事例本文(トーマツコンサルティング)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:51 トーマツコンサルティング(株)   事例発表日:平成12年10月10日
事業内容:監査法人
売上高:不明 従業員数:126名 資本金:1億1000万円 設立:1993年4月
キーワード 監査法人、

IT化の提言
情報技術の活用と企業経営
  

トーマツコンサルティング(株) URL:http://www.tcc.tohmatsu.co.jp/

トーマツコンサルティング(株) 江藤 洋氏
プロフィール

 1974年鹿児島大学卒業後、民間企業でシステム部門の仕事に関わる。91年、監査法人トーマツに入所、97年からトーマツコンサルティングの常務取締役としてコンサルティングに従事。情報部門の中小企業診断士の認定取得。

~IT化により、時代はこれだけ動いている~

 企業に関する情報システム分野において豊富な実績とノウハウを持つ江藤氏。IT化のもと、今ものすごい勢いで変わりつつあるさまざまな事象を掲げていただき、そこから我々の目指すべき方向、取り組み視点を説いていただいた。


■IT化を感じさせる、3つの逆転
  まず、ここ1年くらいの間に、私自身、個人的には非常にエポックメーキング的だと思った3つの出来事がありました。これを3つの逆転という言葉で表しています。1点目は、携帯電話の加入者が固定電話のそれを逆転しました。携帯電話はすでに電話の機能を突破し、情報端末、つまりコンピュータの機能を持った携帯機器といえます。iモードの加入者は2000年7月末の時点で1,000万人を越え、その後もさらにものすごい勢いで増えています。2点目は、パソコンの出荷額がカラーテレビを逆転しました。高度成長の代表的なフロントランナーであったカラーテレビに代わるものとして、パソコンが成長してきています。3点目は、データ通信の通信料が音声の部分を逆転しました。このように、今まで主流となっていた固定電話、カラーテレビ、音声電話が、新たな機器の登場によって立場が逆転され、がらりと世の中が変わっていくものと思われます。
  他にもいくつかの象徴的な事例を上げてみます。
  インターネットの普及率が2,700万人、世帯普及率は約20%、つまり5世帯に1世帯はインターネットをやっているということです。2005年にはこれが7,650万人になるだろうというNTTの予測が出ています。
  iモードはものすごい勢いで増えています。松下電器産業の中村社長は、ニューエコノミーとオールドエコノミーの捉え方の中でiモード端末を武器にしているそうです。NTTドコモの携帯電話は全てiモード仕様になるということも発表されました。
  デジタル放送は2000年12月にスタートします。都市銀行はパソコンバンキングからテレビバンキングへ拡げ、家庭の中にATMが入ってきます。
  こういったもろもろのことがITという言葉で表せられる事象かもしれません。

■ネット社会がもたらす、さまざまなビジネスの変化
  では、ネット社会とはどのようなものでしょうか。
  ブリタニカは歴史的な百科事典の会社ですが、60何巻かの百科事典事業を止めてしまいました。なぜかというと、マイクロソフトがCD-ROM1枚で百科事典を作り、ブリタニカほどの中身はないにしろ、みんなそちらに行ってしまったからです。一時期700億くらいあった売上がどんどん減ってしまい、ブリタニカ自身もまた電子出版事業に転換してしまいました。
  青空文庫をご存じでしょうか。今、本屋さんに並ぶ本は毎日ものすごい数が出ていますが、10年くらい前に出たあの本が読みたいとか、絶版された本が読みたいというニーズがあります。それをネット上から配信するビジネスです。著作権などの問題はありますが、一般大衆が望むものが、必ずしも紙という媒体を経由しなくてもとれる時代になっているのです。
  オンラインショッピングでは楽天市場が有名ですね。店頭公開してたくさんのキャピタルゲインを得たとして脚光を浴びています。5万円の出店料を出せば、楽天というWebサイトの中の仮想市場が作れます、という商売です。最近は、あまりにも多くの出店がありすぎて、ユーザーサイドからは使いづらいという批判も出てきているようです。
  インターネットモールは色々なところでやっています。地方の非常に伝統のある酒屋さん、小さい企業で、なかなかそれまで売り先がなかったのが、ネット上で販売を始めることにより、ある程度の量がさばけています。
  オンラインの証券取引も、従来の店頭窓口でやる株の売買に比べて100分の1のコストで済むということで、松井証券などが積極的に進めています。
  国境を越えた取引の例では、最高のものを最も低いコストで調達する仕組みができつつあります。"EC"いわゆるエレクトリックコマースといわれるカテゴリーです。電子自治体もEガバメントと言われ、色々な申告手続きや届け出をどんどん電子申告に移していこうという動きが出てきています。2005年くらいにはかなりの部分が電子媒体による受付になっているのではないでしょうか。

■送り手と受け手、勝ち組負け組の法則も変わる
  色々な事象をあげてきましたが、それでも「俺の所は関係ないよ」と言う方はそれで結構です。ただ次のような状況が出ていることは理解していただきたいと思います。
  1)顧客の転換、並びに顧客パワーの拡大
  これまではどちらかといえば生産者主導、送り手側が強い時代でした。いいものをいっぱい作ってどんどん流せばみんなが買うだろうという考え方でした。それが消費者主導、顧客主導に変わりつつあります。あなたが欲しいものを私が提供しましょうという考え方です。代表的なものは、パソコンのデルコンピュータです。あなたの希望のパソコンを1週間以内にお届けしますということで、ハードディスク、ディスプレイ、プリンター、ソフト、などお客様が要望するものを組み合わせて作り上げて提供する仕組みです。ここには、中抜きという現象が出てきています。中間業者の消滅です。これは、日本でも松下電器など家電メーカーがネット販売を始め、従来あった系列店などを飛び越えてダイレクトに顧客に販売する方式を取り入れたことにも見られます。そういった意味では、中間業者はいったいどういった事業で生き残っていくのか考えなくてはなりません。配送、代金決済、アフターメンテナンス、色々考えられると思います。

  2)技術革新がものすごい勢いで進んでいる
  情報の伝達速度と伝達範囲が飛躍的に向上しています。365日24時間、世界中でのサービス提供が可能だということです。大阪証券取引所にナスダックができましたが、ナスダック本体はアメリカにあり、今度はヨーロッパにナスダックユーロも作ります。そうするとナスダックは世界中で24時間回り続けるマーケットになり、そこに株式上場した企業にとっては非常に流通性の高い魅力があることになります。また、勝ち組企業は1人か2人、みんなが勝てる時代はもうありません。3番手、4番手はもうかなり厳しいでしょう。先行者が全てをさらう、先手必勝的なビジネスモデルを作ったところは成功すれば大きな利益を享受できるということです。このビジネスモデルは、ビジネスの仕組みそのものをITと組み合わせることによって特許となるものです。お金の儲け方なり、仕事のやり方なりの独自性、差別性には価値があるということです。目に見えないものも価値を呼ぶ時代です。トヨタ自動車のカンバン方式はジャストインタイムと呼ばれる管理方式ですが、これもビジネスモデル特許となっています。

■新たなビジネスチャンスを見いだすポイント
  次に、ECの具体的なお話をしましょう。
  BtoBとは、企業間のインターネットを活用した電子商取引です。どのくらいの市場規模かというと、通産省(当時)の調査では2003年までに日本で68兆円、全ての商取引の10%以上がBtoBになるとされています。ネット上でこういう機能が出てくると、不特定多数の顔の見えない買い手がある共通のマーケットの中で取引が成立するようになります。特に自動車、電気など重厚長大型の素材産業の中には、まさにこのような動きがあります。Eマーケットプレイスとか、Eプロキュアメント=電子調達といういい方をされますが、まさにBtoBのいちばんおいしい部分であり、従来の考え方を根底から崩すやり方です。これまで強みだった、がっちりした下請を持っているとか強力なチェーン網を持っていることが、逆に弱みになってしまうのです。系列や過去の実績が意味をもたなくなり、従来からおつきあいしているからそのまま取引が続くということはなく、1円でも安いほうがいいとなればそちらから調達するということになります。こうして業界や国境を越えた市場が出てきています。
  それから、ASP(アプリケーションサービスプロバイダー)も出てきています。これはソフトウエアを自分で持つのではなく、必要な時に必要なだけ使えばいいというものをうまくマーケットプレイスの中に折り込んだサービス事業です。
  BtoBによるEC導入の目的としては、調達コストを下げる、取引条件をガラス張りにする、本当に儲けさせてくれるところこそ我々のパートナーだという絞り込みができるということです。例えば部品メーカーは選ばれると同時に、親会社を選ぶ逆選別もありうるということです。お互いに競争力のある関係を実現するのです。
  これに対し、BtoC、消費者向けのコマースはなかなか大変です。成功しているところはあまりありません。従来の取引コストからみると、米国の例では、銀行取引にしても旅行予約にしても株式取引にしても、極端な話、100分の1くらいのコストダウン効果を実現しています。今現在、日本におけるECのビッグプレイヤーとして、大手コンビニエンスチェーン、ソフトバンク、ソニー、トヨタなどがありますが、BtoB、BtoCのマーケットをにらんで、商流と物流、ロジスティックの流れとお金の流れを、ひとつのネットの中でかなりの部分をサポートしようとしていると思われます。日本におけるプラットホームとしては、パソコン、テレビ、携帯電話、ゲーム機、コンビニエンスストア等があげられます。皆様の事業がさまざまでしょうが、どういったものが使えるのかを考えていかなくてはならないと思います。そこにビジネスチャンスが見いだせるといえましょう。

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