事例本文(お茶の亀屋翠松園)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:28 (有)お茶の亀屋翠松園   事例発表日:平成12年11月1日
事業内容:お茶販売
売上高:不明 従業員数:14名 資本金:800万円 設立:1946年8月
キーワード お茶販売、

データベース化、パソコン活用、商品データベース
e加減な中堅企業
  

(有)お茶の亀屋翠松園 URL:http://www.netwave.or.jp/~kameya/

(有)お茶の亀屋翠松園 代表取締役 尾碕正澄氏
プロフィール

 早稲田大学卒業後、黒姫移動大学、国立茶業試験場茶研究所を経て、1974年お茶の亀屋翠松園に従事。2000年、㈲お茶の亀屋翠松園代表取締役に就任。
  全日本茶商クラブ理事のほか香川経済同友会、高松稲門会、百十四たまも会等に入会し活躍中。

~自分流でコンピュータを活用して20年。そこから見えてきたIT時代の真髄とは?~

 IT、ITと言葉ばかり先行しがちな感がある中小企業経営者も少なくないが、自分がコツコツやってきたことが実は今でいうIT化の一環であったのだという人もいる。まだコンピュータなど一般にはほとんど普及していなかった時代から独学で取り組んできた尾碕氏もそんな一人だ。コンピュータ歴20年の氏の、今日までのコンピュータ活用のプロセスと理念を伺った。


■独学で始めた私のパソコン履歴
  今から25年前の1975年に、私は高松に帰ってきて「お茶の亀屋」に入ったものの、仕事はよくわからないし、経営に必要な金勘定や人の使い方もわからず、経営者として行き詰まっていました。そこで、経営を通してどういうことを目指せばいいのかを考え、立てた目標が「生活は明るく、仕事は楽しく、体は元気に、仲間や地域の人達とは仲良くやっていきたい」ということでした。それにはどうしたらよいのか。その方法として、パソコンに着眼し、初めて手に入れたコンピュータがシャープから出ていたPC-1211というポケコンです。
  当時は今のようなハウツー本もなく、パソコンを使っている人も周りにいなくて、一人でBASIC(ベーシック)というプログラムを組み、自分自身の仕事の上で役立つもの、今でいう商品データベースを作成しました。数キロバイトのポケコンですからデータを蓄積する余裕がないため、ポケコンにテープレコーダをつないでテープにデータを入力していました。テープに覚え込ませたものを夜中に読み取り、ドットプリンターにアルファベットで商品名や数字を打ち出して、商品ひとつひとつに「いつ」「どこから」「いくらで入ったか」という符丁を打ち出しました。以来、今日までの20年間、商品ごとにこのデータがレシートとしてついています。これが、私のパソコンを使った初体験の実績です。
  その後、エプソンのHC20というノートタイプを買い、次はPIPSにしました。PIPSは優秀な日本人が開発したソフトウエアで、今はリコーからマイツールという名前で出ています。当時は10数万円から20万円くらいしましたが、2000年10月から無料になりました。現在の私の仕事はマイツールなしには進みません。
  よく「パソコンは何を買ったらいいか」と相談されます。以前は「仕事で使うならマイツール、パソコンが好きでマニアックに使うならPC-98、クリエイティブなデザイン的な仕事ならマック」と答えていましたが、ウインドウズが出てからはどのメーカーのどのパソコンを使ってもいい、と言っています。どれでも十分すぎるくらい仕事がこなせます。ハードデスクも、フロッピーやCD-ROMも随分安くなり、パソコン自体の仕事のスピードも速くなりました。

■パソコンのフレキシブルな魅力をバランスよく活用
  人間は頭で考え、手で文字情報を書いたり、情報を発信したり、創作したりしています。また目で見たり耳で聞いたりして、情報を受信し蓄積していきます。こうみると身体も情報の受発信をしている道具です。昔からの言葉に「読み書き算盤」というのがありますが、これも情報処理。「読み」は情報の受信、「書き」は情報の発信、「算盤」はパソコンでいう数量情報の加工処理です。欠けているのが思考の部分ということになります。このバランスをもってパソコンを使わないと、単にワープロ機能だけとか、エクセルで表を作って報告書を作るだけとか、e-メールで受発信する程度で終わってしまいます。私のところは規模は小さいですが、この4つをバランスよく使っています。情報は、欲しいもの、入手しやすいもの、役に立つもの、ゴミになるもの、と、色々ですが、それを自分自身で判断して収集、蓄積、加工をしていかなくてはなりません。
  パソコンを活用すれば儲かります。例えば、商品情報のデータを活用すれば、仕入れの時に何万アイテムとある中から、何をどこから仕入れれば一番安いかがすぐにわかります。また、パソコンによって、人の動きも効率よくできるようになります。今まで手で書いてやりとりしていたものは、パソコンを使うことにより、繰り返しや同じ文句を差し込んだりすることも容易にできます。そして何よりパソコンは楽しんで使えるものですから、ゲームやインターネットにより今まで知らなかった世界の情報をどんどん取り入れることができます。私も商売のお茶のことだけでなく、趣味のマジックの情報も入手していますが、マジックのような陰でしか情報が得られなかった ものはインターネットにより情報が楽に入手できるようになり役立っています。
  さらにパソコンには情報の記憶蓄積という非常に大きな有効性があります。オペレーションができ、ソートしたり異質のデータ同士を付き合わせることで新しい発想ができます。

■ひとつひとつ積み重ねて、データベースを作り上げていく
  情報のデータベースを大きく分けると、人の情報、物の情報、金の情報、事の情報の4つがあります。
・ 人の情報は顧客名簿です。当社では全国に8千名のDMリストを持っています。DM発送には以前は宛名印刷でラベルを打ち出して封筒に貼っていましたが、現在は毎月ラベル印刷で簡単に発送ができています。
・ お金の情報は、経営面の数字情報です。P/L、B/S、給与、資金繰り等の情報のデータベースです。
・ 事の情報は、DMや販促等の企画、スケジューリングなどのデータをパソコンに入れて管理しています。
・ 物の情報は、当社では商品ひとつひとつに、PVQM(Pはプライス・価格、Vは仕入れ価格、Qは個数、Mはマージン・粗利)と商品名、仕入れ年月日、商品シリアルナンバーが入っています。
  ここでお勧めはシリアルナンバーです。オフコンを使っているところでは、商品にコード番号を入れることが多いのですが、コードを調べながら活用するのは大変なので、私は商品については名前で入れてしまいます。名前で分類するのです。仕入れた順番に入れていけばいいのです。こうして何年もやっていけば、自分のところのデータベースができていきます。ほとんどの企業では、データベースというとコンピュータ会社かソフトの請負会社が来て何万アイテムというものを一気に処理しようとするから大変なのです。当面必要なデータをひとつ一つ、入力し蓄積していけば楽です。
  マイツールのよさは、思いついた時に変更がきくことです。オフコンでは桁数が足りなくなったり、消費税が変更になった時に、オフコンのオペレータを呼ばなければできないので時間がかかるし、変更手数料も取られるでしょう。パソコンを使っていれば、マイツールはチェンジフォーマットで桁数変更も、消費税もコマンドで手軽にその場ですぐ変更できます。思いついたらすぐできるのもパソコンのメリットだと思います。

■人と人との繋がりがe-ビジネス成功のカギ
  私が儲かる企画を立てたプロセスをお話しましょう。大前提に、お客様に喜ばれ、役に立つことをしたいと思います。そしてまず自分のところの現況を考えます。もし商品が売れなくて困っているのなら、売れない原因を考えます。お客さんの要望を考えるのです。私はナツメの形をしたお抹茶を入れる器として「四季棗」という企画を考えました。そして、ヒットする要素を加味するため、数字情報、ストラック戦略会計というマネジメントゲームについているソフトウエアを考慮して価格決定しました。これにより何個売ったらいくら儲かるかという数量情報を活用して、結果的に利益を上げることができています。
  また、皆さんもパソコンを経営に活かしている仲間を増やしていくことが大事だと思います。よくインターネットというのは各所にプロバイダーなどがあって、それが世界中に繋がっていてその端末にパソコンがあるという説明がされますが、忘れてならないのはパソコンの前にいるのは人間だということです。インターネット時代で顔が見えないと言われますが、あくまでもその向こうにはお客様という人間がいるのです。こうした人と人とのネットワークですから、IT戦略において最後に成功するのはシステムを制する、OSを制する、アプリケーションを制するということではなく、人と人とがどう繋がるかが決め手となります。人と人とのいい関係を作っていくことが、e-ビジネスで成功する大事なカギなのです。例えIT化が進んで各家庭にパソコンが普及し、インターネットショッピングが当たり前になっても、人と人との繋がりが大切な時代になっていくことを強調したいと思います。
  私も商店街で活動したり地域活動の中でパソコンを使い、パソコンを抜きにしても人と人とのご縁を大切にしています。子供には、試験の点数より友だちの人数を増やせ、と言ってきました。これからは学歴は本当に関係なくなるでしょう。人とたくさん会うこと、特に異業種の人たちと違ったものの見方がわかる交流を深めていくことをお勧めします。同業種だとどうしても利害関係や勝ち負けが絡んで本音の情報交流ができません。年齢も幅をもたせて、異性も含めて、幅広く楽しい交流をもち、情報を得、活用していってください。

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