事例本文(サンエス電気通信)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:39 サンエス電気通信(株)   事例発表日:平成12年10月12日
事業内容:電気、通信設備工事
売上高:不明 従業員数:136名
1998年12月
資本金:1億5000万円 設立:1958年4月
キーワード 電気・通信設備工事、

グループウェア導入、情報共有、データベースマーケティング
ネットウエア時代の経営戦略
  

サンエス電気通信(株) URL:http://www.sanesu.co.jp/

サンエス電気通信(株)代表取締役社長 宮田昌利氏
プロフィール

 1984年学習院大学経済学部経済学科卒業。サンエス電気通信(株)及び(株)サンエス・マネジメント・システムズの代表取締役社長。

~グループウエアによる情報の共有化を軸に、データベースマーケティングを図る~

 釧路において電気通信の企業を経営する宮田氏は、青年会議所など地域振興にも注力し、IT時代への対応を図るべく努力を続けている人物。事例講演では、まず前段として、アメリカがリードするIT時代、日本のIT化の現状などについてデータとともにレポート的な内容を述べられた。確実に時代をとらえている宮田氏は早速自社においてIT戦略を推進している。その一例が、グループウエアである。


■情報戦略の第一歩は、社内体制を見直すことから。
  今日、我が国でもIT化がかなり進んできていますが、時流に乗り、eビジネスをやろうとホームページを作ってもなかなかむずかしい状況です。まず、やるべきことは自社内の情報インフラの整備だろうと思います。例えば社内ネットワークの整備が挙げられます。といっても、ただコンピュータをネットワークに繋ぐだけではダメで、トップから全員がパソコンを使うような状況が必要です。
  また、企業の理念や方針を明確にし、それに合わせて組織を変え、意思決定のスピード、行動のスピードが求められる時代に対応できなければなりません。
  顧客満足を収益に変えていくマーケティングも重要になってきます。これは既存顧客中心の1to1マーケティング、あるいはカスタマーリレーションシップマネジメントということですが、決して難しいことではなく、今買っていただいているお客さんの管理をちゃんとしてあげているかどうかがベースとなります。
  それから企業にとって、いま会社が持っているリソース、優秀な営業マンの経験や知恵など、損益計算や貸借表には出てこない部分も重要なポイントであり、こうした情報の共有化も大切です。
  当社ではこうした状況をふまえて、グループウエア導入を図りました。まだ途中段階ではありますが、事例として皆さんにご説明します。

■自社を見つめ、ビジョンを掲げて、今年の重点目標をたてる
  まず、変革の時代において会社の新しい方針を作るために、中心メンバーを選定し、2000年4月期に社内でのプロトコルを作り上げました。自分たちのルール、自分たちのビジョンという意識を形にしたのです。会社組織はピラミッド型になっていますが、カンパニー制を導入し、責任や役割を明確にしました。
  当社、サンエス電気通信も子会社のサンエス・マネジメント・システムズも社名にサンエスがついています。サンエス=3Sとは、サービス、スピーディ、セイフティ、というお客さんを大事にする基本理念に基づいています。そしてまた、我々が目指すべき3つのSという意味では、サクセス(業績をあげて成功する)、セルフリアライゼイション(自己実現をする)、ソーシャルコントリビューション(税金を払ったり、地域に何か貢献したりする)。営業マンに大切な3Sは、スマイル、スピーディ、シンセリティ(誠実さ)です。
  こうしたことを確認しながら今年の重要点目標を作成しました。私たちがやろうとすることは、利益の出る事業、顧客の要望を先取りする、現在の事業を核としてはずれない、成長事業を行なうということです。高いクオリティの高成長企業を作って地域に貢献しようというものです。
  そのためにはどうしたらよいか。旧来の管理方法から新しい管理方法を社内で作ることが必要です。
  再編成の目的と重要点目標は何か。役割、責任、権限の明確化、利益主義。
  これらを徹底することでアクションプランもたてました。役職員研修も行いました。また、顧客との関係も見直しました。
  これらのことをしっかりとかためてから、いよいよグループウエア導入となりました。

■社内連絡から顧客情報まで、幅広く活用できるグループウエア
  うちのメンバーだけが入れるグループウエアで、ブラウザー上で使うものにしました。社内の情報共有を図るため、自社内にメールサーバーを置き、各自メールアドレスをもち、メーリングリストも作って活用しています。
  例えば、「社屋の塗装があります」という連絡がある部長から入ってきます。それから「演奏会が近々あります」「来週講演会があります」等々の連絡事項が回ってきます。カンパニーごとに分かれて行っていて、来春、ISO取得予定のサンエス電気通信では、それにあわせて社内に勉強会を設ける予定などもここで知らせています。グループ内で情報交換を進める重要な役割を果たしています。
  取引先の情報は、クリックすると、内容が出てきます。会社の理念、2000年度の方針、会社のカタログなどもここに入っています。
  また、新聞記事でおもしろいものがあった場合も、ここで見ることができます。今までの紙媒体だと誰かのところにだけ新聞、雑誌があって見逃しているものもありますが、この方法ではみんなで共有していくことができます。業界のニュースなども興味深いものがあれば、リンクをはって見られるようにしています。こうした仕事を行うサーバー管理者が社内にいるのです。
  顧客データベースは、社内のイントラだけでパスワードで管理されていて、お取引の状況が確認できます。当社の各部門ごとに、携帯電話やパソコンを売ったことなどがわかります。PCネットワークで何を売った、ドキュメントシステムでこういうものを売った、いつ頃リースが終わるか、まで顧客データベースに入れてあります。こういった情報が戦略には非常に大事になってきます。これがデータベースマーケティングです。
  データベースマーケティングについて説明します。例えば顧客別売上の順位表が作れます。お客さんが何千とあったらその中でいちばん多く買っていただいているお客さんは誰か。また、社内で扱っている商品別の売上額の順位はどうか。このようにしてわかる本当のお得意様にも、今まではほとんど一般のお客さんと同じように、年賀状を送るくらいのことしかしていませんでした。あとはたまに営業に行く程度でした。これからは、こういったお客さんを逃さないで、がっちりとフォローしなくてはなりません。売上20%を占めるお客さんはゴールド、などとクラスを設定して、ここには役員が半年に1回は必ず伺ってヒアリングをするとか、それなりのフォローをすることが大切な戦略なのです。

■時代に勝つための道具、インターネットをうまく使いこなそう
  皆さんの会社にも会計ソフト、販売管理ソフト、給与計算ソフトがあることでしょう。これらの基幹系あるいは勘定系のシステムからデータをうまく抽出しています。販売管理や会計ソフトからでも売上、売掛があがりますから、お客さんのデータを分析できます。こうして作成した顧客データベース上で色々な分析に応用していきます。そうすると、自社にとって、本当のお客さんは誰なのかが見えてきます。大事にしなければならないお客さんはどこか。どういうニーズがあるのか。それに応えてさらに顧客との絆を強くしていきます。
  新規のお客さんに対するアプローチは、インターネットのホームページでアンケート、クイズなどを行い、まだお客さんになっていない人を引き込むために色々な戦略をとることが必要です。
  コンピュータとかインターネットは道具という位置付けです。今、日曜日に大河ドラマで徳川三代をやっていますが、それを見て思うのは、やっぱり時代を制していくのは意志決定の早さであり、その時にいちばん強いもの、鉄砲とか、早い馬とか、を持っていかに使いこなしていくかということだと思います。国を治めてからもうまく生き残っていくために戦略をたてています。私たちにとってコンピュータやインターネットは、鉄砲や馬と同じように時代の道具なのです。ですから、これをうまく活用して、いまの会社の強みを活かしていく。そして、新規の強みとなるeコマースやASP等を活用して販売に結びつけていき、プラスアルファにしていけばいいのではないでしょうか。

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