関西カーゴ軽自動車運送協同組合連合会事例コメント

IT Coordinators Association
事例コメント
関西カーゴ軽自動車運送
協同組合連合会
作成者:前澤 三恵
ITC認定番号:0010052001C
作成年月日:2003年1月20日
■貨物自動車運送業の概況
 関西カーゴ軽自動車運送協同組合連合会は、軽配送を行う協同組合の連合会です。軽配送は俗称で、法律(貨物自動車運送事業法)で定められた正式名称は、 貨物軽自動車運送事業といいます。
 自動車運送業は、その輸送対象により貨物運送事業と旅客運送事業に大別され、一読しておわかりのごとく、前者は、宅配便のような貨物を運送する事業であり、 後者は、バス、タクシーなど人を運送する事業です。
 さらに、その貨物自動車運送事業は、一般貨物自動車運送事業と特定貨物自動車運送事業と貨物軽自動車運送事業に分けられます。 一般に有名なヤマト運輸や西濃運輸は、このすべてを行っていますが、当協同組合は、このうちの貨物軽自動車運送事業に特化して事業を行っています。
 貨物自動車運送事業は、第二次世界大戦中に戦時貨物輸送の需要に対応するため、鉄道事業とともに、政府により管理されておりました。 戦後になって、戦時中の酷使により鉄道網が麻痺状態に陥ったこともあり、トラック輸送の需要が増え、貨物自動車運送事業者がこの統合会社から離脱し、 発展し始めました。
 昭和30年代に入ると、日本経済は高度成長期を迎え、特に重化学工業化や工業の広域化が進行しました。 これに伴い、石油製品、鋼材等素材の輸送などに大口の需要が喚起され、貨物自動車運送事業は、特定の大口荷主に専属化される傾向にありました。 特定の貨物を大量に効率よく運送することによる低コスト化が、市場からの要望であったのです。
 昭和50年代に入ると日本経済は安定性長期を迎え、第二次産業から第三次産業へのウエートの転換により、特定荷主からの大型輸送需要が停滞しました。 他の業種と同じように付加価値やサービスに重きが置かれることなり、貨物自動車運送業も新しいサービスを開発しなくてはならなくなりました。
 宅配便という不特定多数の荷物つまり「大衆市場」をターゲットとしたサービスがヤマト運輸で開発されたのが、昭和51年のことです。 このサービスは、大成功を収め、昭和56年には、月間の取扱高が1000万個を突破いたしました。
 又、軽貨物自動車運送最大手である「赤帽軽自動車運送協同組合」は昭和51年に設立されており、昭和56年当時、全国にわたり、 44の赤帽軽自動車運送協同組合が設立されていました。
 このような流れの中で、昭和56年、理事長である小川氏が軽自動車運送業を開業されました。

■当協同組合のビジネスの特徴
 当協同組合のビジネスの特徴としては、ニッチマーケティング戦略の成功と協同組合による同業者の組織化が挙げられるでしょう。
(1)ニッチマーケティング戦略の成功
 同理事が軽配送広くはトラック事業に参入した当時は、上述のごとく、高いマーケットシェアを有する先行企業がありました。 このような状況下でとりうる戦略は、地域、サービスを絞り込み一点に集中するというニッチ市場戦略であるというのは、自明であります。
 物流サービスの方向性には、次のようなものがあげられます。(教育社:「陸運業界」より抜粋)
 1.迅速化 即集配、納期短縮など
 2.利便化 集配頻度の増加、緊急対応、営業時間の延長
 3.付帯サービス化 商品の据付、返品取扱、代引、受注
 4.特殊・専門サービス化 冷凍食品、高級品、引越荷物
 5.情報サービス化 荷物追跡サービス、荷主企業の在庫管理、経理処理代行
 6.総合物流サービス化 荷主企業の物流アウトソーサー化

同組合のサービスを上記に当てはめると下記のようになります。
・24時間体制の緊急配送(スポット)-迅速化、利便化
・必要なときに30分以内に集配する緊急配送(スポット)-迅速化、利便化
・注文や集金も行うビジネス定期-付帯サービス
・荷物をあずかってから3時間以内に関西から東京に届ける「ハンドキャリー」-利便性、迅速化

 また、マーケットは大きく分けると、一般消費者と事業者に分けることが出来ます。
先行企業は、高いマーケットシェアと全国展開のメリットを活かし、一般消費者と事業所の両方に等しく力を入れています。 特に引越しなどの一般消費者向け事業に力をいれております。
 一方当協同組合は事業者向けに注力し、一般消費者向けの事業はほとんど行っておりません。 当協同組合の主力サービスである必要な時に必要なだけ30分以内に伺って商品を運ぶ「緊急配送(スポット)」と、配送業務に限らず、 注文、集金などの業務も行う「ビジネス定期」、飛行機・新幹線等を利用して荷物を預かってから3時間後に東京に届ける大手の宅配業者にも勝てる 物流の隙間産業の部分である「ハンドキャリー」の3本柱はすべて事業者向けのサービスであり、この部分で高いシェアを有しています。 特に、ハンドキャリーは、事業者からのニーズは高いが、 標準化しがたい業務でありこの仕組みづくりは規模が大きい競合他社には手が出しがたく同社にとっての強みであります。

(2)協同組合による同業者の組織化
 同組合のビジネスの特徴としてもう一点あげられるのは、組合組織を選択したことにあると思います。
 貨物自動車運送事業者は、99%が中小企業者であり、信用力、規模の経済等のメリットを享受することが出来ません。 また、単独の事業者では、情報化などの投資にかける費用も難しいでしょう。 かといって、個々の独立した事業主が行っている事業を完全に統合し、一企業とすることは、困難です。 協同組合化はスケールメリットと独立性の両方のメリットを活かす良い方法です。組合といっても色々種類がありますが、 代表的なものを下記に記載いたしました。

組合制度の比較
組合の名称 事業協同組合 企業組合 協業組合
目的 組合員の経営の近代化、合理化、経済活動の機会の確保 働く場の確保、経営の合理化 組合員の事業を統合、規模を適正化し生産性向上、共同利益の増進
設立要件 4人以上の事業者が参加すること 4人以上の個人が参加すること 4人以上の事業者が参加すること
組合員資格 地区内の小規模事業者 個人 中小企業者及び定款で定めたときは、4分の1以内の中小企業者以外の者
設立発起人 有限責任4人以上
1組合員の出資限度 100分の25 100分の25 100分の50
法人税率の軽減 軽減あり 一般法人と同じ

■情報化への取り組み
 近年の多品種多頻度配送へのニーズ、SCMによる物流の変革は、同協同組合にとってチャンスといえるでしょう。 受発注システムや少ない配車で最大の効果を生み出すことが可能なような配車システムの構築が望まれます。 しかしながら、配車システムのようなアプリケーション・ソフトウエアの開発には、コストと時間がかかるため容易に導入できるものでなく、 これらはまだ同協同組合には導入されていません。現在、経済産業省、全国中小企業団体中央会、中小企業庁等ITの導入に対し数多くの助成が行われています。 こういった助成金には、ハードウェアやソフトウェアの導入費用の助成のみならずITコーディネータに業務を委託する場合の費用の助成もありますので、 積極的な利用が望まれます。

 競合組合である赤帽軽自動車運送協同組合連合会は、平成13年度情報技術活用型経営革新支援事業の、 業務アプリケーション・ソフトウエア開発事業の助成制度を活用し、配車システム、貨物追跡システム等の受注支援ネットワークシステムの構築を行っています。
 これは、全国に組合員を持つ赤帽が、自社の弱みである全国組織であるが故のサービスの不均一、情報伝達の遅さを克服するために導入されるものです。 商品販売管理システムなどの一般的管理システムも導入されますが、下記のシステムをメインとして導入されたようです。
① 配車業務システム
 組合員への配車指示(発地・着地・担当者・電話番号)を移動中の組合員に対し行う際、携帯電話・無線にて指示を行う代わりに、 携帯電話にE-mailで指示が行えることにより運転中でも正確な配車指示を受けることが可能になるというものです。
② 貨物追跡システム
 通販商品等の宅配業務における荷物の状況管理を行う。
配送センターにおいて荷物の入出荷時にハンディーターミナルによりデータ入力を行い配達完了時に組合員がiモード携帯にて完了データ入力を行う。
この荷物状況データをインターネットにて、荷主に対して公開することにより荷物状況のリアルタイムの提供が可能になります。

 こうした荷物追跡システムや配車システムは、大手の宅配事業者では既に標準的に導入されているようですし、 同業の赤帽でも導入されていることから今後運送業では標準的に導入されるシステムになることが予想されます。
 しかしながら、競合他社が一般消費者も含めた広いマーケットに対応するシステムを必要とするのに対し, 同協同組合では事業者を顧客とした場合のシステム作りが必要となるため競合他社とは注力すべきシステムが異なると考えられます。 また、同協同組合の主力サービスの一つである「ハンドキャリー」は、他地域の他社との提携が必須であるため、提携会社とのシステムの共通化が難しいと思われます。 業務に精通した外部専門家のアドバイスを受けながらのシステムの導入により、業務に生きるシステム導入が可能になるのではないでしょうか。


参考URL

ヤマト運輸株式会社
http://www.kuronekoyamato.co.jp/

全国赤帽軽自動車運送協同組合連合会
http://www.akabou.jp/

社団法人全日本トラック協会
http://www.jta.or.jp/

全国中小企業団体中央会
http://www.chuokai.or.jp/index.html

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