志満や運送事例コメント

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事例コメント
志満や運送(株) 作成者:NECソフト(株)
     斎藤 尚志
ITC認定番号:0001162001C
作成年月日:2002年1月29日

 本事例は志満や運送㈱殿が、「物流ネットワーク徳島」を立ち上げるまでの経緯とそこで得た情報化の有用性についての解説の事例である。
 志満や運送代表取締役社長湯浅恭介氏は、志満や運送社長として、バブル崩壊後ずっと右肩下がりの状況下において、どうやって競争力をつけるか、長距離運送という物流をいかに効率化するかを考えあぐんでいた。
 当時、「お客様からお預かりした荷物を安全かつ確実にお約束した時刻にお届けする」ために顧客の視点で情報の共有化を図ろうと考えた。具体的には求荷求車情報のネットワークによる共有化である。そこで同じ業界の比較的若手の経営者の会社8社が集まり、勉強会を開始し組合を作りその後除々に拡大していった。まず、大阪・神戸の方面の新物流の動きを視察した。
 加盟企業の荷物情報、車両情報を検索、契約ができるシステムを構築していった。これにより、1社ではできない業務を連携することにより解決を図った。情報化は弱者を強くし、目的達成をサポートするものと考えるに至った。
 「物流ネットワーク徳島」は立上げに1年間、成熟するまでに3年間かかった。
 ここで得たものは、お客様へのサービスのためにいかに情報を有効にコントロールして効率化を進めていくかが重要であるということである。

 以上例、「物流ネットワーク徳島」の誕生のきっかけから今日までの取り組みについて以下の通り流れ図にまとめてみた。

 本事例で学ぶべきことは次の通りと考える。顧客価値経営の精神、最初は小さいところから始めて徐々に大きく、気の合う仲間でモデル企業の視察に、支援施策の活用など共同化の基本ステップを着実に遂行していったことが重要な成功要因であり大いに見習うべき点である。


[流れ図]
●1980年代後半



[参考情報]
1.地域中小企業物流効率化推進事業
(1)目的
中小企業者によって構成される組合等が、物流機能の強化を図るために実施する共同物流システムの構築、受発注・輸配送情報ネットワークの構築等のテーマに係る調査研究・基本計画策定事業、事業計画・システム設計事業、実験的事業運営事業について補助するものである。
(2)事業の実施主体
中小企業団体の組織に関する法律(昭和32年法律第185号)その他の特別の法律に規定する組合、民法34条の既定による法人であって、主として中小企業者によって構成されるもの。主として中小企業者で構成されている団体であって、所管通商産業局長が必要と認めた団体。
(3)実施事業
①調査研究・基本計画策定事業
物流効率化のための調査・分析及び総論的な方向性を決める調査研究・基本計画を策定する事業。
②事業計画・システム設計事業
上記1.の総論的調査を踏まえ、具体的な事業計画又はシステム設計を行う事業。
③実験的事業運営事業
物流効率化のための、新規性、普及可能性のある事業をモデル的事業として開発し、実験的に運営する事業。
(4)補助率
国1/3、都道府県等1/3、組合等1/3

2.共同物流
(1)共同物流のメリット
 共同物流のメリットはそれぞれの立場により以下の通りである。

荷主企業にとってのメリット

・車両の積載効率の向上による配送コストの低減
・業務の標準化・簡素化により手作業、事務作業が軽減する
・ピークに合わせた車両の購入や設備投資が不要になる

荷受け側にとってのメリット

・納品に当たって入庫場所の混雑が解消できる
・納品が集約されているので納入回数が減り、荷受け・検品の手間が省ける
・手作業、事務作業が軽減する
・パレット・荷姿・外装表示の標準化により作業効率が向上する

生活者としてのメリット

・物流コストが減少することで物価が安定してくる
・トラックの交通量が減少し排気ガス、騒音などの環境保全になる
・道路の交通渋滞が緩和され住宅街や商店の迷惑が緩和される

(2)共同物流を成功させる条件
 ①リーダーシップ
  メンバーをまとめ牽引していく強いリーダーシップの存在が必要である。
 ②標準化
  共通ルールの整備と標準化が必要である。
 ③コミュニケーションに基づく信頼感
  参加企業の企業秘密の問題等もあり、何よりもコミュニケーションに基づく信頼感が必要である。
(3)共同物流の課題
地域内物流においては、地域間物流における鉄道や船舶等の環境負荷の小さな輸送機関へのモーダルシフト(注1)といった取り組みは難しく、最終的にはトラックに依存せざるを得ない。しかし、近年の荷主ニーズの多様化・高度化等を背景に多頻度・少量配送といった、非効率的になりがちな集配送が要求されてきており、今後この傾向は一層拡大していくものと考えられる。
このため、トラックの積載効率を高め、総走行台数の削減、総走行距離の短縮を図るとともに、環境負荷の小さな天然ガス車等の低公害車の積極的な導入を図る等の対応が求められている。
共同集配事業については、以前からその効果が指摘され、各地で検討がなされていながら、なかなか事業化には至らない場合が多い。その理由の1つとして関係者間の利害調整の難しさが挙げられているが、13年の国土交通省の発足を踏まえ、運輸政策審議会総合部会物流小委員会の中間報告においても指摘されているように、今後はまちづくりと一体となった取り組みを一層進めるとともに、地域の交通問題や環境問題を担う地方公共団体とも一層緊密な連携を図りつつ、交通需要マネジメント(TDM)(注2)も組み合わせた推進策に取り組む必要がある。

3.求貨求車システム
求貨求車システムとは、貨物を運ばせてほしいという求貨(空車)情報と貨物を運んでほしいという求車(貨物)情報を結び付けて(マッチング)、トラック輸送の効率化を図るものである。
 求貨求車システムの種類は以下のようなものがある。
(1)ビジネスモデルによる分類
 ①「掲示板」型
 運営者がネット上の掲示板に求貨求車情報を掲示し、求貨側と求車側は掲示板を見て、ほしい車両・貨物があれば、個別に商談を行なうもの。
 ②オークション型
 求車情報に対して運びたい事業者が運賃を提示し、最も安い運賃を提示した事業者が競り落とすものである。
 ③オペレート型
 運営者が求貨求車の両情報のマッチイングを行なうものである。
(2)運営主体による分類
 ①商社系
 ②物流事業者(物流子会社系)
 ③ベンチャービジネス系

 ④情報システム会社系
(3)運営形態による分類
 ①限定会員制(クローズド)
 ②自由参加制(オープン)

注1:モーダルシフト(modal shift)
 昭和56年に、運輸省政策審議会が省エネのために、トラック輸送に過度に依存した物流体系を鉄道や海運に転換する施策を答申。当初は、道路渋滞の解消、ドライバー不足や高齢化などの労働問題等、社会的制約要因から始まった取り組みであったが、近年、京都議定書をめぐる地球温暖化防止、大気汚染公害訴訟、自動車NOx法の特定地域等の強化など、環境に優しく効率的な大量輸送機関(鉄道・海運)へのシフト推進の意味合いが高まっている。

注2:交通需要マネジメント(TDM:Transportation Demand Management)
 国土交通省が推進する、都市交通の円滑化のための施策の一つであり、利用者の交通行動に対して交通需要を調整する手法。具体的には、ピークカット(時差通勤の呼びかけによりピークを平準化)、経路変更(渋滞情報提供によって交通量の分散をはかる)、手段の変更(公共交通機関利用促進)、発生原の調整(勤務日数の変更、通信手段の利用等により交通量を調整)、自動車の効率的利用(相乗り、協同配送等による積載効率を高める)などがあげられる。

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