事例コメント

IT Coordinators Association
事例コメント
(株)ニュヒーロー 作成者:勝野 直樹
ITC認定番号:0007582001C
作成年月日:2002年10月18日
<はじめに>
 (株)ニュヒーローは、沖縄県において、資本金2150万円、従業員22名の自動車整備および中古車販売を手がける企業である。 1972年、沖縄の本土復帰と同時に設立されている。 会社の経営状態が悪化した際に、経営コンサルタントのアドバイスを受け、窮状の打開策としてインターネットオークションを活用した中古車販売に取り組んだ。 実車ではなく、映像とデータ、いわゆる"情報で売る"といったインターネットオークション(注1)が顧客のニーズを的確に捉え、 現在は年間3億円以上の売り上げを得ている。
 (株)ニュヒーローが実施した戦略は、課題となっていた在庫の圧縮だけでなく、新たな顧客層を獲得するまでに至っている。 また、一方では、自動車整備という自社の得意分野をベースにして、うまくITを組み合わせた事例でもある。 本事例コメントでは、(株)ニュヒーローを取り巻く経営環境と同社が実践した「車を映像とデータで売る」という経営戦略とその背景について考察する。

<中古車市場の動向>
 本事例の商品である中古車は、新車から入庫するまでの間の使われ方が千差万別で、車の履歴、車輌状況は実際に手元に来るまではわかりにくく、 一定の品質というものがない。そのため、仕入れ・買い付けの善し悪しが利益に影響するという性質を持っている。 このことは、車を購入する消費者を惑わす要因にもなっている。
 消費者が中古車を購入する場合は、自分の目で実車を確認して車の状態を納得の上で購入する方法が一般的であるが、 プロの車両検査員がチェックした結果や価格の最新相場情報が消費者に対して十分に伝えられているとは言えない。
 こうした中古車業界における、品質・価格の不透明さ、アフターサービスの面から、どちらかというとダーティーなイメージを持たれがちだったことに対し、 ここ数年は商品の情報をオープンにした顧客第一主義を全面に出した戦略を展開している企業が増えている。

<沖縄県における中古車販売>
 沖縄県では鉄道がない(注2)ため公共交通はバスしかなく、通勤通学などの交通手段としては車は必需品となっている。 しかしながら、県内の国道沿いには中古自動車販売店が密集している地域も多く、一見して厳しい競合環境が伺い知れる。 その数は、ブローカーまで入れると、1000社程度はあると推測され、中古車販売大手の"ガリバー"や"アップル"も沖縄県に進出している。
 このように、本事例の場合は、中古車の需要はあるという機会に対して、競合会社の多さ・大手業者の進出が脅威となっている。
 また、従来から行ってきた在庫中心の中古車販売方法では、品揃えや顧客ニーズへ対応するためには在庫経費がかさみ、経営を圧迫することが弱みとなる。

<IT活用の経緯>
 (株)ニュヒーローは、現在のインターネットオークションを活用する以前、在庫を100台ほど抱え、在庫管理にかかる費用が大きかったことに加え、 クルマを早期に販売するために新聞・ラジオ等への広告宣伝費の負担も大きかった。
 このような状況において、(株)ニュヒーローは、バブル崩壊後の車検台数も中古車の販売台数も落ち込んだ時期に、 情報関係にくわしい経営コンサルタントのアドバイスを受けた。そこで、(株)ニュヒーローが選んだ戦略は、 消費者であるクルマの購入希望者が直接インターネットオークションに参加して中古車を購入してもらう方法であった。
 消費者にインターネットオークションに参加させる販売方法については、業界からの強い反発があったが、城間社長は懸命な説得を行い、 中古車の新しい販売方法の導入に至っている。(株)ニュヒーローが、こうした業界としては革新的な方法を取り入れた背景には、 同社が中古車の販売を専業としている企業ではなく、自動車整備を主力とした経営基盤があったことも確かである。 また、社内のよき理解者の支援もあり、実践面での協力が得られたことも戦略を実行する追い風となっている。

<インターネットオークション導入の成果と成功要因>
 (株)ニュヒーローでは、平成10年2月から中古車のインターネットオークションを活用し、平成11年の6月頃から顧客が増え事業が軌道に乗り始めた。 その結果、在庫管理経費を従来の10分の1に圧縮することができ、当初の目標は達成できた。さらに予想外の成果として、 安価な日常の足としての車を購入する顧客ではなく、高額車を購入する顧客を獲得している。 これは、インターネットを活用することで、従来店頭で選んでもらうという方法と比べ、顧客が選択できる車種や台数が飛躍的に増えたことが要因と考えられる。 インターネットという手法により、車に詳しいプロや車好きの消費者と、地元では入手できないような車とを引き合わせることができたのであろう。
 しかし、この成功は単にインターネットオークションを活用したからだけではない。 たとえ、インターネットでより多くの選択肢から好みの車を手に入れることができても、整備に多くの費用を要したり、後々のメンテナンスが困難になっては、 この販売手法は長続きするものではない。そこには創業以来のしっかりした自動車整備の技術的な信頼があったからに他ならない。
 ここで、(株)ニュヒーローの経営環境について筆者なりのSWOT分析を試みた。


 このSWOT分析から、(株)ニュヒーローの売上向上の主要成功要因は、次の2点と考えられる。
・インターネットによる豊富かつ信頼性の高い情報提供
・自動車整備の高い技術力による裏付け

<おわりに>
 (株)ニュヒーローのホームページを見ると、中古車販売だけでなく、経営基盤となっている車検整備に関しても魅力的な商品が掲載されている。 「ランチタイム/ディナータイム車検」、「一日車検」といった短い時間で車検整備ができるシステムである。 さらにその記事をよく見ると、「立会車検」、「立会見積」といったシステムがあることに気付く。 ここに、自動車整備・中古車販売業界の不透明さを一掃し、真の顧客満足を向上させるという(株)ニュヒーローの基本的な経営姿勢を感じるのは筆者だけではないだろう。 今回のIT導入の成功の背景はこの顧客の立場に立った姿勢にあるものと考えられる。

参考にしたサイト
(株)ニュヒーロー
http://www1.ocn.ne.jp/~hero/

社団法人 日本自動車販売協会連合会
http://www.jada.or.jp/

株式会社ガリバーインターナショナル
http://www.glv.co.jp/

日本自動車流通ネットワーク株式会社(通称:アップル)
http://www.applenet.co.jp/

注1:インターネットネットオークション
インターネット上での商品の競売。あるいはそのサービスを提供するホーム-ページ。ホーム-ページ上での出品や入札などが可能。

注2:沖縄県の鉄道
現在、日本に鉄道がないのは沖縄県のみ。しかしモノレールが平成15年に那覇空港・首里間に開通が予定されている。

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