事例本文(アベニュー)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:29 (有)アベニュー   事例発表日:平成12年11月9日
事業内容:ソフトハウス
売上高:不明 従業員数:8名 資本金:4000万円 設立:1965年4月
キーワード ソフトハウス、

iモード、インターネット販売、データウェアハウス、ポータルサイト
地域における情報化の事例と可能性
  

(有)アベニュー URL:http://www.ave-new.com/

(有)アベニュー 代表取締役 安部彰人氏
プロフィール

 (有)アベニューの代表取締役のほかに、協同組合オホーツクマルチメディア研究所理事長、北見ソフトウエア協会会長を担っている。

~北海道発・世界へ、さまざまな可能性の鼓動を感じている~

 ビル・ゲイツ氏と同じくらいの年月を、コンピュータと共に過ごしてきたという安部氏は、30代になってすぐの頃に、東京でソフトウエア関連のベンチャー企業を立ち上げ、現在は地元北海道で事業を展開している。インターネットにより「自宅から世界が見える」と説く氏の、フレキシブルな構想は広がるばかりのようだ。


■当地域の情報化へのがんばり
  私は、この網走管内のソフトウエア協会の会長という立場であり、先日、会社の定款上でITに関する目的を掲げている業者の数を調べてみたら53社ありました。この地域の企業数からみると、多いほうではないかと思います。さらに最近は、SOHOつまりスモールオフィス、ホームオフィスのスタイルも増えてきています。
  この地域ではプロバイダ事業が盛んです。最初にマルチメディア協会でオホーツクウェブというプロバイダ事業を立ち上げました。それから、美幌では村田システムさんがやっていますし、北見では北ネットさんがあります。大手のOCN、ODNなども当然たくさんあります。そんな状況のもと、注目すべきは、この管内で26の市町村の首長さんが集まり、オホーツク26というサーバーを立ち上げて行う「オホーツク情報ハイウェイ構想」を展開し、日経のアワード賞などを受賞するほどの実績をあげたことです。このオホーツクの片田舎でも結構情報化が進んでいるということを認識していただければと思います。
  たくさんの人が見に来る大規模な玄関サイトをポータルサイトと言いますが、このオホーツク管内で地域のポータルサイトになるのはこれかなと思うのが、北見市と商工会議所が中心になって行っている「タウンマネジメント構想」の中のサイトです。市内の商店300社もこれに順次入ってくると聞いていますし、価格も月500円程度でホームページ掲載ができるような準備をしているので、期待できそうです。このポータルサイトを活かしながら、各社が協力して、色々な情報やノウハウを収集して運営していくことが重要だと思います。
  また、私は網走支庁の新産業政策委員をしている関係で、地域情報化のお手伝いをしながらiモードの実験をしているところです。iモードでインターネットに繋がるし、メール交換もできるのは当然ですが、それだけでは大したことではなくて、データベースと接続した時にイントラネット、つまり企業内で使えるシステムができるのではないかと思います。一例では、友人が自動車販売会社を経営していますが、すでにiモードを活用した営業を行っています。車を販売する時に大事なのは即決できるかどうかということです。お客様との商談の中でいくらまで値引きするということを、従来は、いったん持ち帰って上司に相談してまた翌日持っていっていました。すると、すでに他社が来ていて契約されてしまったことも少なくありませんでした。そこでiモードを使って商談のその場で営業マンが会社のデータベースにアクセスでき、即決できるようにしたところ、かなり業績が上がってきているということです。

■リナックスで低コストなサーバーを展開
  私どもはリナックスでWebサーバーを立ち上げています。リナックスはフィンランド生まれのオペレーティングシステムでフリーです。タダなのですが、これを立ち上げるには多少の技術力が必要です。当社の場合、かかった費用はパソコンが5万円くらい、専用線を引いてルーターが3万8千円、買ったのはそれだけです。実際にこれで立ち上げてトラブルもなく非常に快適です。
  今、自分のホームページを作ろうとしたら、いちばん簡単なのはどこかのプロバイダに頼んで、例えば5メガ、10メガを買ってそれに載せればいいのですが、ここではアプリケーションが走るわけではないので、ただ紙芝居がそこに乗っかったという感じです。それでは何億とあるホームページの中に埋もれてたぶん誰も見てくれないでしょう。そこで、自分のところのサーバーを立ち上げると、アプリケーションを埋め込むことができ、インパクトのあるホームページができます。それがフリーウエアでお金がかからず、常時接続も5千円を切る程度の費用で実現できるということです。そこから、また世界が変わるかなと思います。
  当社はソフト開発の仕事をしていて、パッケージソフトを扱っています。主力は顧客管理のためのソフトや、建設業でいうと現場管理のソフトですが、これらをインターネットで販売しています。ホームページに体験版をアップしておいて自由に触っていただき、よろしかったらお金を振り込んで下さい、それでOKでしたらパスワードを差し上げますという方法をとっています。

■インターネット上での販売に、高い物流コストがネック
  もうひとつ当社では2年間ある実験をしてきました。無農薬のジャガイモ、タマネギをインターネット上で販売しようという試みです。インターネット上には色々な掲示板やサイトがありますが、そこに対してうちのスタッフの女性がほとんど専任で営業をかけ、うちのホームページに引き込みをします。特に無農薬ということで都会の主婦層に好評で、食べておいしいし子供たちにも安全だと人気があります。作付けをする時から生育具合、「これは今あなたのためのイモを栽培していますよ」と、刻々と写真やビデオで撮って、お客様にアピールしているのです。すると信頼度が高まり固定客が増えました。決済の問題もコンビニでもできる仕組みができています。
  これにより得たノウハウで、地域にいい物がせっかくあるのに実際に売る手段がなかなかないものを、売っていけると考えています。インターネットを使えば世界発信だってできます。ただネックは高い物流費です。このために、ジャガイモやタマネギもたくさん売れていながらあまり利益が出ていません。価格が千円以下のものに物流コストが千円くらいかかってしまうのです。この物流コストをなんとかできればと考えていますが、1社でやっても無理ですから、地域でインターネット物流センターも抱えるとか、色々な種類の商品を売ってシステマティックに考えられたら、利益が出てくるのではと思います。

■やる気を見せて補助金を活用していこう
  今、国がIT、ITと声を高くしていて相当な予算規模で取り組んでいくのだと思いますが、政策には補助金のことが必ず出てきます。これは地域にとっては大切なことです。特に地方分権が進んでいる世の中ですから、地域のやる気を見せることが肝腎です。やる気を見せているところには多くの補助金が下りています。
  例えば、岐阜県辺りはソフトウエア事業にずっと取り組んできて、かなり補助金が活用されている感を受けます。ITに関して我が地域でもどうだ、と市の方と話してみましたが、芳しくありませんでした。なぜかというと、12~13年前のテレトピアの時で話が終わってしまっているのです。テレトピアとは、郵政省が提唱したテレコミュニケーションとユートピアを合わせたもので、通信を使って理想的な社会を築こうという事業でした。今、インターネットというツールを手にして、何とかもう一度声を大にして、ITを地域としてどう捕らえていくのだ、ということを民間から市に対して言っていかなくてはならないと思います。やる気を見せて補助金を得て、うまく活用して活性化を図りたいですね。

■顧客満足度に繋がる情報を活用するために民間共同体制で
  情報を活用する方法には、例えばデータウエアハウスがあります。これはデータとして発生するものを全てコンピュータに詰めておき、ある切り口でもって引き出すものです。これを営業の戦略上で使うとすれば、何歳の人が、どの性別の人が、どんな時にどんな形のどんな色のものを買った、という情報が瞬時にわかり、その蓄積したデータをもとに営業戦略が立てられる、というものです。情報をいかに蓄積し、自由自在に切って見えるようにしておくかが大事なのです。企業にとって大事なのは、どちらかというと財務諸表よりも、販売管理、仕入など実際お客様の顔がみえるためのデータ、顧客満足度に繋げられるデータです。
  ここに来る前、に私が当社のユーザーを調べてみたら、日本航空さんがうちのソフトを使っていました。自動車ではスバルさん、マツダさん。洋服ではプラダジャパン。北海道では北海道コープさん、北ガスさん。大手のユーザーがいがいに多く、改めてびっくりしました。
  顧客管理のソフトはインターネットで販売しているものですからおそらく数千本は売れていると思いますが、今後はこれを売るという方法でなく使用料という期間貸しの方法でやれるようにASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)の研究をしたいと考えています。ブラウザがあれば、ウインドウズでも、リナックスでも、マックでもどこでも動くようなポータビリティの高いシステムを目指したいと考えています。例えば、Javaという開発言語が望ましいのですが、北海道にはまだそのセンターがありません。世界に先駆けてここにJavaのセンターができたらいいと願って、北見工業大学や行政に話を投げかけているところです。

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