事例本文(函館カネニ)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:20 (有)函館カネニ   事例発表日:平成12年9月7日
事業内容:海産物の加工・販売
売上高:不明 従業員数:不明 資本金:不明 設立:不明
キーワード 海産物加工・販売、
荷物問合せ、
情報の発信、ショッピングモール
ネットショッピングはこれからだ

(有)函館カネニ URL:http://www.rakuten.co.jp/kaneni/ 

(有)函館カネニ 代表取締役 藤田公人氏

プロフィール

 海産物の加工、販売、企画を手掛ける藤田社長は、カネニグループの中核を成す函館カネニの2代目社長である。

~「感動」あり「ドラマ」あり。それが函館カネニのネットビジネス~

 インターネットを利用して販路拡大を実践しているが、『商品を売る前に心を売る』という心情を持つ藤田社長にまだまだ未知数の可能性を持つネットビジネスについて伺った。


■インターネットとの出会い
  私がインターネットと出会ったのは、1996年、平成8年4月でした。ある四国の業者さんよりショッピングモールへの誘いがあったのが始めでした。この時の参加業者は、インターネットの接続はおろかパソコンすら持たなくてもインターネットビジネスに参加できるということでした。その業者のページに商品の写真1点が数千円という内容で当店も数点ほどこのページに掲載しました。初めてのネットビジネスへの挑戦でした。しかし、挑戦と申しましても注文はその業者さんがインターネットで注文が入った時点でその注文をファックスで参加業者に送信するというものでした。要するにインターネット委託販売とでもいったところです。このときの注文は確か数個くらいで本当に数えるほどでした。

■ネットショッピングに対する疑問
  その2ヶ月後に初めて当店のホームページをホームページ制作会社のサーバーに開設し会社の情報を発信しました。内容は会社の所在地や商品販売のページです。当初は商品点数が15点ほどで、Eメールとファックスフォームでの受注が直接できる内容でした。本格的インターネットショッピングのできる環境を構築した訳ですが、ここでも注文は数個でした。しかし、その当時はまだまだ時間がかかると思っていましたので売れなくてもあまり気にしませんでした。
  この頃の当店のホームページ利用法ときたら、まだまだインターネットで買い物をする人も少なく、先ほど申しましたが注文も何個かでした。そこで名刺にホームページのURLを印刷して朝市に来たお客様に「当店のホームページです。是非見てください。」と言うと結構お客様からの受けは良かったです。それもお客様の大半の方はインターネットという言葉は聞いたことがあってもそのページを見る環境がほとんどないはずなのですが、新しい事に取り組んでいる姿勢がお客様に伝わったのだと思います。フリーダイヤルの時も同じようなことをしていた記憶があります。
  しかし「本来のインターネットの良さとは?」と疑問をもったのは平成9年明頃でした。やはりインターネットの最大の強みはリアルタイム性であります。我々のような海産物等の販売はなんといっても新鮮さが大切です。店頭での対面販売と同じ感覚でいつでも販台にはその日その日のドラマがあるのです。これは、インターネット店でも同じ事だと思っていました。しかし、ほとんどの会社もそうであるように自前のサーバーなどなく自社のページをプロバイダーやホームページ制作会社のサーバーに預けていました。情報発信用のページであれば多少はよいのですが、ネットショッピングのページであれば商品画像を入れ替える度にお願いしなければならないので時間がかかるのがネックでした。しかし、この頃のホームページ作りは私達素人ではかなり難しくどうすることもできませんでしたので、一度ホームページを作ると結構そのままというケースが多くありました。お客様が店頭に来られて、もし毎日毎日が同じ商品だったら3日目からは来て頂けないと思います。これはホームページも一緒だと思います。ちょうどその時でした。

■楽天市場さんとの出会い
  1997年、平成9年4月に立ち上がった今やショッピングモールでは話題に事欠かない㈱エム・ディー・エムの本城さんが、現在は㈱楽天市場の副社長さんが、営業で函館に来られたときでした。その本城さんから楽天市場に出店してみませんか、とのお誘いの電話を頂き大変興味のある内容でしたので早速会社に来ていただき詳しく内容を聞かせていただき、二つ返事でOKしました。
  5月には楽天市場カネニ店としてオープンしました。それはまさにしく私の願っていた内容でした。それはホームページ作りが私のような素人でも、多少ワープロさえできればそれなりのページになるという内容だったのです。制作は会社からでも自宅からでも、パソコンとインターネットのできる環境さえあればリアルタイムにページができあがるのですから絶対でした。インターネットは簡単に言えば、ありとあらゆるデータをやり取りできる電話のようなもの、もしくは回線を使用した自社のミニ放送局のようなツールでした。もし放送局だとしたら、その内容は「感動」あり「ドラマ」あり「ニュース」ありのさまざまな情報を発信できるのだとしたら、と考えると私達の夢は膨らむ一方でした。
  あまり難しく考えるのは専門家にお任せして私達はあくまでも難しく考えずに、単に便利なツール、いわゆる「道具」を便利に使うということでした。話を戻せば、楽天方式は画像や情報等をリアルタイムにページに反映できるということで一気にインターネットが身近になった訳です。本来商品を売るはずのショッピングモール楽天市場のページに、遊び感覚で、先ほどの「感動」ではないですが、「思い出のコーナー」を設けて函館朝市に来るお客さんの写真をデジタルカメラで写しすぐさま楽天市場のページに載せました。それが大変に受け、修学旅行の生徒さんなどは当日の朝市に居るみんなの元気な様子がインターネットで各地の学校や生徒さん宅まで、当日見ていただけるということで本当に喜んでいただきました。その1年後にまた同じ学校の後輩が「思い出のコーナー」に載っている先輩の写真をプリントアウトして、わざわざ、私達も写してくださいと訪ねてきたこともありました。そのような内容からもおわかりになると思いますが、この楽天市場さんでも1,2年はたいして売上はありませんでした。だからこそ色々なことができたのだと思います。現在では写真もどんどん増えてきましたのでこのサイトも別の場所へ引越しました。そのようなことで楽天市場さんのおかげで当店としましてもかなり勉強させていただきました。その楽天市場さんも開設当時の出店数は当店を入れて14店舗でしたから、楽天市場さんのトップページに常に当店の店舗名がありました。それが今や2年5ヶ月あまりで、その数は4,100店舗以上です。この数字からでもおわかりのように楽天市場さんの出店企業の数だけでも、いかにショッピングモールへの参加店が急激な勢いで増えているかがおわかりだと思います。

■では、売上はいったい・・・。本格的ショッピングモールへの参加
売上のほうはというと徐々にではありますが伸びていきました。最初の四国のショッピングモールはまったくでしたとお話いたしましたが、インターネットが取り持つご縁でこの業者の親会社さんからは毎年注文を頂いています。特に12月などは800万円から1,000万円位の注文がございます。その他にも多少ございます。この売上は完全に業者間での取引です。見積りもEメールなので大変に便利です。
2年目にしてようやく見えてきた数字、これから申し上げる数字は楽天市場カネニ店での売上です。出店当時の平成9年の売上は8ヶ月で362,000円弱と各月が二桁の数万円程度の売上でした。翌年の平成10年度は2,514,000円とここへ来てようやく各月の売上も二桁、三桁と少し上向きになり、12月には待望の四桁売上の11,492,000円とこの月で、ショッピングモールでの売れる「コツ」の手応えを感じました。そして平成11年度は各月の売上も二桁台の月がなくなり三桁、四桁の月が6ヶ月づつで、12月は4,264,260円と良い感触でした。昨年の楽天市場カネニ店での売上が14,223,813円と、私といたしましてはまずまずの成績をあげたと思っています。売上高だけを見ていましたら大した事のない数字かも知れませんが、この数字と先ほどの出店数を「伸び率」という視点で見ていただくとこれは本当に驚異だと思います。しかしこの驚異も、なにもしないでいると驚異ですが、このインターネットを上手に使えば全然驚異ではなく、むしろ使ってこそチャンスなのかもしれません。またネットビジネス全体の売上等の伸び率も、これからもまだすごい勢いで伸びるでしょうし、このインターネットの活用法にはまだまだたくさんの未知数があると思います。

■便利なインターネット
ネットショッピングだけのツールとしてばかりではなく企業のオリジナル情報の発信局として活用するのも一つの方法かもしれません。これくらい便利でかつ利用価値のあるツール(道具)はないと思っています。当店の一つの例として、当店のパソコン受注システムではお客様よりご注文いただいたお荷物に対する問い合わせなどで、お荷物所在や到着時間の問い合わせなどの時は、一回一回運送会社へ電話をしてその返事を確認してからお客様にその内容を連絡していました。現在のシステムではそのお客様の受注画面に発注伝票の問い合わせ番号が反映されていますので、パソコンのマウス操作1つで簡単に運送会社「インターネットお荷物問い合わせ画面」にアクセスできるようなシステムになっています。今ではお客様からお電話をいただいたまま、そのお荷物の情報を直ぐにお伝えできるようになりましたので、結構お客様の方が驚いたりします。また、電話やファックスでの注文をいただいたデータは、すべて手作業で打ち込み発送伝票や納品請求書を発行していますが、インターネットの場合はデータの打ち込み作業はお客様自ら自分のパソコンを使ってインターネットで注文してくれる訳ですから、発送伝票や納品請求書の発行は少ない作業で反映されます。時間の短縮、いわゆる人件費のコストダウンにつながっています。今までは社員が会社の端末で打っていた作業が、インターネットではお客様自身が自分の伝票等を打ち込みしてくれる訳ですから、コストダウンの分、商品単価も少し安く設定しています。そのようなことでインターネットビジネスの可能性は「やる気とアイデア」次第で未知数のごとくまだまだあると思っています。

■ネットショッピングはこれからだ
  私はネットショッピングはこれからだと思っています。是非「函館ブランドのショッピングモール」を立ち上げたいと考えて、ただ今制作中です。そのようなことで、全国的にもそれなりに名前が知られています函館朝市のショッピングモールを作って、函館市や朝市情報の発信ができるサイトにして、もちろん朝市以外の業者さんにも是非参加いただきたいと考えています。アドレス名は「はこだて朝市ドットコム」でスタートし、また、2年前に立ち上げたもう一つのサーバー、これは全国の朝市や朝市の情報交換の場に使用していただきたいと思っています。そのアドレス名は「朝市ネットワークサービス」です。ということでここでも「やる気とアイデア」で頑張っていきたいと思っていますので宜しくお願いいたします。
 最後に、この様にして売上に繋がったのもショッピングモールに出店したからではなく、スタート時点で自社のホームページを立ち上げ、情報を発信したからこそこの様なチャンスにも、もちろん楽天さんもそうですが、大勢の方と出会えたと思います。本日もまた皆様とお会いできましたことに感謝申し上げます。

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