事例本文

出典:財団法人ひょうご中小企業活性化センター
経営改革・IT化事例(発表済事例)
事例企業 株式会社エス・ティー・エス(Z004) 事例発表日 平成15年3月
事業内容 不動産売買・賃貸斡旋・管理
売上高 従業員数 資本金 設立
キーワード 不動産業、不動産売買・賃貸斡旋・管理、ITリテラシ向上


難しいことは分からなくても、
どう使えるかを知ることが大切です。


地場の加古川で多くの人から高い信頼を勝ち得ているSTS。 その強さの秘密は、ユーザーを裏切らないていねいな仕事とITを駆使した情報サービス。 夫と二人三脚でSTSを支えてきた石橋昶子さんも、パソコンを最大限に活用している。




株式会社エス・ティー・エス 石橋 昶子さん

個人営業の時代も含めると20年あまりの実績を有する不動産サービス会社のSTS。 取締役として、経営を支えてきたのが石橋昶子さん。社内では、主に賃貸のサービスを担当。

あらゆるサービスを提供、「石橋不動産」でない理由

 多くの不動産会社は、経営者の名前を冠するところがほとんどだ。STSは、その数少ない例外のひとつだ。
 「このことひとつをとってみてもお分かりいただけるように、当社は他社にないサービス、独自のサービスを追求しているんです」
 石橋さんは、いくつかの例を挙げて紹介する。
 「例えばSTSは、自社管理物件だけでなく、ときには採算を度外視して他社の物件にまで選択範囲を広げ、 ユーザーの要求に100%合致するものを探し出そうとします。またSTSは、本来違法なチラシを使った勧誘や情報提供は一切行っていないんです。 地域に密着し、地域とともに発展するのが不動産業の本体の姿。 街の美観を損ねてまでビジネスを考えるより、地域の人びとに信頼されるサービス提供をめざしていこうというのが私たちの考え方です」
 そんな姿勢をかたくなにまもり続けるSTSは、飛び込みで来店し成約に結びつくケースより、紹介客が圧倒的に多い。 多くの不動産サービス会社は、駅前のビルのしかも1階に陣取っているケースがほとんだ。 STSが駅から離れた場所にあり、しかもビル2階にオフィスを構えているのは、何よりもの大切な財産として維持していきたいという考え方の表れでもある。

インターネットを駆使して他社とはひと味違うサービス

 そんなSTSにとって、ITはサービスのオリジナリティを高める上でなくてはならない重要なビジネスツールだ。 例えばインターネット。STSでは、情報収集のツールとして最大限に活用している。
 「不動産の場合は、権利関係が複雑にからみ合っています。土地を扱う場合、それがどんな土地なのか、徹底的に調べる必要があります。 以前は不動産の所有権や担保状況など詳しい情報を収集するために、地方の法務局などに足を運んでいましたが、 最近ではあらゆる土地関係のデータベースが充実しています。 例えば「国有財産売却物件情報」は、所有者の氏名、どこが競売にかかっているのかや路線価などをいながらにして、情報収集することができます。 時間の短縮につながれば、それだけお客さまの満足度もアップするはずです」
 またSTSは、自社のホームページも情報発信の窓口として重視している。
 「情報流通のチャネルを広げるために、主だった検索エンジンをはじめポータルサイトにも進んで登録し、情報提供を行っています。 だから当社では、遠く離れた地域の方からの問合せが多い。一人でも多くのお客さまの目に触れていただくことが大事だと思っています。 たとえそれが直接のビジネスにつながらなかったとしても、記憶の中の片隅に当社の名前をとどめていていただければ、 いずれそれがビジネスチャンスへとつながっていくかも知れません」
 STSはすべてにおいて、そんな考え方をとっているのだ。

半年間教室に通って基本操作を勉強

 インターネットをビジネスのツールとしてごく日常的に使う石橋さん。 もっとも、その石橋さんも、ついこの間まではスイッチを入れるくらいのことしかできなかったという。
 「それで2年ほど前、半年間だけ近くのパソコン教室に通ったことがあるんです」
 レッスンは週1回。「Word」「Excel」の基本操作を勉強した。
 「実は私がいく前に、息子と女性の事務スタッフを同じパソコン教室に通わせていたんです。 息子はレッスンで勉強した内容をもとにして、「Excel」を使ってオリジナルの請求書や見積書を作成しました。 そのテンプレートは、いまでも社内で愛用しています」
 半年間とはいえ、石橋さんも「Word」についてはほぼ思い通りに使いこなせるまでになった。
 「思ったほど難しくないというのが私の印象です。最初は何かを操作することに対してとても臆病だったんです。 しばらくするとそれにも慣れて、自由にいろんなところを操作しているうちに、アッそうかと思える時がくるんです」
 仕事はもちろん、最近はプライベートで、例えば旅行先の情報収集などにも頻繁に用いているという。


トラブルをつくらないこと、それがサービス

 不動産の仲介サービスでは、賃貸であっても売買であっても、売り手と買い手の間でトラブルが発生しやすい。 だがSTSの場合は、極端に少ない。そこにも顧客から寄せられる信頼の大きさが表れている。
 「多くの不動産会社は、トラブルが起こると、仲介業者であるとを理由にして積極的にそこに関ろうとはしません。 それが売り主、借り主の不審を招く原因にもなっているんです。しかしSTSの場合は、トラブルの問題解決がはかられるまで、あらゆる手段を尽くします。 ときには法律の専門家を紹介したり、自ら話し合いの場に参加して妥協点を見出すべく最大限の努力を払います」
 そればかりではなく、STSの場合は、最初の段階からさまざまな情報を収集し、将来トラブルに発展しそうな可能性のある場合には、 事前にそのトラブルの芽を摘み取っていく。
 「だからトラブルの発生軒数そのものが、極端に少ないんですよ」
 見せ掛けだけの言葉ではなく、徹底して本質を追求していることが、STSの本当の意味での強味となっている。
 




【PCカード(ぴーしーかーど)】
携帯性に優れたモバイルコンピューティングの必須アイテム。名刺サイズでカードの厚みにより3種類ある。 フラッシュメモリーカード、FAXモデムカード、デジタルセルラーカード、ハードディスクカード、ネットワークカードなどがある。
【スキャナ(すきゃな)】
絵や文字などの原稿を、画像情報に変換する装置。受光素子を走査(スキャン)させ、原稿の光の反射量や透過量をとらえることができる。

<出典>
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
2003年3月発行 IT活用奮闘記(ITなんてこわくない)
筆者:六田 伸彦氏(ろくだ のぶひこ)
 (株)ジェイ・シー・エヌ 代表取締役
 ITコーディネータ(0006652001C)・ITCA公認インストラクター、
 ITSSPアドバイザー、中小企業事業団登録IT推進アドバイザー

本事例のお問合せ先:
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
産業情報部 情報推進課 八木課長様(078-291-8503)

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