事例本文

出典:財団法人ひょうご中小企業活性化センター
経営改革・IT化事例(発表済事例)
事例企業 株式会社エントリー(Z005) 事例発表日 平成15年3月
事業内容 オートバイ販売・サービス全般
売上高 従業員数 20名 資本金 設立 1979年7月
キーワード 小売業、オートバイ販売店、ITリテラシ向上


始めなければ始まらない。
パソコンだって同じです。


1年間欠かさず通ったパソコン教室。山本さんはそこで学んだ知識や経験をもとに、自社のホームページを作成。 近い将来はサイバーモールへの出店や、ネットオークションへの出品も計画している。新しいビジネスチャンス獲得へ期待も膨らむ。




株式会社エントリー 山本 郁代さん(56歳)

バイクショップとして兵庫県下に5店舗を展開する「エントリー」。山本さんは山本信行社長と二人三脚で、同社をここまで育て上げてきた。

社長はバイク、私はパソコン

 西明石の「エントリー」といえば、バイクファンの間では名の知れた存在である。 世界的名車「Z1/Z2」の生みの親・山本信行氏(現社長)が、川崎重工を退社してつくったバイクショップだ。
 「ヨーロッパでバイクといえば、時間的・経済的ゆとりをもった大人のホビー。 ハイウェイを時速250キロでスッ飛ばすライダーが、ヘルメットを脱げば白髪の老紳士だった―そんな光景をよく目にします。 将来日本にも、そんな文化が根付いてほしいものほしいものです」(山本信行)
 エントリーは、今年で創業24年。この間、山本社長と二人三脚で経営を支えてきたのが奥さんの山本郁代さんだ。
 「明石で小さなお店を開いたのが昭和54年(1979年)。振り返ってみれば、アッという間でしたね」
 山本さんは、5年前にパソコンを始めた。平成10年から1年間は毎週パソコン教室に通い、 「Word」「Excel」「Homepage builder」の3種類のソフトをひと通り勉強した。 バイクの腕前では山本社長にとうていかないはしないものの、ことパソコンに関しては、立場がまったく逆転する。
 「パソコンでは、社長は私の教え子なんです(笑)。もっとも、あまり成績優秀な生徒ではありませんが(笑)」

欠かさず通った1年間、待ち遠しかった水曜日

 山本さんがパソコンを本気で勉強しようと思ったのは、社内で担当している損害保険の仕事に幅広く役立てたいという理由からだった。
 「過去の販売成績や前年・前月比など、数字の動きが一目瞭然で分かるような自分専用のシステムを、オリジナルでつくりたいと思ったんです」
 もちろん会社では、経理業務に会計ソフトが、顧客管理に業務用のシステムが稼動している。コンピュータと無縁だったというわけではない。
 「でも市販のソフトには、なかなか思い通りのものがないんです。だったら自分の欲しい情報やデータが出てくるものを自分でつくろうと思いました」
 また山本さんは、インターネットを使ったネットショップにも早くから注目し、 いずれ会社のホームページを立ち上げるにあたって基本をひと通り身につけておきたいという理由もあった。
 山本さんは、1年間欠かさず教室に通った。お店が定休日の毎週水曜日の午前中が、レッスンの時間だった。
 「授業の内容は、特に難しかったという印象はありません。先生がとても分かりやすく教えてくださったし、上達を実感できるのがうれしかった。 毎週水曜日が来るのを楽しみにしてたくらいです。それにしてもてもパソコンって、どうしてあんなにすぐにフリーズするんですか?  少し重たいデータを扱うととたんに動きが鈍くなるんです。なんでもっとテキパキ動かないのかって、授業中はよく機械に八つ当たりしていました(笑)」

すぐに生かされた1年間の成果

 パソコン教室に通った1年間は、山本さんにとって充実した1年だった。レッスンが終了すると、パソコンはたちまち仕事でフル回転の活躍だった。
 「特に「Excel」が便利ですよね。表計算ソフトですが、「Word」のように文章も作成できますから」
 「Homepage builder」を使って、ホームページもすぐに作り上げた。もちろん今でもそれは使われている。
 「アクセスしてくれた人の数が、これまでに1万2000人を超えました。ニューモデル情報、中古車情報、今月のお買得車など、 いろんなコーナーをつくってバイクファンが関心を持てるようなものにしてあるつもりです」
 なかなか時間をつくれず、画面上から直接商品をオーダーできるようなネットショッピングの仕組みはまだ作れていない。 だがそれでも、メールで問合せが入り、それが成約につながったケースは何度かある。エントリーのホームページは、少しずつだが着実にファンを広げつつある。
 「ホームページを運営するとき、いつも気を付けているのは情報の鮮度です。古い情報がいつまでも掲載されていたりすると、 お客さまからすぐにそっぽを向かれてしまいますから。中古車情報コーナーやイベント案内のコーナーで新しい情報が入ると、 タイミングをはずさずすぐに更新するように心がけています。同じ広告でも、インターネットは印刷物と違い、最新の情報を発信できるのがいちばんのメリット。 ほったらかしにしていたら、埋もれてしまいます」
 


メーカーとディーラーとがインターネットで結ばれる時代

 山本さんがパソコン教室に通ったのは、結果として最高のタイミングだった。 バイク業界では、今やパソコンがないとビジネスそのものができない状況が生まれつつあるからだ。
 「将来はすべてのディーラーがインターネットを通じてメーカーと直結し、パソコンを通じて受発注を行うという時代がやってくるはずです」
 昨年暮れ、エントリーは川崎重工との間でネット契約を交わし、商品の受発注、部品の受発注に関するデータのやりとりを、 すべてネットワークを通じてコンピュータの端末同士で行うようになった。 エントリーの端末で入力したデータは、瞬時にメーカーの業務センターにあるサーバーに送られ、処理される。
 「ついこの間まですべて電話でやりとりしていたのが、この1年でガラッと変わってしまいました。 パソコンをうまく導入できないところとは、もうメーカーと取引さえするのが難しくなりつつあるんです。 端末を導入すれば一応は取引はできるんですが、パソコンのことを分かった人間がいるといないでは大きな違い。 その点当社は、スムーズに導入することができました。何もわからなければウロウロしてしまうところです」
 こうした状況に刺激されて、山本社長は今後ネットショッピングに本腰を入れて取り組もうとしている。
 「サイバーモールに出店したり、中古車のネットオークションへの出店も考えています。 オートバイは、アフターケアが必ず必要になる商品。売りっぱなしにはできないんです。 そんな事情もあって、これまでは問合せをいただいてもあまり遠方の方には積極的に売ってきませんでした。 でも時代の動きを見ていると、どうやらそうではない。実際に同業他社でネットショップをツールにグングン売上げを伸ばしているところもたくさんあります。 当社としても、それを無視するわけにはいきません」(山本信行)
 想像する以上に、時代は進んでいるといえるかもしれない。
 「これからは、ビジネスもカラダを使う時代からアタマを使う時代なんでしょうね。 全国津々浦々、世界にまで店をはれる手段があるわけですから、これを使わない手はないと思っています。 苦手意識のある人も多いとは思いますが、とにかく始めてみることでしょうね。始めなければ何も始まらないんですから」




【サイバーモール】
電子商店街。インターネット上に、ネットショッピング専門の仮想店舗を集めたもの。 「楽天市場」などが有名。インターネットを使えば、海外のサイバーモールにもアクセスできる。
【ネットオークション】
インターネットを通じて行われるオークション。
【フリーズ】
ソフトウエアに異常が発生し、パソコンの画面が動かなくなってしまうこと。ハングともいう。

<出典>
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
2003年3月発行 IT活用奮闘記(ITなんてこわくない)
筆者:六田 伸彦氏(ろくだ のぶひこ)
 (株)ジェイ・シー・エヌ 代表取締役
 ITコーディネータ(0006652001C)・ITCA公認インストラクター、
 ITSSPアドバイザー、中小企業事業団登録IT推進アドバイザー

本事例のお問合せ先:
財団法人ひょうご中小企業活性化センター
産業情報部 情報推進課 八木課長様(078-291-8503)

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