事例本文(鳴海屋紙店)

出典:ITSSP講演事例 IT Coordinators Association
事例本文
事例番号:56 (株)鳴海屋紙店   事例発表日:平成13年11月14日
事業内容:紙類及び紙加工品に関する製品の卸、販売
売上高:8億円
2000年度
従業員数:22名 資本金:1000万円 設立:1955年7月
キーワード 紙類・紙加工品卸・販売、
トップダウンでの情報化、顧客・仕入先・社員満足度達成、
「我が社の経営戦略とIT革命」
  

(株)鳴海屋紙店

(株)鳴海屋紙店 代表取締役社長 鳴海幸一郎氏
プロフィール

平成2年 大永紙通商株式会社(現国際紙パルプ商事株式会社)入社
平成5年 株式会社鳴海屋紙店入社
平成6年 同社専務取締役を経て 平成9年より代表取締役社長に就任

~サッカー型組織と情報化促進で「満足度100%達成」の実現へ~

鳴海屋紙店は、明治16年創業の仙台で120年続く紙類卸・販売業の老舗である。老舗にありがちな組織面の問題、小規模紙卸売業の厳しい市場環境という経営課題を克服するために、社長の鳴海氏の打った手は何か?


■会社概要
企業名 (株)鳴海屋紙店  設 立 昭和30年7月 (明治16年創業) 
代表者 鳴海 幸一郎  資本金 10,000千円
社員数 22名 売上高 8億円 (2000年2月期) 
業 種 紙類および紙加工品に関する製品の卸、販売業
事業内容 紙器用板紙、印刷用紙、家庭用紙製品、七夕製品、和紙卸業

■突然の社長交代、まずは経営者自らITを知り、経営改革に活用
  鳴海屋紙店は、明治16年(1883年)創業の、仙台で120年続く、紙類卸・販売業である。現社長の鳴海幸一郎氏は、平成9年、先代の急逝により、突然の社長就任を余儀なくされ、準備の間もなく経営を引き継いだ。
  幸一郎氏は、着任と同時に、従業員30名弱という自社の組織力拡大を図るため、競合他社に先駆けた戦略的な情報化による経営改革の着手を全社員に宣言し徹底した。
  まず、情報化によって、各人の業務を複合的にスピーディにこなせる体制を整備するため、経営者自らがITに触れ、使いこなせる準備をした。中小企業における情報化推進では、専任者の設置が難しいため、どうしても社外の専門家の力が必要となる。パートナーとしてそれら専門家を活用するには、発注者である経営者にも、対等に彼らと話せて価値評価できる目が求められる。そこで、鳴海氏は、1台のパソコンを購入して、それが壊れるまで試行錯誤を繰り返し、そのメリット、デメリットを探った。
  並行して、戦略として掲げた「サッカー型組織による経営」(各自が、メイン業務だけでなく、情報共有しながら、状況に応じ他者の業務も支援し、共通目標実現に最善なフォーメーションでフレキシブルに対応する)の具現化に必要な情報化構想を、地元のコンサルタントSEに相談しながら進めていった。この際、コンサルタントには、自分と同じ視点に立って、情報収集や提案することを要求し、鳴海氏の方は、不明な点は恥ずかしがらず「わからない」と表明し理解を深め、より効果の高い情報化構想を構築した。

■「満足度100%達成理念」を掲げ、業務指標を設定し、情報化推進
  2003年の創業120周年という節目に向け、「社員の満足度100%達成」をスローガンに掲げ、社員1人1人に、考え方や気質、発想を転換させ、目標を数値化して、「顧客」「仕入先」「自社」の満足度達成率がわかるよう計画をたてさせた。
  また、コンピュータ西暦2000年問題を好機として捉え、そのクリアのためのデータ移行に全社員を関与させた。コンピュータの経験により、入力効率に大きな差が生じたが、年齢差を越えて、リテラシの高い社員が不慣れな者に教育を施し、全社としてのレベルアップを図った。
  これらの地道で着実な、次代への準備を踏まえ、迫り来る2000年への対応のため、業界標準パッケージを選択し、その導入には、ユーザの言葉でコミュニケーションがとれるSEを選んだ。これで、仕入れから販売までの工程を管理し、顧客にも社員にとっても、自社業務の状況が即時に把握が出来るようになった。

■コミュニケーションがあって初めて活きるIT
  鳴海氏は、特に情報化における失敗は、その解決のための経験を、バージョンアップと捉える。また、どんなにIT化が進展しても、商売は対面が基本、と言い切る。
  情報化が浸透するに従い、当社の経営はオープン化され、顧客には正確な情報がデジタル的に提供できるようになった。一方、社内の情報交換は、あえて手書き日報への社長書き込みの仕組みを残すなど、アナログ部分も大切にし、コミュニケーションにメリハリを持たせるよう工夫した。
  そして、情報化で省力化され、発生した余裕を、日常のランニング業務から将来を築くためのチェインジング業務(CD-ROMを用いた企画型提案による販路拡大等)へと転換し、顧客/仕入先/自社、3者の満足度100%達成実現を目指す。
  最後に鳴海氏は、IT=人であり、ITは、Information&Communication Technology(ICT) となってこそ、機能するものだ、とまとめた。

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