたが、言えるのはまず参加しなければ何も始まらないということです。
  そして、効率化か新ビジネスかという方向があるのですが、いくら効率化を進めてリストラをしても、新しいビジネスを始めなければこれから21世紀に生き残っていく企業にはなりえないと思います。新しいビジネスをやるために、パソコンを導入し情報化を進める。リストラばかりやっていたら会社がなくなってしまいます。国の場合でリストラをやってなくなったのがソ連ですから、そんなことにならないように、新しい何かをやるためにパソコン、ITを使っていけたらいいと思います。
  特におすすめは携帯電話とネットトレードです。ネットトレードは株式取引ですが、非常に身近で、かつ最先端のセキュリティシステムなどを駆使しているので、是非やってみるとよいと思います。手数料が営業マンだと1万円かかるものが千円でできたり、e-トレードでは10月から百円にすると言っています。e-ビジネスの最先端がわかるので、まずは体験してみてはいかがでしょうか。

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