事例本文

出典:財団法人ひょうご中小企業活性化センター
経営改革・IT化事例(発表済事例)
事例企業 いわさき歯科(Z003) 事例発表日 平成15年3月
事業内容 歯科医院
売上高 従業員数 17名 資本金 設立 1993年
キーワード 医療、歯科医院、ITリテラシ向上


患者さんのサービス向上のために、
パソコンをフル活用しています。


ワープロでは誰にも負けない自信はあっても、パソコンのことは何も知らない。 そんな岩﨑さんは昨年9月から地元のパソコン教室へ通いはじめた。 セミナー資料の作成や配布物作成にフル活用。患者さんとのコミュニケーションも円滑になった。




いわさき歯科 岩﨑 小百合さん(39歳)

夫の岩﨑義夫院長とともに「いわさき歯科」の経営に携わる。一方で全国各地の歯科医院から依頼を受けスタッフの教育も手がける。 「継続通院したくなる歯科医院スタッフの育成計画」など2冊の著作がある。

ワープロにできること、パソコンでしかできないこと

 医療機関のコンピュータといえば、レセプトコンピュータを真っ先にイメージする。レセプト(診療報酬請求書)を発行するための専用コンピュータだ。
 岩﨑さんが夫である岩﨑義夫さんと共同経営する「いわさき歯科」には、このパソコンの他に窓辺に小さなパソコンがある。 4年前に購入したものだが、これが岩﨑さんが出会った最初のパソコンだった。
 「夫がドイツで開かれる『国際インプラント学会』で講演する際の資料を作ったのが、このパソコンの初仕事でした。 でもまだ十分な知識もなく、上手に使いこなすことはできませんでした」
 岩﨑さんは、かって歯科衛生士学校で教鞭をとっていた。講義の資料を作成したり、試験問題を作ったり、仕事でワープロは欠かせない道具だった。 だが、パソコンとなると話は別。マニュアルと首っ引きで練習をしたせいでそこそこに使いこなせはするのだが、分からないことも多すぎて納得がいかない。 このままでは埒があかないと感じた岩﨑さんは、パソコン教室に通い一から勉強し直すことにした。
 「いわさき歯科のこれからを考えた時、パソコンはどうしても欠かせません。きちんとした勉強をしておきたいと思ったんです」

頼もしい味方パソコン、今や欠かせない道具

 レッスンは、講師の先生とのマンツーマン。何事も、徹底してやり遂げないと気が済まない岩﨑さんだ。
 「最初に習ったのは『Power point』。 4年前に、自分の納得のいく講演資料を作れなかったので、以前からどうしても絶対マスターしたいって思っていたんです」
 岩﨑さんは、全国の歯科医院に請われて、女性スタッフ育成のセミナーでたびたび地方へいく。その際、セミナーで発表する資料作りにも役立つ。
 「その次に習ったのは『Word』です。いわさき歯科でお客さまに渡す配布物や、待合せ室に掲示するオリジナルの案内を作りたかったんです」
 病院や医療機関で掲示されたり手渡されたりする配布物は、とかく無味乾燥したものが多い。 だがいわさき歯科の場合は、イラストや写真も取り入れたカラフルなものが目につく。これも『患者の立場に立った歯科医院』という理想をめざす一環だ。
 「かわいらしいイラストが入っていたり、きれいなカラーで印刷されているだけで、受け取る側の印象はずいぶん違ってきます。 きれいなものだったら大事にしてくれるかも知れないし、ちょっと読んでみようかなという気になってもらえる。 でもそれが、味も素っ気もない文字だけの紙だったり、原本を複写しただけのものだったりしたらきっと読んでもらえない。 気がついたらどこへいったか分からないということにもなりかねません。いわさき歯科とお客さまとの関係も、それだけ薄れていくと思うんですね。 こうしたちょっとした工夫を凝らすことで、お客さまとの間にいい関係を築いていきたいんです」
 岩﨑さんにとってパソコンは、手軽に低コストでそのためのキッカケを作ってくれる、実に頼もしい味方なのだ。
 「レッスンを受けてあらためて思ったのは、もしも私がパソコンやワープロについて知識が何もない段階から始めていたらすごく時間かかっていただろうということです。 でも、ある程度理解できている私でも、教室にいけば新しく覚えることがたくさんある。 きっと習ったことは、コンピュータの能力のほんの数%にしか過ぎないんでしょうね。 だから、とりあえずさわってみてから飛び込んでみるというのも、これからパソコンを始められる方には選択肢のひとつかも知れません。 またパソコンは、文字の世界だとばかり思いこんでいたんですが、実は映像や画像の世界なんだという印象を強くしました。 そんなイメージでこられたら、きっと楽しめると思うんです」

アイデアはいっぱい、新しい歯科医院をめざして

 岩﨑さんの知識欲は、まだまだ旺盛だ。パソコンを使ってこんなことができないかという新しいアイデアが、頭の中で次から次へと沸き出してくる。
 「たとえば診察台のすぐ脇にノートパソコンをおき、 「Power point」の「スライドショー」を使って歯周病について患者さんに説明するようなこともしたいなと思っているんです。 また配布物に載せるイラストは、今まだソフトウエアを使いこなすだけのテクニックがないものだから版権フリーの題材を使っていますが、 いずれはオリジナルの絵をかけるようになれればいいなと思っています。次はぜひ、ペイント系や画像処理のソフトも勉強したいと思っているんです」
 またいずれは、オリジナルのホームページを作る講座にもチャレンジしたいと岩﨑さんはいう。
 「管理が大変なので、まだ立ち上げまではいかないと思いますが、将来的には必ず作りたいと思っています。 できればサーバーなどの管理は、女性のスタッフにまかせたいですね。 違う世界を見ることで彼女たちも気持ちが和むし、楽しいことがいっぱいある歯科医院って面白いじゃないですか。 だから彼女たちには、休み時間にパソコンをおもちゃにしていいよっていってあるんです」
 

 ゆくゆくは女性スタッフたちのために、IT講習会を院内で開いてみることも考えたいという岩﨑さんだ。
 最近は、歯科医療向けのさまざまなソフトウエアが出回っている。捜しまわれば、イメージにピッタリのものがもしかするとあるかも知れない。 だが岩﨑さんは、あくまでオリジナリティにこだわりたいのだという。
 「私たちは、お客さまとの接点でちょっとした工夫を凝らすことで、便利さや快適さ、 知らなかったことが分かって少し得したなという気分をお届けしたいと思っているんです。 だから、お金を出して高い市販ソフトを買ってくるのではなくて、自分のところにあるものでできればもっと面白いし楽しいと思うんです。 もちろんそれが口コミとなって多くの人たちに伝わり集客につながれば、もっと素晴らしいですよね(笑)」




【Power Point(ぱわーぽいんと)】
米・マイクロソフト社のプレゼンテーションソフト。各種の企画書の作成、OHP資料の作成などに活躍する。
【スライドショー(すらいどしょー)】
「Power Point」に搭載され多機能のひとつ。 プレゼンテーションを行う際、コンピュータの上に複数の画面をまるでスライドを連続的に映し出すように表示する機能。

<出典>
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
2003年3月発行 IT活用奮闘記(ITなんてこわくない)
筆者:六田 伸彦氏(ろくだ のぶひこ)
 (株)ジェイ・シー・エヌ 代表取締役
 ITコーディネータ(0006652001C)・ITCA公認インストラクター、
 ITSSPアドバイザー、中小企業事業団登録IT推進アドバイザー

本事例のお問合せ先:
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
産業情報部 情報推進課 八木課長様(078-291-8503)

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