池内タオル事例コメント

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事例コメント
(株)池内タオル 作成者:富士通(株)
      古山 英夫
作成年月日:2002年1月29日
 池内タオル(株)の事例を読むに当たり、参考となる情報を上げてみる。 タオル製品は、フェイスタオル、バスタオル、タオルケット、バスローブ等々、我々に身近な製品である。 事例にもあるが、日本国内のタオル需要に対して輸入品の割合が年々増加し続けており、近年では国内需要に対し輸入品の割合が6割以上となっている。 特に中国製品の輸入が拡大し、国内メーカーは苦しい状況が続いている。(図表1)



 日本国内のタオル主要生産地のひとつである今治においても同様で、タオル生産に従事する従業員も減少の一途である。(図表2、図表3)




 このような状況を打開すべく、官民一体となって実現したのが「今治産地バーチャルファクトリー」である。
 タオルの生産工程はおよそ13工程に分けられる。各々の工程を専門の会社が受け持つ形となっているが、生産・在庫・出荷の情報交換がなされておらず、 材料到着後に生産計画・生産準備を行うため、全工程で45日程度を要していた。 実際の製造に要する期間は15日程度であり、待ち時間となっている残りの30日をいかに短縮するかが、課題であった。(図表4)



 この課題を解決すべく、通産省が提案し、繊維業界のQR実証実験(注1)として開発されたシステムが「今治産地バーチャルファクトリー」である。 これはTIIP事業(注2)の一環として行われ、各企業間で分担している作業工程を産地全体でバーチャルファクトリーとして捉え、 製織メーカーを中心(コントロールセンター)として生産計画、納期回答、加工指図、実績報告等の情報をデータ交換し、受注、空き設備、 進捗等の情報を共有することによって計画的な生産体制を構築し、リードタイムの短縮を図る試みである。(図表5)



 この取り組みの結果、池内タオル(株)の例だとリードタイムが28日に短縮され、即効性のあるシステムとして活用している。 最終的には、リードタイムを14日まで短縮することを目標としている。


参考資料

池内タオル(株)ホームページ
http://www.ikeuchitowel.com/

四国タオル工業会 ホームページ
http://www.stia.jp/

中小企業総合事業団 繊維業務部 ホームページ
http://www.jasmec.go.jp/tira/INDEX.htm

経済産業省 統計 ホームページ
http://www.meti.go.jp/statistics/index.html

関西大学 総合情報学部 ホームページ
http://www.res.kutc.kansai-u.ac.jp/~noguchi/soturon97/Kodera/kodera.html


注1:QR実証実験
 アジア諸国、欧米諸国との厳しい競合に直面しているなか、繊維産業における生産・流通の全ての過程から、物と時間の無駄を排除し、 企業間のパートナーシップをベースに情報技術と経営戦略を結合した仕組み。基幹整備事業としてTIIP事業があげられる。

注2:TIIP事業(Textile Industry Innovation Program
 TIIP事業とは、繊維産業が長引く不況下で、円高、輸入品急増、国内空洞化に直撃され、とくにそのしわ寄せが産地を形成している中小企業に集中していることから、 事態の根本的打開を図るために実施された。平成5年に国より発表された「繊維ビジョン」に示されている繊維産業のプロダクトパイプラインの統合、 それを短縮するための情報システム、生産技術などの研究開発を実施し、繊維産業構造のマーケットイン型への促進(QRの加速) 及びIT技術を繊維産業へ活用するために、平成7年度に繊維産業構造改善事業協会が実施したものである。(図表6)
事業名 実施年度 内容
TIIP-Ⅰ   平成7~9年度 QRに基づく繊維産業のIT化を加速させるため、EDIをはじめとする情報技術を活用し、生産・流通の短縮・効率化の実現
TIIP-Ⅱ   平成9~10年度 4生産地向けに、生産性向上を目的とした生産工程シミュレーション
TIIP-Ⅲ   平成10年度 リードタイム短縮・利益増大を目標に、川上から川下までのプロダクトパイプライン上での情報共有を実現。

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